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88.Sランク『重力支配』

 巨大なドラゴンと化したプレシャは――変身する前に、誰が襲撃者であるのかの目星を付けていた。


 梅屋正紀や唯葉、工藤茂春なら元々ここにいたので、大体誰が味方で誰が敵なのかを分かっている。梅屋兄妹二人に関しては前の戦争で顔を合わせているので、さらに実力者であれば忘れている事はないだろう。そんな彼らから聞いた情報と照らし合わせて。


 つまり、彼らが見覚えのないかつ、クリディアやリエメラのような惨状を起こせるほどの実力を持った相手を倒せば終わり。


 遠くから眺め、大体目星をつけたのは……六人。他にも敵はいるはずではあるが、遠目から見ても『脅威』だと思う相手はこれで全てだ。


『まずは貴様か……』


 プレシャの視線の先には、銀髪の男が立っていた。どんな能力を持っているのかは不明だが、彼に近づいた者に触れることなく、容赦なく地面へと叩きつけて行動不能にしたり、逆に浮かばせて動けない相手を殴り飛ばしたりとやりたい放題だ。


 あの圧倒的な力を遠くから見て皆と話し合った結果、『重力』を操るスキルではないかという結論に至った。


 それも、『Sランク』のスキルであることは間違いないだろう。スキル一つで、あれほど一方的に戦えているのだから。


「隠し玉って奴かァ? ……それにしては、何故かアイツらまで怯えているな……まあいい、何だろうが邪魔をする奴はぶち殺してやるッ」


 そう言うと銀髪の男は、自身よりも遥かに大きなプレシャと向かい合う。




 プレシャは口元に紫色の光を溜め込むと、――ゴオオオオォォォォォォッ!!


 轟音を立てながら、向かい合う男へと向けて紫の光線が放たれる。光線の向かう先に立つ彼は、一歩も動かない。


 光線が彼に触れようとした――その時。その光線は、不自然に下方向へと直角に曲がり、彼を光線が貫くことはなかった。


 光線が地面に叩きつけられ、地面が崩壊するが……ふわりと彼は飛び上がり、その余波を受け流す。


(やはり、予想通りだったか)


 彼の周りには、重力のバリアが展開されている。それがある限り、彼に攻撃を届かせることは出来ないだろう。


「こんなのも防げちまうなんてなァ、こりゃ凄え。まさしく『無敵』って奴じゃねェかこりゃァ」


 そう言い、笑みを浮かべる彼は続けて、こちらに向かって走ってくる。彼がプレシャの巨体の元へと近づくと――ドスンッ!! 


 彼の操る重力に巻き込まれ、プレシャの足は地面に固定され、動けなくなってしまう。それどころか、彼女の重さが仇となり、少しずつ地面にめり込み、埋まっていってしまう。


「そのまま地面の下で眠ってろッ」


 捨て台詞を吐いた彼は、着実に、プレシャの巨体を地面へと引きずりこんでいく。


 プレシャは、重力に逆らえずに動くことができない。……しかし、それは肉体だけの話だった。ぷれの身体に溢れる魔力を行使して、魔法を使う余裕くらいは残っていたのだった。


 ――ギュギュギュッ! という音と共に三つ。一つはプレシャの口元に。残りの二つは重力でプレシャを地面へ埋めようとする彼の頭上と足元に。――紫色の魔法陣が生み出される。


「……何の真似だァ?」


『たかだかその程度の力で、我も甘く見られた物だな。……それは「重力を操る」スキルなのだろう。強くするか弱くするか。――決して、両方同時には出来ないのだろう?』


「……まさかッ!」


 そう。頭上から振る攻撃、足元から来る攻撃。どちらか片方だけならば、重力を強くするか弱くするかで避けることが出来るかもしれない。


 ……しかし、両方同時に来たらどうなる?


『どうやら正解だったようだな。確かに強いスキルではあったが……絶対無敵なんてものは存在しない。自身の能力を過信し過ぎた末路だ』


 プレシャは、再び口元から紫色の光線を放つと、魔法陣を通って二つに分かれ、頭上と足元から同時に彼を貫いた。


 光線に焼かれた彼は、その場でパタリと倒れる。


『彼らは……心配する事も無いか。彼らも異次元のような強さだ』


 プレシャは、次なる敵を探し、空へと羽ばたいた。

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