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92.第三次召喚勇者計画

 こんな事態になってしまい、国や街などの垣根は関係なく、全員が一つになり、リディエへと固まっているヒューディアルの民。


 それを率いる、こちら側の軍のトップ。人類代表と言った立場であるレイン・クディアに、俺たち兄妹と魔王プレシャは、事の顛末を話した。


 何故ギルドマスターではなく、サブマスターである彼女がトップを任されているのかと言えば……ギルドマスターであるウィッツは、クリディアで起こった戦闘によって殺されてしまったからだという。


 他にも多くの犠牲を払って、今がある。


「さて、次はこちらの話をしよう。どういった経緯で、このような事態になったのかを」



 ***



 ――あの戦争の後。戦力を大きく失ったものの、消えない魔族という脅威から、ウィッツ・スカルドはある計画を進めた。


『それじゃ、取引は成立だ。「第三次召喚勇者(サードヒーロー)計画」の件、よろしく頼んだよ』


『フフッ、金さえ弾んでくれるなら勇者召喚くらい、お安い御用よ?』


 ――第三次召喚勇者(サードヒーロー)計画。ドルニア王国の持つ勇者召喚の術を用いて、足りない戦力を補う計画で、最も手っ取り早い方法であることは分かっていた。しかし、それには問題がある。


 そもそも召喚勇者は、この世界の人間には珍しいスキルを必ず持っている。さらに言えば、強力なSランクのスキルを持つ者を呼び出す事さえある術。


 そもそもSランクという定義は、ステータスに書かれたものであるが、一般的なSランクの定義では、スキル一つで世界のバランスを崩すことができる、それがSランクというもの。


 それを世界に呼び出せば呼び出すほど、世界のバランスは狂ってしまうという訳だ。



 ――そして予定通り、第三次召喚勇者計画は実施された。召喚されたのは――二十名ほど。第一次、第二次と比べて数が少なかったが、それは問題ではなかった。


『――Sランク「法則定義」です!』


 ……


『――Sランク「加速装置」……もう二人目ですよ!?』


 …………


『――Sランク、「重力操作」……三人目です』


 ………………


 ……………………



 ――そして、召喚されたSランクは全部で七人。Sランクでなくとも、優秀なスキルを持った勇者が多く召喚され、第一次や第二次とは比べ物にならないほどの、大幅な戦力増加が見込める。……はずだった。


『従ったら元の世界に帰れるのか、聞いている』


『それは……その……まだ開発中……とか……アハハハハハ……ッ』


『まさかと思うが、帰る方法は分からねェとか言うんじゃねぇだろうなァ!?』



 ――そもそも、第二次召喚勇者(セカンドヒーロー)すらもコントロールする事が出来なかったドルニアに、これほどの大きな力を操る事も、抑える事も出来なかった。


『ドルニア……が……どうしてこんな事に……ッ!』


『ンなもん決まってるだろうが。自分勝手にオレたちを呼び出して、対価も無しに使い潰そうってか? 甘い考えでオレたちを馬鹿にするのも大概にするんだなァ!』



 ***



「それからは単純だ。アタシら数千の戦力も、ドルニア、クリディア、他の小さな村や街も続けてほぼ一方的に蹂躙されてきた。そして最後の砦がここ、リディエの前線基地だ」


「……俺たちが、無言でヒューディアルを離れたばかりに……」


 もし、俺たちがあの時、独断と自身の目的の為だけにグランスレイフへ向かっていなければ。このような惨劇にはならなかったのだろうか。


「いや、別にお前たちを責めるつもりはない。お前たちにも目的があったんだ。仕方ないだろう」


 そう言うレイン・クディアであったが、結局。目の前で起きているこの惨状は変わらない。プレシャは、


「我にも目的がある。その上で、我の力を貸そう。まずはこの状況を打開しなければならない」


「目的……。人間と魔族で互いに二つの『資源』を交換するという物だったな。それで平和的な解決が出来るのなら、こちらも賛成ではあるが……。まずは第三次召喚勇者(サードヒーロー)計画の尻拭いをしなければならない。……力を貸してくれるだろうか」


「我は勿論力を貸そう。今後の人間と魔族の友好を築けるのならば、お安い御用だ」


「もちろん俺も。原因は俺たちにもあるんだ。協力させてほしい」


「……私も。このまま黙って、あんな人たちに殺されるなんて冗談じゃない」

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