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10 兄妹

「あぁ!ルーナ!本当に可愛い!!」


ムギュウッ─と、目をキラキさせて私を抱きしめているのは、姪のリナティアさん。ゆるふわなシルバーブロンドの髪に、少し吊り上がった目は紫色の瞳をしている。16歳とは思えない程大人びている。


公爵令嬢と言う、身分も高いにも関わらず、私と同じように森の地べたに座り、私を撫で回したり抱きついたりと、服が汚れようが全く気にしていない様子で、一緒について来ている侍女のユラさんも、そんなリナティアさんを微笑ましそうに見ているだけだった。


「リナ、ここに居たのか」


「お兄様!」


そこへ、兄であるリュークレインさんが、侍従のハンスさんと一緒にやって来た。


「叔母様に、ルーナは森に生っているフルーツが好きだと聞いたから、取りに来たの」


「慣れてる森で、安全な場所と危険な場所が分かっていると言っても何が起こるか分からないから、次からは俺に声をかけるように」


「あ、ごめんなさい」


シュンとして素直に謝るリナティアさん。そんなリナティアさんの頭を、リュークレインさんはポンポンと優しく叩いた。


「まぁ…俺が居なくても、殿下が影を付けているだろうけどね」


「──そんな事無いわよ」


「リナ?」


リナティアさんは、自分のスカートをギュッと握りしめたまま俯いた。


「殿下は……私の事なんて………」


とても小さく呟いたその言葉は、白狼(動物)である私には聞こえたけど、リュークレインさん達には聞こえていなかった。





その日の夜、各自が自室に下がり、アシーナさんと2人きりになってから、私はアシーナさんに昼間の事を話す事にした。


「リナと王太子の仲?」


『何となくなんですけど、リナティアさんが、自分は王太子様によく思われてない─みたいに思ってる感じだったんです。』




“殿下は……私の事なんて………”


小さな小さな声だった。耳がいい白狼(わたし)だから聞こえただけ。そう呟いた時のリナティアさんの目は、見覚え─記憶がある。あの目は、何かを諦め()()()いる時の目だ。


信じたいけど、信じられない


前に進みたいのに、進めない


「ここから王都は離れていて2人の噂を耳にする事はないし、リナからは勿論の事、兄のレインからも何も聞いていないわ。もともと、リナと王太子様は幼馴染みで、昔は仲が良かったとは記憶しているけど」


“昔は仲が良かった幼馴染み”


ここでの生活が(白狼姿な事を省いて)楽しくて忘れてたけど、陽真達はどうなったんだろう?

アシーナさんが何も言わないと言う事は、何も情報が無いと言う事なんだろうけど。

私が急に黙り込んだからか、アシーナさんが心配そうな顔をして私の横までやって来て、いつものように優しくて頭を撫でてくれる。


「キョウコの事もそうだけど、リナの事も少し調べてみるわね」


『アシーナさん…ありがとうございます』




普段は床に寝床であるクッションを敷き詰めた篭の中で寝るのだけど、この日は少し寂しくなって、アシーナさんのベッドで一緒に寝させてもらった。






*滞在4日目*



今日は、アシーナさんとリナティアさんは街へ買い物に行っている。ならば─と、森でお昼寝でもしようかなと思い森迄やって来て、いつものお昼寝スポットでうとうととしていると、誰かが近付いて来る気配がして、ソロソロと視線を向けると、リュークレインさんが私に向かって歩いて来ていた。


『?』


ー森に何か用かな?ー


取り敢えず、ソロソロと起き上がってお座りをして待っていると、目の前迄来たリュークレインさんが、また、私の両脇に手を差し込んでそのまま私を持ち上げた。


ーだから!お腹を無防備に曝け出すのは恥ずかしいんですからね!!ー


と、後ろ足をバタつかせて抗議するけど、相手は身体のデカイ騎士。小物な私がバタついたところでピクリとも動かない。


「お前……月の加護持ちなんだな」


と、リュークレインさんは至近距離で私の瞳を覗き込んでいる。


「叔母上もそうだが、お前─ルーナの瞳もキラキラしていて綺麗だな。シルバーオブシディアンみたいだな」


ジッと見つめて来る、そのリュークレインさんの瞳はリナティアさんと同じ紫色。リナティアさんの色よりも、少し薄い感じだろうか?そのリュークレインさんの瞳だって、とても綺麗だと思う。


「あ、この持ち方は嫌いなんだったな?すまない」


困ったように笑った後、私を下ろして─はくれずに、そのまま私が寝転んでいた木の根本に腰を下ろし、私はリュークレインさんの膝の上に座らされた。


ー何で?ー


コテンと小首を傾げてリュークレインさんを見上げると


「───可愛いな……」


と、ワシャワシャと体中を撫で回された。


アシーナさんやリナティアさんに撫で回されると気持ちいいしかないのに、リュークレインさんに撫で回されるのは、何だかめちゃくちゃ恥ずかしい。異性だからだろうか?

それでも、あまりの気持ちよさに、私はそのままリュークレインさんの膝の上で寝てしまっていた。




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