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18 招かれざる客


話し合いの結果、リナティアさんは学園を一週間休む事になった。その間、父親である公爵様が国王様と話をしに行く事になったそうだ。


「婚約は解消になるかもしれない」


と言う父親の言葉に、リナティアさんはただ静かに頷いただけだった。



私は、そんなリナティアさんの希望により、学園を一週間休む間側に居る事になり、アリスタ邸でお世話になる事になった。

アシーナさんは、東の森の管理の事もあり、ずっと留守にする事はできない為、王都に来た日は邸に泊まったけど、翌日のお昼過ぎには転移の魔法陣で東の森の家へと帰って行った。




3日目。


この日は、朝早い時間に公爵様とリュークレインさんがお城に出勤?して行き、公爵夫人は前々から予定していたお茶会があるとの事で──


「リナを放って行けないわ!」


と、お茶会をキャンセルしようとした母親に


「約束は守らないといけないわ」


と、リナティアさんに言われ、公爵夫人は渋々ながらお茶会へと向かったのだった。

一つ言える事は、“リナティアさんは家族に愛されている”と言う事だ。


この日は、天気が良いと言う事で、ユラさんの提案で気分転換を兼ねて庭でお茶をする事になった。





『──────庭?』


これを庭と言って良いんだろうか?

色とりどりの花が咲いていて、アーチ状になった通りの向こうにはガゼボがあって、大きな噴水もある。


『観光スポットになるよね?』


「走り回っても良いわよ」と、リナティアさんがクスクスと笑いながら紅茶を飲んでいる。なので、私は遠慮無く花を眺めたりアーチ状に続く通路を歩いたりしている。


ー日本には…無い花かなぁ?ー


鼻を近付けて香りを楽しむ。


ーあ、この花の香り好きかもー


その花の見た目と香りが気に入り、私はその花の元にコロンと寝転んだ。尻尾が自然とユラユラと揺れて──「「可愛い!」」と、リナティアさんとユラさんの声が微かに耳に届く。


ーあぁ…穏やかだなぁー


お昼を食べた後で、程良く?散歩して───眠い。この世界に来てから、よく寝るようになった。私は、幼犬?幼狼?なんだろうか?と、眠りに落ちる寸前、邸の方からいくつかの声が聞こえて来た。何となく嫌な感じのする声と雰囲気に、一気に意識が浮上して、私はスっと立ち上がりリナティアさんの元へと駆け寄った。


「ルーナ、どうしたの?」


リナティアさんの座っている椅子の横に座り、顔と視線は嫌な声のする方に向ける。そんな私を撫でるリナティアさんが、私の向いている方に視線を向けて───


「───何………で………」


震えるような声を出した。





「突然押し掛けて来てしまって、すみません」


「───いえ……気にしないで」


『………………』


今、私達の目の前には、ハーフアップの髪型をした、ピンクブロンドの髪にピンク色の瞳をした、ファンタジーな令嬢が居る。そう。この令嬢こそがロゼリア=アークルハインだ。


謝っているのに、謝っているようには見えない態度。困ったように眉は下がっているが、目は人を見下すかのような目をしてリナティアさんを見ている。


ーまるで、大森彩香みたいな人だなぁー


「学園で倒れて、そのまま休んでいると聞いて……その……()()()様も、リナティア様の事をとても心配されていたので、私も気になって…ついつい、押し掛けて来てしまいました」


「そう……殿()()が…。アークルハイン様、()()ありがとうございます。念の為にと、今週一週間は学校を休みます─と、学校と王妃陛下にはお伝えしていたから、てっきり、殿下にも伝わっているかと思っていたわ」


「っ!そうなんですね!?それは…私は知らなくてっ…すみません!」


リナティアさんはニッコリ微笑むと、ロゼリアさんが慌てて泣きそうな顔で謝る。


ー何コレ?見ようによっては、リナティアさんがロゼリアさんを苛めているように見えるよね?ー


ふぅ─と、リナティアさんが軽く息を吐いた後


「まだ体が本調子ではないから、私は部屋に戻るわ。アークルハイン様、今日は来ていただいてありがとう。カーリー、アークルハイン様を送ってさしあげて?」


「承知しました」


「アークルハイン様、先に失礼しますね」


と、リナティアさんはユラさんと共に邸へと戻って行った。


その、去って行くリナティアさんを見つめるロゼリアさんの顔は……何とも言えない怒りのような嗤っているような顔をしている。


ーこの子、ちょっと怖い…ヤバくない?ー


と、距離をとろうと動き出した時


「本当に、いつもスカして……ムカつく女ね……」


と、その時、目があった。


「ふんっ。あの女によく似合う…灰を被ったみたいな犬ね」


ーあ、これ、久し振りにヤバい!?ー


と思ったと同時に、お腹に衝撃が走る。


『────っ!?』

「──きゃあ─────っ!」

「アークルハイン様!?」


ドサッと、私の体が地面に落ちて衝撃を受ける。


ーお腹が……痛い………ー


息苦しくて、目の前が霞む。その霞む視線の先には、何故か右足を押さえて座り込んでいるロゼリアさん。そのロゼリアさんの横で「誰か来て!」と叫んでいるカーリーさん。


ー何が…起こった?ー


イマイチ状況が分からないまま、私の意識はそこで途絶えた。




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