たどり着いたその世界は 前編
俺の名前は、田中太一。
ごく普通の名前。
血液型はA型。
普通に大学を卒業して、普通に会社に就職した。
どこにでもいる普通のサラリーマンだ。
明日で27歳になる。
そして、彼女はいない。
「今日も仕事疲れたなぁ~」
「おい、田中!今日飲みに行こうぜ」
田中は先輩に誘われるがまま、居酒屋に行った。
田中は結局11時過ぎまで居酒屋で飲んでいた。
先輩と共にかなりベロベロである。
「田中、そろそろ帰るぞー」
「うぃ」
二人はふらふらになりながらも駅に着いた。
「田中、俺は地下鉄だから、また明日な」
「先輩、お疲れ様でーす」
田中は先輩と別れ、電車に乗った。
かなり飲んで酔っていた田中は、電車に座るなり寝てしまった。
ふと、目を覚ますと最寄り駅に電車が着いていた。
「やばい、急がないと」
田中は急いで電車を降りた。
向かいのホームには快速電車が近づいていた。
急いで電車を降りた田中の足はふらついている。
そして、田中は足を踏み外して向かいのホームに落ちてしまった。
時間はちょうど24時ジャスト。
そう、田中太一の27回目の誕生日を迎えた。
と、同時に田中は快速電車にひかれてしまった。
「こ、ここはどこ?」
田中は目を覚ますと暗い闇の中にいた。
「俺は確か電車から降りて、、、」
『電車にひかれたんだよ』
「誰?」
『私は神だ』
「え、神?」
『そう、神だ』
「マジで神?」
『マジで神だ』
「神ってあのドラゴンボールに出てくる」
『このくだりまだ続く!?』
『めちゃ神様っぽいルックスしてるんですけど』
田中の目の前に現れたのは、つるっぱげに白髭、頭には輪っか、白い着物に杖。
いかにも神様って感じの神だ。
多分、AIに神様のイラストを描いてと打ち込んでも、きっとこういうイラストを描いてくるだろうって感じの神だ。
「いやぁ、神様を見れるなんてめったにないんで、テンションあがっちゃって」
『めったにどころか、基本的には見れないんだけどね』
『てか、君さ、死んでんだよ』
『もう少し、そっちに驚けよ』
神を前にして、無性にテンションが上がってしまう田中。
そう、街で芸能人を見ると、やたらテンションがあがり、次の日周りに芸能人に遭遇したことを自慢してしまうような、典型的な日本人気質である。
「俺、死んでしまったんですね」
「いやぁ、結婚したかったなー」
『なんか、テンションちげぇな』
『もう少し、落ち込むとかあるかと思ったけど』
神が想像していた印象とだいぶ違う田中であった。