赤いカーペット
「ミチタリタセカイ」が、仮タイトルでした。
歌を涸らして ひび割れたのどに
はけでハチミツ 塗れたらな
スキップ忘れて すり足のスニーカー
踵でバッタを飼えたらな
ちょうちょむすびが ほどけたリボンに
もひとつ むすびめ あったらな
ミートソースを きらしたパスタ
バジルソースをかけたらな
満ち足りた世界がどこかにひろがってても
ぼくの足もとまでは とどいてない
赤いカーペットを
こっちまで のばしてよって せがんだら
そのぶん はばをせまくしちゃうって知ってるから
指をくわえることにしたぼくに
きみは あきれた笑いを浮かべてくれるかい?
どっちにしろ ぼくは
まぁいいや 気にしないよって
へたくそな嘘をつきながら
パスタにはふりかけをかけて
リボンはぐるぐる巻きにして
スニーカーの踵には
二本の細い紙を折って編んだ ばねをしこんで
ひび割れたのどで いがいがの讃美歌を歌う
ロックスターにでもなろう
赤いカーペットのとどかない
満ち足りてない世界でも
それなりに からっぽでないくらしは楽しめるし
それなりの からっぽでない自分に酔い痴れればいい
わかったら そのきたないゴザをひっこめな
赤いカーペットのかわりにはなりゃしないよ
とはいえ 満ち足りた世界への
けっして 満ち足りることのないあこがれで
きみが幸せになれるってんのなら
どうぞ 好きにしておくれ
ぼくは もはや なにも言うまい
どうか 好きにしておくれ
バジルソースのほうが好きかも。