21 バレました
「リナの願い?違う!私は───」
「ロゼリア嬢ではなく、リナと結婚したいなどとは言わないわよね?あんな仲になっておきながら、ロゼリア嬢を捨てるなど言えないわよね?」
「───っ!」
王妃陛下の微笑みに、ようやく王太子も口を噤んだ。
「発表はまだ先にはなるが、アデルバートを廃太子し、カミリアを立太子させる」
この瞬間、アデルバートとリナティアの婚約は解消され、アデルバートとロゼリアとの婚約が決まった。
*その頃のアリスタ邸*
『私の可愛い子に怪我をさせたのは……だあれ?』
冷たく響くその声に、ゾクゾクするような恐怖とは別に、どこか安心するような感覚もある。その声は誰のモノなのか──知らず知らずのうちに、キュッとリュークレインさんにしがみつく。すると、リュークレインさんは、私を安心させるように撫でてくれる。
すると、私達の目の前に、青い光がキラキラと輝き、その光の中から人が現れた。
透き通るような白い肌。瞳も透き通るような綺麗な青色。真っ直ぐに伸びた水色の髪は腰の下辺りまである。耳は、人間とは違っていて、少しピンと尖っている。
とても綺麗な──人間ではない美しさと空気を纏っている。ただ、そこに立って居るだけなのに、その人からの圧を感じる。
ーこの人が、水の精霊さんだー
ジッ─と、その精霊さんを見つめていると、私を見てニッコリと微笑んだ。
『今は“ルーナ”だったかしら?』
そう言いながら、私の体を優しく撫でる。すると、撫でられると同時に、お腹にあった痛みがスっと無くなった。
『あ!ありがとうございます』
『ふふっ。治って良かったわ。もう大丈夫かしら?』
『はい、大丈夫です』
フリフリと尻尾も自然と揺れて、その人にお礼を言う。
『ふふっ。可愛いわね。白狼にして良かったわ』
ーと言う事は、やっぱり私を白狼にしたのは、この人─水の精霊さんと言う事なんだろうー
『あの…えっと…私は、やっぱりまだこの姿のままなんでしょうか?』
『そうね…私はまだその方が良いと思っているけど、ルーナはどうしたい?』
“どうしたい?”─まさか、そう訊かれるとは思ってもいなかった。正直、最近ではこの白狼の姿も気に入っている。でも、やっぱり人間の姿にだって戻りたい。
『例えばなんですけど、自分で自由に、白狼になったり人間になったりできる─みたいなことは……』
『ルーナが望む事ならできるわよ?それが、ルーナの望み?願い?』
『はいっ!』
『わかったわ』
と、精霊さんが微笑むと、私の体を青い光が包み込んだ。
そして、その青い光が落ち着くと、私の視線が高くなっていた。自分の手を見ると、そこにはグウ、チョキ、パーができる5本指の手があった。
「人間に戻ってる───っ!?」
と、喜んだところでピシリッ──と、体が固まった。
え?“何故か?”って?それは……私が、今居る場所に、大きな大きな問題があったから。え?私が今、何処に居るのか?って?それは───
「──え?ルーナ?え?」
リュークレインさんの膝の上に居るんです。ソファーに座っているリュークレインさんの膝の上に座っていて、後ろから抱きかかえられている状態なんです。
そりゃそうだ。さっきまで、白狼姿でリュークレインさんの膝の上に体を預けていたから、そのままの状態で人間の姿に戻れば……こうなるよね!?
「え?ルーナ?」
困惑した声で、後ろから名前を呼ばれる。
ーあぁ…このままここから逃げ出したいー
いや、逃げては駄目だろう。もうバレてしまったのだから。何度か深呼吸を繰り返し、ゆっくりと後ろを振り返る。
「─っ!?」
すると、ものすごい至近距離に綺麗な紫色の瞳があった。その綺麗な紫色の瞳には、杏子になった私が映りこんでいる。
「えっと……あ…“初めまして”に…なりますね?あの…」
「……………」
ーあれ?リュークレインさん…固まってる?ー
何故か、リュークレインさんは私をガッシリ抱きかかえたままで、目を見開いて固まっている。
ーえぇっと…離してくれないかなぁ?ー
「あの…リュークレインさん。えっと…ここから下ろしてもらっても良いですか?」
「…え?……あっ!あぁ、すまない!」
そこで、ようやく我に返った様子のリュークレインさんは、私をそっと膝の上から下ろしてくれた。
そんな私達のやりとりを、水の精霊さんはニコニコと笑いながら見つめていた。




