35 召喚された4人
*リュークレイン視点*
「────キョウコ!!」
6本のアラバスターの柱に囲まれた場所に展開された魔法陣が消えると、そこには4人の人の姿があった。
そして、その4人のうちの1人の男性が叫んでいた。
その叫んでいる男性の腕にしがみついている女性が1人。
呆然と佇んでいる男性が1人。
床に座り込んでいる女性が1人。
“4人”と“キョウコ”
魔導士達がその4人に近付き話し掛けているのを確認した後、チラリと、東の森の魔女である叔母上に視線を向けると、叔母上も俺に視線を向けていて、静かに少しだけ頷いた。
もう一度4人に視線を向ける。
容姿はキョウコと似ている。黒色の髪に黒色の瞳。服装は4人とも同じ制服だろうか?
見た目だけでは、この4人に加護があるのかどうかは分からない。聖女なのか、剣士なのかも分からない。
「──違う!もう一人居る筈なんだ!」
その言葉にハッとする。直ぐにでも問い詰めに行きたかったが、今の俺はカミリア王女を守る事が務めである為、カミリア王女の側を離れる事も、その4人に近付く事もできない。
「私が話を聞くわ」
そう言ったのは叔母上。叔母上は、東西南北の魔女の筆頭魔女であり、ここに居る魔導士、魔導士団長よりも魔法、魔術に長けている。その上、元は公爵令嬢だった。能力も身分も誰にも文句を言わせない存在なのだ。その叔母上がそう言えば、魔導士達も言葉を控える。
「兎に角、ここではゆっくり話ができないから、移動しましょうか?国王陛下、それでよろしいでしょうか?」
「あぁ、そうしよう。一旦、この4人は東西南北の魔女に任せよう」
「ありがとうございます」
国王陛下の許可をもらった後、召喚された4人と魔女の4人は神殿に用意されている部屋へと移動して行った。
ー一体、どう言う事なのかー
おそらく、今回召喚された4人が、ルーナ─キョウコが言っていた“他の4人”に間違いないだろう。でも、何故だ?何故、キョウコが落ちて来てから2年も経ってからなんだ?色んな疑問が湧いて来る。どうしても落ち着かない。
本来、召喚されて来た者には、魔導士団の団長と神官長とカミリア王女が対応する事になっていた。
だが、この召喚にキョウコが関わっているとなれば…キョウコの存在を明かさなくてはいけないかもしれない。
ーそうなれば、キョウコはどうなるんだろうか?ー
そんな事を考えながら、俺は叔母上からの報告を待っていた。
*アシーナ視点*
国王陛下に許可を得た後、私達は予め用意していた神殿にある部屋へとやって来た。
「キョウコ」と叫んだ男の子。
その男の子にしがみついて離れない女の子。
不安そうな顔をしながらも落ち着いている男の子。
ただジッと前を見ている女の子。
キョウコの言っていた“他の4人”だ。間違い無い。
あの満月の夜、この世界で初めてキョウコになった時に着ていた服と同じ服だ。
ーあれから2年。その2年の間、何処に居たの?ー
いくら探っても、この4人の情報は何一つ得られなかった。兎に角、「キョウコ」と叫んでいた子に、色々と訊かなければと思い、取り敢えず4人とも同じ部屋に入ってもらい、女の子2人、男の子2人と分けて椅子に座ってもらい、北の魔女と南の魔女に女の子を任せ、西の魔女と東の魔女で男の子の対応をする事にした。
******
「レイン、起きてるかしら?」
「叔母上、お待ちしてました」
レインの事だから、きっと寝ずに─眠れずに私を待っているだろうと思い、少し遅くはなってしまったが、召喚されて来た4人を他の3人の魔女に頼み、私は第二騎士団副団長の執務室へとやって来た。
「食事もまだでしょう?軽食ですが、用意してあります」
本当に気の利く甥である。
「ふふっ。お腹が空いていたのよ。ありがとう、いただくわ。行儀は悪いけど、食べながら話しても良いかしら?」
「勿論です」
お互い、テーブルを挟んで向かい合うように椅子に座った。
「ふぅ─。何処から話そうかしらね……」
と、私は少し思案した後、キョウコから聞いた話と、ハルマとイツキから聞いた話をレインに話していった。
召喚されて来た4人─
「キョウコ」と叫んでいた男の子─ハルマ
ハルマにしがみついていた女の子─サヤカ
落ち着いていた男の子─イツキ
座り込んでいた女の子─ミオ
そして─キョウコ
やっぱり、この5人は皆同じ学校に通っていたそうだ。その中でも、ハルマとキョウコは幼馴染みだった。
その日、キョウコ達5人は一緒に学校から帰る途中で召喚されて来たらしい。
キョウコはその時、4人から少し距離を空けて後ろから付いて行くように歩いていると、急に目の前が霞がかったようになった─と言っていた。
イツキは──歩いている途中のジンジャと言う所の壁が崩れて来て、危ない!と思っていると、ここに来ていた─と言った。
そして、ハルマは──急に足下が光りだしてビックリして、キョウコを見たら1人離れた所で青い光に包まれていたから、助けようと手を伸ばすと、サヤカがキョウコを押し退けて、そのハルマの手にしがみついて来た──と言った。
そして、ハルマの伸ばした手はキョウコを掴む事ができずに、気が付いたらこの世界に来ていた─と。




