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84.リディエ領へ

 四人を乗せた車は、崩壊したリエメラを去り、クリディアを通り過ぎて――リディエ領へとやってきた。……のだが、


「間に合わなかったか……」


 プレシャの車が出せる最高速度でここまで突っ走って来たのだが、それでも先を越されてしまった。


 その先では、戦いが。二つの勢力の、本気の殺し合いが行われていた。しかし、ここから見た所、その人数差は著しい。


 何千もの軍勢に対して、もう一方は……なんと、たったの数十人程度で。しかもその戦況は、拮抗していた。


 少人数の方が、さっきリエメラでやり取りを聞いたあの集団なのだろうか。そして数千の軍勢は、それを迎え撃つような形。


 一体彼らは何者なのだろうか。俺たちと同じく、日本から来た召喚者なのか。それにしても、異次元すぎる強さだ。


 そもそもこちらだって、グランスレイフにいた俺たちを抜きにしても、他にまだ召喚者はいる。


 Sランクのスキル『物質錬成』を持つ水橋は、この世界の人間は持ち得ない拳銃を生み出して使いこなせるし、他にも一人、唯葉たちのクラスにも一人、Sランクスキル持ちがいたはず。


 それでなくとも、冒険者に兵士、戦闘経験を積んだ者揃い。それを同時に数千も前にして、俺なら戦おうなんて気すらも起きないだろう。


「とにかく、まずはアイツらを止めなくちゃいけねえな……」


「我が行こう。今、この混戦の中にただの人間が混じっても、この戦いは終わらないだろう。何か別のインパクトを与えなくてはならない。……そこで、我の巨体が姿を現せば、両勢力共にこちらへ注目するだろう」


 プレシャはそう言うが……それはつまり、あの勢力を両方ともをプレシャが相手にするということ。


 実際に倒すのは、あのリエメラの宿屋にいた連中だけだとしても、彼らにはプレシャが味方だなんてこと分からないだろうし、それどころかあの戦争を知っている者ならば敵だと判断するだろう。


「……あれを全て敵に回すという事になる。流石に無謀じゃないのか」


「我を何だと思っている? 魔王だ。……お前達の時はイレギュラーだっただけだが、あの程度の敵相手に我が苦戦するとは思えんな」


 自信ありげにそういうプレシャに、俺たちはその大役を任せることにした。


「分かった。……俺たちも戦うけど、見た目のインパクト上、プレシャにヘイトが集中するのは確実だ。気を付けてくれ」


 復活したとは言っても、まだ病み上がりのプレシャにこんな役を任せてしまうのも申し訳ないのだが……確かに彼女の言う通り、俺たちが混ざったところで事態はさらに混乱するだけだ。


 この状況を、さらに上から塗り潰せるようなインパクト……といえば、彼女の真の力を発揮したあの姿しかないだろう。


「ああ、お前らこそ死ぬんじゃないぞ」


 軽くプレシャはそう言うと、全身に力を込め――ギイイイイィィィンッ!!


 甲高い音と共に爆発が大陸に響きわたり――ヒューディアルの大地に、山のように大きな紫色のドラゴンが降り立った。


 かつて、人間と魔族の戦争で姿を見せた、この大陸の人々の記憶に新しい、その姿。……魔王、プレシャ・マーデンクロイツ。


 正面から戦いを挑もうという、その気概すらも失ってしまうような圧倒的な力を持つ彼女は、再びこのヒューディアルに君臨する。


『――グオオオオオオオォォォォォォォォッ!!』


 天に向かって放たれたその咆哮は、見る者の全てを震撼させる。


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