アゼイリアの懇願
読んでいただきありがとうございます。まさかの事故に遭いました。
セリーナの部屋を出た三人は執務室にこれからの事を相談するために集まった。人の記憶だけ無くしているのならば過去にあったキースとの事を忘れたままにしておいた方がセリーナの為になるのではないかというのが家族全員の意見だった。
平気そうな顔はしていたが心の中までは分からない。強がっていたのかもしれないのだから。
この時とばかりアゼイリアは両親にセリーナへの婚約の許可を貰うことにした。
養子に入った時からセリーナのことが好きだったので想いを伝えたいが、もし玉砕したら諦めて騎士になるか文官を目指そうと思っていることをきちんと話すことが出来た。
初めは驚いていた両親もアゼイリアの気持ちが真剣なものだと知ると応援すると言ってくれた。
「後継の勉強をしてきてくれたアゼイリアをこの家から出すつもりはなかったわ。セリーナは領地で婿を取って私たちと暮らしてもらおうと思っていたのだから。アゼイリアがセリーナを想ってくれているのならこれ以上のことはないわ。二人とも可愛い息子と娘ですもの。そうなれば今迄通り四人で暮らせるし、そのうち家族が増えて賑やかになるわね」
と嬉しそうに母が言い始めたのでアゼイリアは耳まで真っ赤になってしまった。
セリーナは暫く学院は休むことになった。屋敷でゆっくりしてアゼイリアや母に色々話を聞いておいた方がいいと思ったからだ。使用人が学院へ行き事情を話して同学年の名簿を手に入れて来てくれた。
「セリーナ、僕は義理の弟のアゼイリアだよ。いつも勉強を一緒にしたり遊んでいた。一つ下だよ。仲がとっても良かったんだ」
「なんとなくそんな気がする。私の家族は皆が優しい人ばかりなのね」
「セリーナが事故にあったと聞いた時には心臓が止まるかと思った。死んだらどうしようと思って目の前が真っ暗になってしまった」
「ありがとう、ごめんなさいね心配をかけて」
「うん、記憶はなくなったけど外傷がなくて良かった。僕は傷があったとしてもセリーナをとても大切に思うけど女性には傷は大変なことだから」
「飛び出した子供が轢かれなくて良かったわ、少し怪我をしただけだって聞いたわ」
「セリーナは本当に優しいんだから。大好きだよ」
「アゼイリアは弟なのよね?」
「そうだよ、今のところね」
弟だという美少年に大好きだよと言われてドキッとする自分は大丈夫なのだろうかと思うセリーナだった。
アゼイリアは記憶のないセリーナに婚約者だったと言ってしまえる誘惑もあったが、敢えて自分からそれはしないことにした。思い切り甘やかして愛を勝ち取りたいという思いがあったからだ。
養子になったのはセリーナに婚約者が出来たからだ。相手が嫡男だったから自分が必要とされたのだ。その男がいなくなった今愛を請うのは自分であるという自負もあった。ずっと恋い焦がれていたセリーナが自由になったのだ。婚約という鎖で繋がってしまいたい。その為には惜しみなく愛を囁くことも厭わない覚悟がアゼイリアにはあった。
この家に迎えられた時からセリーナは優しかった。手を繋いで屋敷の中や庭園を案内してくれた。初めて見た時にブロンドの髪と青い瞳の綺麗な人形のようだと思い一目惚れしたのに、他家に嫁入りすると聞いてがっかりした。
それでもセリーナが幸せになれるならと我慢していたのに、散々浮気した挙げ句婚約破棄を言い渡すなんて最低なことをしてくれた。裏切っている素振りは感じていたので、どうにかしてあれを潰してやろうかと考えていたところにうまい具合に自滅してくれた。アゼイリアとしては万々歳だった。
読んでいただきありがとうございます。ひたすら愛を請うアゼイリアをよろしくお願いします。
ご丁寧な指摘をありがとうございました。感謝しています。早速編集し直しました。




