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3.引きこもりはお風呂に入った

「お風呂行くよー」

 姉さんがお風呂に一緒に入ろうと急かしてくる。そもそも姉さんは僕とお風呂に入るのは嫌じゃないのか?少なくとも僕の記憶において姉さんと仲良く一緒に行動していたのすら小学校低学年くらいで相当昔である。しかも、僕は今でこそなんかよく分かんないけどぱっと見小学4年生くらいの女の子に成ってしまってはいるものの元は成人まじかの17歳の男だったのに...

「あ、あの灯姉さんは僕とお風呂入るの嫌でしょ?だって、僕は弟ではあるものの男だったんだし...そもそも大学生の灯姉さんは誰かと一緒にお風呂入るのとかは、恥ずかしいから嫌でしょ!」


 女の子に成ったとはいえ灯と一緒にお風呂を入るのが恥ずかしいから一人で入ると言えば良いはずなのに何となく本心をそのまま言うのが気恥ずかしかった綾斗は自分とお風呂に入るのを姉が内心では嫌がっていることに勝手に仮定していた。


「か、可愛すぎる。もともと綾斗は男の割には可愛げが...」

 恥ずかしさから顔を耳まで真っ赤に染め、うるんだ瞳で灯を上目遣いで見る。

「こほん、そもそもあんた身長が急激に変わったせいで歩くのもふらついてるから今日は特に一人でなんかお風呂に入れるわけにはいかないの。しかも、今の体でいつ体調が悪くなるかなんて全く想像つかないんだから大丈夫と分かるまではしばらくお風呂は一緒よ。それに綾斗とお風呂入るのなんて別に恥ずかしくないわよ。家族なんだもの。あと、母さんも言ってたけど、女の子と男の子では体の洗い方とかも違うところもあるんだから大人しくお風呂に一緒に入るわよ」


 なんだか少しだけ灯姉さんが言葉に詰まっているというかボソボソと何か呟いてはいたものの、僕とのお風呂は全くもって恥ずかしくないと言い切られてしまった。今更、やっぱり僕が恥ずかしいからお風呂は嫌だなんていえば、僕が姉さんを女の人と意識しちゃってるみたいに捉えられかねない。

 それに、僕の身を心配しているからこそ一緒にお風呂に入るんだと言っている姉さんの好意を無下にするのはこれから少しでも家族と向き合い、変わっていこうと決意した自分の意志とずれるものな気もしてきた。


「わ、分かったよ。じゃ、じゃあ灯姉さん、僕に体の洗い方とかそのいろいろ教えてね。あ、あとそのいろいろ心配してくれてありがとう」

 ちょっと気恥ずかしくはあったものの、これから姉さんとまた仲良くなるためにも今の自分のことを考えてくれてる姉さんにちゃんと感謝の気持ちを伝えた。

「や、やばい。私、どっちでもいける気はあるにしても、素直になって女の子に成った綾斗の破壊力がヤバすぎる...んんっ家族なんだから気にしないの」

 さっきから小声で何かを呟いてから話す姉さんに疑問を抱きつつもお風呂を一緒に入ることを心に決めた。


 脱衣所で姉さんが服を脱いでいく。別にやましい心とか全くなかったはずなのに、美人だけど怖いと思ってた姉さんが実はすごく僕のことをしっかり考えてくれてる優しい姉だったことによるギャプからなのか、そもそも家族とはいえ大人の女の人の裸を始めてみるせいからかものすごくドキドキしながら姉さんの脱衣を眺めてしまった。

「ん?綾斗も早く脱ぎなさいよ」

 姉さんから声をかけられて正気に戻った僕はいそいそと脱衣を済ませた。


「よし、じゃあまずは髪の洗い方からね。多分綾斗は髪のケアとかほとんど興味ないタイプだったでしょ?多分髪なんて長くなっても適当に洗えばいいと思ってるんでしょうけど、ちゃんとしたケアしようと思ったら洗う前にブラッシングするとかちゃんとしなきゃいけないの。幸い、女の子に成ったものの髪の毛自体は肩まで位でそんなに長いわけじゃないし、今日のところは予洗いからにしときましょうか...」

 正直に言って姉さんが何言ってるのかよく分かんなかったけど、ネットで髪は女の命とか書かれているくらいやっぱり姉さんもしっかりその辺は大切にしてるんだなと感じるのだった。

 この後も姉さんは僕にすごく丁寧に体の洗い方も理由とともに説明してくれた。脱衣所まではすごく緊張していた僕も、すごく丁寧に説明してくれることやだんだん慣れてきたのもあって緊張はなくなり、残った気持ちはと言えば女の人ってすごく大変なんだなぁってこととそれを自分がやらなくちゃいけないのだと思うと起こる憂鬱な気持ち、ご飯を終えた後の満腹感や体のポカポカ感からくる眠気だった。


「お風呂あがったら髪も私が乾かしてあげるからね、ってあら?ふふっ綾斗眠くなっちゃたみたいね。綾斗がお風呂で寝落ちしたことなんて過去になかったし、これも体が変化したことによって起こった違いとみて間違いなさそうね。やっぱり一緒に入って正解だったわ」

 ウトウトしている僕を姉さんが優しく揺すって起こしてくれた。

「ほら、お風呂で寝るのは危ないし起きなさい。」

 そのあとのことは眠すぎてあまり覚えてはいないものの、僕は母さんが急いで買ってきた女の子用の下着ともこもこのパジャマを着てそのまま眠りについた。


「う、朝かぁ。と、トイレ~」

 寝ぼけたままトイレに入り、いつも通りにおしっこをする。

「あ」

 勢いよくおしっこが床とパンツに落ちたところで僕は完全に目が覚めた。せっかく買ってくれたパンツとパジャマはしっかり汚れてしまった。

「ど、どうしよう!と、とりあえず床をトイレットペーパーで拭いてそれから、えっと...」


 僕がトイレでものすごく焦っていると、姉さんが起きたのか部屋のドアが開く音がした。

「あれ、トイレ閉まってる。母さん?いや、下でご飯作ってる音するし綾斗か。綾斗?トイレまだ終わりそうにない?」

「灯姉さーん。ぼ、僕トイレにその間違っちゃって...」

「ん?間違い?あー、綾斗寝ぼけて立ったままトイレしちゃったのね。本当は朝風呂良くないんだけど、おしっこついたままじゃ気持ち悪いでしょうしお風呂入ろっか」


 結局、僕は朝にも姉さんと一緒にお風呂に入ることになってしまうのだった。


 

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