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召喚から外れたら、もふもふになりました?  作者: みん


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32/60

32 再び

❋時を少し遡っての杏子視点の話になります❋




アシーナさんと街へ行った時にリュークレインさんと遇ってから、杏子としての時間が増えた。

白狼(ルーナ)だと、デザートが食べられない」と言った私に、リュークレインさんがお土産を買って来てくれるようになったからだ。


『部屋に誰も入って来れないように、中からの声も漏れないように結界を張ってるから、キョウコの姿に戻って食べれば良いよ』


と言って、パンケーキを買って来てくれたのが始まりだった。

勿論、最初は買ってもらう事が申し訳ないと遠慮もしたし、部屋に2人きりで迷惑ではないんだろうか?と悩んだりもしたけど、その度にリュークレインさんが『キョウコだけにじゃなくて、リナにもあげてるから気にしなくて良い』『周りは、俺と白狼(ルーナ)だと思っているから大丈夫』と言われるから、それじゃあ…大丈夫かな?と思って、今では有難く、美味しく頂いている。


リュークレインさんが買って来てくれるモノは、いつもどれも美味しかったし、リュークレインさんとゆっくり話せる時間はとても楽しかった。





「貰ってばかりだから、何かお礼がしたいなぁ…」


一応だけど、アシーナさんが作るポーションのお手伝いをしていて、そのお手伝いに対してアシーナさんが手当をくれているから、少しの手持ちはある。大した物は買えないけど、何かできないかな?と思ってアシーナさんに相談すると─


「それなら、この世界では、お礼に()()()()()()ハンカチを贈る事があるわ」


「ハンカチ…刺繍!」


ーハンカチならそんなに高くないだろうし、刺繍なら得意だー


「今度、ハンカチを買って、刺繍して渡します!アシーナさん、教えてくれてありがとう」


それから、アシーナさんの時間のある時にハンカチと刺繍糸を買いに行き「どんな刺繍が良い?」と悩んでいると─


「レインのイニシャルと………そうね……月属性の月って、守護の意味もあるから、騎士であるレインにはお守りにもなって()()()()のかもしれないわね」


と、アシーナさんからのアドバイスももらい、私は早速白銀色の三日月と紫色でリュークレインさんのイニシャルを刺繍した。


その時のアシーナさんの顔をよく見ていたら……アシーナさんの企みに気付いていたかもしれないし、気付けていたら、あんな恥ずかしい思いを後々する事にはならなかっただろう─なんて、この時の私は思いもしなかった。





******



それから月日は流れ、アデルバート王子が学園を卒業すると同時に廃太子となり、そのまま一代限りの領地無し公爵となりロゼリアさんと結婚。カミリア王女の立太子が発表された。


それから、アシーナさんもリュークレインさんも更に忙しくなったようで、2人とも邸にも帰って来れない日が増えた。リナティアさんはリナティアさんで、新学年になると生徒会役員になったらしく、毎日勉強と生徒会での仕事で忙しそうにしている。


ちょっぴり寂しくもあるけど、これまた忙しいクラリス様が時々私の相手をしてくれたり、使用人さん達が相変わらず私を撫で回してくれるから、それなりに楽しく過ごせている。






『キョウコ、美味しい?今日は、何かあった?』


アリスタ邸の庭の噴水を覗き込み、前足でチャプチャプと水面を揺らしていると、ふとその声が頭の中で響いた。


それは、リュークレインさんが、杏子になった私によく掛けてくれる言葉だ。自分が買って来た物が美味しいか?と。そして、その日何かあったのか?と、いつも優しい顔で聞いてくれるのだ。そして、私の話を聞いてくれた後は、リュークレインさんの事や、この国の事を色々話してくれる。そんな毎日を、当たり前のように過ごしていたけど……。



『当たり前の事なんて…ないんだよね…』



日本で当たり前の毎日を過ごしていた。でも、()()()から当たり前ではない毎日になった。そんな事すら、スッカリ忘れていたのだ。



『………元気に…してるかな?』



チャプン──と、前足を噴水に突っ込む。




『リュークレインに会いたいの?』


以前耳にした時よりも、少し愉しげな声。


『え?』


『ルーナがそれを望むなら…簡単な事よ?ふふっ。』


噴水の水面から、パァッと光が溢れた。





******



今日は、カミリア王女が王都内にある孤児院の視察に来ていて、リュークレインさんが、そのカミリア王女の護衛として付き添っていると言う事だった。


私は今、その孤児院に来ている。白狼(ルーナ)の姿のままで、アシーナさんからもらった認識阻害の魔法を展開させて。


ー何だか覗き見…悪い事をしてるみたいでドキドキするー




あの噴水から光が溢れだした後に現れたのは、やっぱり水の精霊であるウンディーネ様だった。


『ルーナには私の水の精霊の加護があるから、水がある所なら、水を介して行きたい場所に転移できるのよ』


と、ウンディーネ様はニッコリ笑った後


『リュークレインが居る、あの孤児院にも噴水はあるから行けるわよ?』


と更に愉しげに私を見ながらそう告げたのだった。


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