4.引きこもりはオシャレした
朝に自分が女の子に成ってしまったことを忘れて、盛大にトイレで床に向けておしっこを出してしまった僕は恥ずかしさで頭がフリーズしている間に灯姉さんにされるがままに体を丁寧に洗われ、髪を乾かしてもらった後、母さんがいつの間にか用意してくれていた女の子用のつまり今の僕用の服である白いワンピースに袖を通した。
「やっぱり今の綾斗にぴったりだわ~。もともと綾斗は可愛かったけど今はもっと可愛いから本当に似合ってるわ~。その服、灯が小学生の頃に買った服なんだけど、灯が気に入らないって言って一回しか着なかったんだけどせっかく綺麗で可愛い服なんだし捨てるにはもったいないって思って棚にしまってあったものなのよ。こんなに可愛いんだし捨てなくて正解だったわね」
いつも以上にのほほんとした雰囲気で母さんは服を着た僕に可愛いと何度も言いながら嬉しそうにしている。こんな母さんを見たことがなく、どうしたら良いのか分からない僕は灯姉さんに助けを求めようと後ろを見るとスマホで僕の写真を撮っている灯姉さんがいた。
「いや、これはその、あれよ。いつ男の子に戻るかわかんないし、それにせっかく可愛い格好してるんだし記念に写真撮っておこうと思ってね。もし、これからも戻れないとしてずっと写真をとらないで生きていくってのも悲しいものがあるし、せっかくだしこういうことにも慣れておいた方がいいと思ってね。それに...」
母さんと姉さんに可愛いと言われ、元男として喜ぶべきなのか微妙だなと内心思いつつもお世辞じゃなくほめてくれているのは感じていた。
内心での微妙な葛藤を抑え、灯姉さんを見ると灯姉さんがこれまで聞いたことのないような早口で僕をスマホのカメラで撮影している理由を説明してくれた。若干たしかにそうかもしれないとも思ったものの、今のテンパり具合に加えて今もすごい目が泳いでいるのを見て明らかに別の意図も含まれているのが分かった。
それと、この短時間ではあるものの母さんも姉さんも僕が思っていたよりももっとしっかりというかかっちりしていなくて厳しいところなんかもあるにはあるけどどちらかと言えばフザケテみたりするような面白い人たちだったんだなと感じていた。
特に灯姉さんは僕が思っているほど生真面目で冗談が通じないようなタイプではなくて、僕にしっかりした姿を見せて少しでも姉ぶりたいちょっと残念な感じのすごくかわいい人なんじゃないかと思えてきていた。現に明らかに嘘ついてるけど僕に頼れる姉感が出したいのか写真を撮っていたことの理由を話し続けている。
「う、その服着てその笑顔はヤバい」
姉の何とも言えない残念な様子にクスっと微笑んだ綾斗を見た灯は自分の欲望というか理性を抑えることが出来なくなりつつあった。ほとんど無意識で数枚連続でシャッターを切り、気づけば微笑む元弟の姿を写真に収めていた。
「灯ー、後でその写真私にも送っておいてね~。あと、そろそろ昨日綾斗が言ってた教会のあった場所に行くわよ。ほら、灯も一緒に行くでしょ?早く外に出られるように準備してきなさい。綾斗の方は私が準備しておくから」
上機嫌に灯姉さんは自分の部屋に入り、外出用にメイクとかの準備をし始めた。僕の方はというと、母さんに髪をいじられていた。
「う~ん、どの髪型にしても似合いそうね~。せっかくだし基本小さい子にしか似合わないツインテールにしちゃう?それとも...」
母さんはしばらく悩んだ後、ヘアゴムを手に持ち慣れた手つきで僕の髪を編み始めた。ゴムで髪をまとめた後、持ってきた棒みたいな何かよくわからないもので髪をクルクルにしている。
「はい、出来た。簡単おしゃれな可愛いサイドポニーの出来上がり~。うん、可愛くできた自身があるわ!綾斗も気になるでしょうし洗面所の鏡で確認しておいてね。私はトイレ行っておくわ」
母さんがトイレに行ったあと、洗面所で自分の姿を確認した。
「なんか、僕が僕じゃないみたい。もちろん女の子に成っちゃてるから当然違うなって思うのもあるんだろうけど、髪型を女の子らしいものにしただけでなんか男だったころの僕の面影がほとんどなくなっちゃったみたいにみえるや。この服にもすごく似合ってるし。やっぱりこの格好で外に出るのすごく恥ずかしいし抵抗感あったけど、僕から見ても今の僕普通に可愛い女の子にしか見えないし、あんまり気にしなくてもいいのかも?」
洗面所の鏡の前で可愛くなった自分をしばらくボーっと眺めていると、2階から灯姉さんが降りてくる音がした。
「綾斗!サイドポニーにしたのね。すごく似合ってていいと思うわ。明日は私がヘアアレンジしてあげるからね」
「おお!綾斗か。似合ってて可愛いじゃないか。なんだかこう今の綾斗を見てると灯の小さい頃を思い出すなぁ。灯がそういったオシャレに興味を持ち始めたのも今の綾斗ぐらいの年齢だったなぁ」
家の庭の草むしりを終えた父や母、姉からの誉め言葉により自分の今の見た目に少し自信がついた綾斗は女の子になってから初めて外に出ることへの決意を固めるのだった。
忙しかったのと原神が楽しすぎてそっちに時間とられちゃってたせいで全然小説書いてなかったです。
あと、今期のアニメのぼっち・ざ・ろっく!めちゃくちゃ面白いです。