たどり着いたその世界は 後編
快速電車にひかれてしまい、命を落としてしまった主人公、田中太一。
目を覚ますとそこは暗い闇の中!
そんな田中の目のまえに現れたのは、なんと神!
一体、神は田中に何を与えるのか。
田中の運命やいかに!
『ナレーションも長くね?』
『なんで、この世界癖強いやつばっかなのよ』
神はナレーションにも嫌気がさしていた。
「で、神様、俺はこれからどうなるんですか?」
『普通、人は死んでしまうとあの世に行ってしまうんだけど、特例があんのよ』
「特例?」
『そう、ある条件を満たすと、この空間に来るのよ』
「なんすか?そのゲームみたいな設定」
『ちょうど誕生日を迎えたと同時に死んでしまった人間は、異世界に行けるチャンスが与えられるのじゃ!』
急に神様っぽい口調になり始める神。
ようやく、普段の調子が戻ってきたようだ。
「ってことは、俺は異世界に行っちゃうんですか?」
『もちろん、周りと同じようにあの世に行くこともできる、つまりお前は異世界かあの世かを選べるんじゃよ』
「じゃぁ、あの世でいいっす」
田中は即答であの世を選択した。
それもそうである。
田中は典型的な日本人。
5段階アンケートがあれば、かならず真ん中の3を選ぶ男である。
平均値に愛されている男である。
そんな男は周りと同じという言葉に安心感を抱く。
周りと違うことがあると、それだけで心臓がバクバクしてしまう。
なので、周りと同じあの世を選んでしまったのである。
『いやいや、異世界行けるんだよ』
『最近流行ってる転生よ、またとないチャンスよ』
神にとって異世界に転生させるというのは、いわば神が神たらしめる行為である。
神様しかできないんだぞー。
っと、自分が神であるということに酔いしれることができる瞬間なのである。
なので神は何が何でも田中を異世界に転生させたいのだ。
「いや、周りと一緒でいいっす、冒険とかしないタイプなんで」
『人生やり直せるチャンスよ、異世界行ったら何でもやり放題よ』
「いや、普通にあの世に行って成仏したいっす」
田中の決意は固かった。
神がなんと言おうと田中は異世界になんて行こうとしない。
『やばい、このままでは、この男は成仏してしまう』
神は焦っていた。
『今なら異世界に行くと、ものすごいメンツと冒険できるから』
「ものすごいって、冒険とかいいっすから」
『魔物とか瞬殺しちゃうから、楽しいよー』
「戦いとか遠慮しますから」
『異世界行くと、きっとヒーローだね君』
「いや、目立つこと苦手なんで」
田中の決意は固い。
焦った神も何でもありになり始める。
『今、異世界行くとハーレムだね』
『グラマーなお姉さんと一緒に冒険とか楽しいなー』
ぴく!
田中の耳がお姉さんというワードに反応した。
田中はごく普通の人生を過ごしてきた。
彼女は周りが作っていたからと、大学時代になんとか作った。
が、長続きしなかった。
そんな田中にとって、彼女、ましてや結婚というイベントはこの世に残してきた後悔である。
田中は女子と旅行に行きたかったのだ。
『あ、かわいいハンターとかもいたなぁ』
『なんつうの、妹系みたいなルックスの』
ぴくぴく!
田中は間違いなく反応している。
それを見逃さない神。
『今、異世界は男女比がめちゃくちゃで、女性が圧倒的に多いんだわ』
『もう何もしなくても女性と出会うレベルで』
「すぅ、、、異世界かぁ」
「一発、転生しとくのもありっちゃぁ、ありですわな」
田中は異世界に行くことを決めた。