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12 森で過ごす夜


*滞在5日目*


いよいよ、今日は満月の日。

夜は、森の中にある結界が張られている洞窟で過ごす事にした。その洞窟には、カウチソファーが置かれていて、アシーナさんが時々そこで寛いだりしているそうだ。なので、一晩位は余裕で過ごす事ができる。と、考えていると、夜中の事を思い出す。




『……でん……か……』



夜中にふと目を覚ますと、一緒に寝ていたリナティアさんが、“殿下”と寝言を口にしながら…泣いていたのだ。


ー殿下とは、婚約者でもある王太子の事だよね?ー


やっぱり、2人の間に何かあったんだろう。それでも、私が何かしてあげられる事はなくて、せめて、ここに居る間だけでもと、癒し効果?のあるらしい私は、できる限りリナティアさんの側に居ようと思った。




なんて、本当に、そう思ってたんですよ?リナティアさんの事は、妹みたいに思ってる程可愛いし…なのに──


『…………』


何故か、今日もリュークレインさんの膝の上に居ます。

今朝、まだ寝ているリナティアさんを起こさないようにしながら起きて、アシーナさんが居るであろうリビングルームに来ると、リビングのソファーに座っていたリュークレインさんに手招きされて『何だろう?』と思いながら近付くと、そのまま抱き上げられたのだ。


『っ!?』


ビックリしてアシーナさんの方に視線を向けても、アシーナさんはクスクスと笑っているだけだった。


それからずっと、私はリュークレインさんの膝の上に顔を乗せた状態で、そんな私の背中をリュークレインさんは優しくて撫でてくれている。正直───


ーとっても気持ちいいー


尻尾も勝手に揺れている。リュークレインさんも、月属性ですか?と、訊きたくなる。


「ふふっ。レインとルーナは、相性が良いのかもね」


ー相性?ー


意味がよく分からない私とは違い、リュークレインさんは分かるようで「犬なのが、残念だ」と、笑っていた。


それから、朝食前に起きて来たリナティアさんが来る迄、私はリュークレインさんの膝の上でのんびりと過ごした。





*その日の夕方*


「叔母様、ルーナが何処に居るのか知らない?」


「森に行ったんじゃないかしら?ルーナも、時々森で一晩過ごす事があるのよ。明日の朝には帰って来ると思うから、こう言う時は放っといてあげてもらえるかしら?」


「そうなのね。今日も一緒に寝たかったんだけど、ルーナも動物だものね。1人…1匹になりたい時もあるものね」


「ルーナの代わりにはならないかもしれないけど、今夜は私とお喋りして夜更ししましょうか?」


しょんぼりするリナティアに、アシーナが声を掛けると「叔母様、大好き!」と、アシーナに抱きついて喜んだ。






*森の中の洞窟*


夕方の、まだ陽が沈む前に森の洞窟へとやって来た。

その洞窟内には、既にサンドイッチと飲み物、人間(ひと)の姿に戻った時に着る服が用意されていた。


ー明日、アシーナさんにお礼を言わなきゃねー


そう思いながら、カウチソファーの上に飛び乗り、伏せの状態で寝転び目を閉じる。



『──きょうこ!』



ずっと忘れていた─考えないようにしていた。


陽真──他の4人は、どうなったんだろう?この国ではない国に居るのだろうか?半年経っても、何の情報も得られていない。

最後に目にしたのが陽真の驚いた様な顔と、耳にしたのが“きょうこ”だった。ずっと“あんこ”としか呼ばなかったくせに。


『陽真なんか………大ッキライだ……』


そう呟いた後、私はそのまま寝てしまっていた。






『───ん?』


体がムズムズするような感覚がして目が覚めた。

どうやら、あのまま寝てしまっていたようで、辺りは暗くなっていた。


『──ライト』


そう呟けば、洞窟内がほんのりと明るくなる。

アシーナさんが仕掛けている魔法の一つで、“ライト”と言えば、洞窟内が明るくなるのだ。


自分の手を見ると、まだもふもふだった。


ーあぁ、月の光を浴びないと、人間(ひと)の姿に戻らないのかもしれないー


そう思って、カウチソファーから降りて、洞窟の外へと向かった。


基本、この森にはアシーナさんと私しか居ない。特に、夜には誰も入って来れないように魔法を掛けていると、アシーナさんは言っていたけど、念の為に辺りの気配を探る。


『──うん。気配も…音もしない』


確認した後、洞窟から出て夜空を見上げると、そこには雲一つないキラキラした満点の星空が広がっていて、日本で目にしていた月よりも大きい月─満月が輝いていた。


すると、また、私の体が光りだし──


「やっぱり制服を着てるのね」


クスッと笑った後、もう一度洞窟内に戻って着替えをした後、サンドイッチを食べた。






「うわー……本当に綺麗な夜空だなぁ……」


サンドイッチを食べた後、私は洞窟から出て、洞窟の入り口のすぐ側にある川辺までやって来て、足を川に入れて夜空を見上げている。


ー住んでいた所では、こんなに星を見れる事はなかったなぁー


もう、そんな夜空を目にする事はないんだけど………


どうやら、あの日、あれ程泣いたのに、まだまだ涙は出て来るようだ。目に溜まった涙が流れないように、スッと満月を見上げる。手を伸ばせば掴める?


「あっ!忘れてた!」


そこで、私は初めて気が付いた。アシーナさんが態々作ってくれた、認識阻害のピアスを発動させるのを忘れていたのだ。


「─アクア」


と呟けば、手の平の上に水玉が現れる。それを、耳に着けているピアスに吸収させた。




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