1.引きこもりは女の子に進化?した
恋愛なんてお金がかかるし、話の合わない女子と無理やり話を合わせなくちゃならないし、何もいいことなんかないから、俺には恋人とか一生いらないわ~とか仲良くなった友達に話していたその1年後、高校2年生の夏、俺はまともに遊んでくれる友達もいなくなったいわゆるぼっちになってしまっていた。
1年のころ、仲の良かった友達は全員彼女を作ってしまい、その結果なんか裏切られた気がした俺が彼らと話さなくなり、まあ気が付けばクラスでも浮いた彼女いらねぇわ(笑)とか言って気取ってた痛い奴という完全に取り返しのつかない存在になり果てていた。どうやら、仲の良かった男友達が俺が女となんて話す意味ねぇよとか言ってたのを彼女にもらした結果、クラスの女子コミュニティにその情報が流れ、女子から嫌われ者になり、それに付随して気づけば男子たちからも嫌われていた。無視されるのは当たり前だし、露骨に嫌そうな顔や舌打ちなんかをされるといったまあいわゆるイジメにも合うようになっていた。
「僕の自業自得な所もあるけど、あいつら酷くないか...仮にも一時期は毎日のように遊んでた仲なのに。もう学校行きたくない」
そうこうして、女性嫌いから転じたイジメにより、人間不信に陥った俺は、部屋に引きこもり、家族とも話を出来ない完全な引きこもりへと秋ごろには変化していた。当然、両親からは呆れられるようになったし、優しかった姉も次第に冷たい目を向けるようになっていった。ちなみに一人称も自身の喪失に伴って俺から僕へと変わっていった。
そんな引きこもりになり、毎日部屋にこもりPCをいじったり、ゲームをしたりして過ごして1年たったある日、このままでは駄目だと思った僕は家族が誰もいない平日の昼間に久しぶりに外に出てみることにした。
「久しぶりに外出たなぁ。うう、周りから変な目で見られてるんじゃないかなぁ。でもこのまま引きこもってても悪いようにしかならないし僕は変わるって決めたんだ」
特に当てはないものの引きこもっていた間に町に変わったところがないかと歩いていると、僕の知らない建物が建てられていることに気が付いた。
「こんなところに教会なんてあったけ?いや、流石に1年やそこらでこんな立派な教会が建築されるわけないし、僕が気づいてなかっただけだろうな。僕はいま懺悔したいことが沢山あるし、せっかくだし寄っていこうかな」
引きこもりだった僕でもこの立派で神聖な雰囲気のある教会に気持ちが後押しされたのか気づけば教会の中に入っていた。
「あれ?誰もいないのかな?こんな立派な教会なのに人が少ないのかな?まあいいや、その方が僕にとっては都合がいいし。あれがいわゆる神像ってやつなのかな?なんか見てるだけで心が洗われるみたいだ。ええと、作法とか分からないけど多分懺悔とかお祈りする時って手を組んで膝をついてやるべきだよね」
僕は、膝をつき手を胸の前に組み、目を閉じて懺悔を始めた。人との関係を損得勘定でしか考えず、女子と話すこと自体を下に見ていた過去の自分、周りからの視線を恐れて引きこもった弱い心、僕のことを思って呼びかけてくれていた両親や姉のことを無視して殻に閉じこもり、心の内を周りに共有することすらしなかった愚かさ、他にも自分がこれからは心を入れ替え新しい自分として生きていきたいという決意を心をこめてお祈りした。
自分の中ではそんなに長い間祈っているつもりはなかったものの、祈り終わったあとには空は夕陽によって赤く染まり始めていた。
「えっ!こんなに時間が経ってるなんて!家を出たの13時ごろだったし、ここについたのなんてそれから20分もたってないぐらいだったと思うのに」
僕は慌てて祈りをやめ、急いで家に帰った。家に着き自室に入った瞬間、信じられないぐらいの立つことすら苦しいほどの眠気が僕を襲った。
「な、なんだこの眠さ。久しぶりに外出したからかな?思ったより精神的に疲れてたのかも」
ベットに倒れこんだ僕は眠気に抗うのをやめ、眠りについた。
体を引き裂くような痛みと体中を何かが這いずり回るような感覚によって目が覚めた。僕の目の前には目に涙を浮かべた姉さんがいた。
「な、なんで僕の部屋にいるの?そ、その、どうしたの、灯姉さん。なんで泣きそうなの?」
何故かわからないけど、僕の喉から出てくる声は僕の想像しているよりも遥かに高く幼いものが聞こえた。
姉さんは僕の顔を見て声を聴いた後、涙をぬぐうとものすごい勢いで僕の部屋を出ていき階段を下りて行った。そのあと、姉さんのものすごく大きな声が聞こえてきた。
「父さん、母さん、綾斗が目を覚ましたよ!しかもなんかめちゃくちゃ可愛い女の子になって!」
よく状況はつかめないけど、僕は多分寝込んでたらしい。しかも、目を覚ますと僕は女の子になっちゃてるらしい。
「「「えええー---!どういうことー--!」」」
この時、1階の両親と2階の僕とがほとんど同時に声をあげたことで、神谷家からは大きな声が上がった。