異世界にようこそ 前編
神の口車にまんまと乗ってしまい、異世界に行くことを決めてしまった田中。
おいおい、それでいいのか田中。
『やっと決めてくれたか、じゃぁ気持ちが変わらないうちにここにサインとハンコくれる?』
神は契約書を田中に差出し、サインを要求した。
その行動はまさに、不動産屋の営業マンのごとく、お客の気持ちが変わらないうちに契約を急がせるというもの。
「異世界行くのって、こんな契約書で手続きするんですね」
『異世界行ってから、こんなんじゃなかったわーって人もいるのよ』
『あとから、あの神が言ってたことは嘘だーとか、言われることがあるから、そのための契約書なの』
「マジで、不動産屋と変わらんくね?」
田中は契約書にサインをした。
「ハンコはないんで拇印でいいですか?」
『はい、OK』
『これで契約締結になりまーす』
田中と神との間で異世界転生の契約が締結した。
『さて、気を取り直して、これから異世界に転生するが、わしからささやではあるが君にプレゼントを授けよう』
「プレゼントって車とかですか?」
『異世界で車は使わないから』
『もっとあるでしょ、最近の流行は始めっからレベルが高いとか、めちゃすごい能力持ってるとか』
「あぁ、そっちですか」
「俺にはどんな能力がもらえるんですか?」
『それはずばり、交渉術!』
「え?」
『この能力があればきっと異世界で君はヒーローになれるだろう』
「交渉術ってなんすか!」
「なんか、ビジネススキルみたいですけど」
田中に与えられるスキルは交渉術。
これはどんなスキルなのか?
いや、ネットで調べれば誰でもわかるような能力な気もするが。
「交渉術って、もっと他にないんですか、魔物を召喚できるとか」
田中はまさかのスキルに困惑した。
『はい、もう異世界行きまーす』
『覚悟決めてくださーい』
「いや、これはこれで不安しか」
『くどい!』
『異世界行く前で尺使いすぎなのよ』
『本来、神様って第一話の冒頭に出るぐらいなの』
『これアニメすると一本まるまる出てるレベルなの』
『ええい、とんでけー』
神は田中を無理やり異世界に転生させた。
ものすごい光が田中に降り注ぎ、田中は異世界へと転生した。
果たして、田中を待ち受けているものとは。
まさかの前編まるまる神とのやりとりで終わっちゃったよ。