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91.Sランク『死者蘇生』

 向かい合う紫色のドラゴンと、二人の人間。


 二人はピンク髪の女性と黒髪の男は、それぞれ『法則定義』『物体転送』というSランクスキルを持っている。


 そんな二人を相手に、ドラゴンの姿をした魔王、プレシャは互角の戦いを見せている。……それどころか、その圧倒的な力から彼女のほうが有利であろう。


「――『法則定義』、重い体であればあるほど動きが鈍くなるッ」


『そうか。我はここから一歩も動かずとも貴様らを倒す事など容易だが』


 そう言うとプレシャは、口元に紫色の光を溜め始める。


「――『物体転送』ッ!」


 彼は、落ちている瓦礫や木材などを片っ端からプレシャの巨体へと叩き込むが、体の大きさに対して、ダメージが少なすぎる。この程度の攻撃ではびくともしない。……対して、


 ――ゴオオオオオオオォォォォォォォォッ!!


 紫色の破壊的な光線が、二人へ向けて放たれる。二人はなんとか避けるが、その実力差はさらに明白となった。


『諦めるが良い。長い時を生きたこの我に、そんなスキル一つで勝てると思うな』


 そんなプレシャの言葉に続けるように、横から別の男の声が飛んでくる。


「ああ、諦めるとしよう。今回は撤退だ」


「リーダーッ!?」


 十数名の人間を引き連れた金髪の男が現れ、そう告げる。


 そして、その中の人間には……プレシャがさっき倒したはずの相手である、重力を操る銀髪の男の姿もあった。まるで、さっきの戦いが無かったかのように。何事もなく立っていた。


『あれは……ッ!? 確かに我のブレスで焼き焦がしたはずッ』


「――私の『死者蘇生』スキルです。……ごめんなさいっ」


 十数名の中の一人に紛れていた、大人しそうな黒髪ショートの女性。平均的な身長で、黒い防具を身につけて集団へ完全に溶け込んでいた彼女は、姿を現すと、


「こんな所でやられる訳にはいかないの。私たちも、目的があるから……。だから、今回は引かせてもらうね」


「……という訳だ。那智(なち)、繋げ」


 那智と呼ばれた地味目な女性は、無言で頷くと――


「――『空間接続』」


 同時、彼女の目の前に空間の歪みが現れる。そこへ次々と飛び込んでいくのを見て、プレシャは黙っていられずに。


 飛び上がり、空間の歪みへと向けてその巨体を動かして殴りかかるが……その時にはもう既に、歪みは消え去っていた。


『逃がしたか……ッ!』


 そんな騒ぎに、プレシャと一度離れて戦っていた梅屋正紀と唯葉がやってくる。


「プレシャ、大丈夫か!?」


『遅いぞ……。逃がしてしまった。今から追いかけた所で、追い付くのは不可能だろう』


 ひとまずこの場は何とかなったが、殺したはずの敵が生き返っていたこと。そして、『死者蘇生』スキルの存在。ただでさえ厄介な敵なのに、さらに面倒な事が起こっているのだろう。



 ***



 後から現れた二人を見て、驚いた表情で彼らの元へ向かっていく一人の女性がいた。


「梅屋正紀に梅屋唯葉だな。……どうやらアタシの見間違いでも何でもないようだな」


 褐色肌で、防具に身を包んだ女戦士で、元々はクリディアのギルドでサブマスターをしていた女性だ。


「レインさん……」


 急に姿を消し、再び現れた彼らに、同時に現れた魔王の存在。


「まず問おう。お前達は敵なのか、味方なのか」


 彼女は険しい表情で、こちらを睨みながら言い放つ。


 いくら自分たちの目的の為とはいえ、突然姿を消して、魔王と共に戻ってきたとなれば、まず気になる事だろう。


 ましてや、離れていた俺たちには全貌を掴めないが、こんな状況にもなってしまっている。敵だと思われても、無理は無いだろう。しかし、俺は――


「もちろん俺たちも、魔王であるプレシャも。人間の味方だ」


 そう真っ直ぐに、俺は今も睨み続ける彼女へと向けて言い放つ。


 同時に、プレシャも力を抜くと、巨体は分解され、塵となって消えていく。そこに残ったのは、細かい所を除けば人間となんら変わりない女性、プレシャの姿だった。


「我も、人間とこれ以上の争いは望んでいない。この状況下で我の力が必要ならば手を貸そう。我は人間と魔族を繋ぐ。そう誓い、ここまでやって来たのだから」


 プレシャの威厳ある、思いを乗せた言葉は、睨み続けていた彼女の心まで届く。


 構えていた武器を下ろし、彼女は――


「確かに、この窮地を救って貰ったのは事実。ひとまず信じるとしよう。……リディエの前線基地へと戻る。そこで詳しい話を聞かせてもらおうか」

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