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64.人間へと戻る手がかり

 ――俺と、その後ろからやってきた唯葉。


 ――ほんの少し前に戦ったばかりの宿敵、プレシャ・マーデンクロイツと、その手下の魔人たち。


 お互いに距離を取って、まずはこの訳の分からない状況を話し合い、整理することになった。



「その……助けて貰った事には率直に感謝を告げよう。だがな……何故貴様らがここに居るんだ!? そもそも、貴様らはあの爆発に巻き込まれて何故生きているんだッ!?」


 魔王・プレシャは、驚きと感謝と怒りが混ざって大変なことになりながらも、俺たちに向けて問いかける。……対して、俺は――


「本当にギリギリの所で避けられたんだ。ほんの一瞬でも遅かったら、俺たちは今頃死んでただろうな……」


 俺の言葉に、プレシャは呆れたような、怒ったような、そんなごちゃごちゃな表情を浮かべながら言う。


「あのなあ……確かに聞いたが、そうじゃない。何故この船に乗り込んで来たんだ。我ら魔族に対するスパイなのか? 一体何なんだッ」


「いや、そういうつもりは一切ない。……一つ『お願い』があって付いてきただけなんだ」


「人間が我ら魔族にお願いだと? ……ますます分からん。はあ、もういい。――皆は各自、クラーケンの襲撃による損傷箇所と点検へ戻れ。我はこの人間の相手をする」


 プレシャはため息をつくと、手下の魔人たちを撤収させる。船上にはプレシャと俺たちだけになり、彼女はうんざりしたかのように、俺たちに向けて言い放つ。


「……ついて来い。話はそこでゆっくりと聞かせてもらおうか」



 ***



「で。その魔人に改造された妹を元の人間に戻してほしい、と」


 プレシャに連れてこられた船内の一室で、二人は事情を話した。話を聞いたプレシャは……突然笑い出すと、


「フフ、ハハハハハハッ!! そんな理由で我らの船に潜り込むとは……、ふ、ふふ……久々にこんなに笑ったわ……はあ、はあ……」


「……別に笑い話ではないだろう。こっちは真剣なんだが」


 俺は、笑い続けているプレシャに向けて少し苛立ったように言うと、


「……いや、すまん。五百年前の戦争ではスパイの人間が我が船に乗り込んで来たりした物だったが……まさか、そんな理由で乗り込まれるとは思わなくてな。それも、我をあそこまで追い詰めた二人が、な……」


 まだ少し笑い続けるプレシャを無視して、俺は話を続ける。


「で、唯葉を……妹を、人間に戻す事は出来るのか?」


 プレシャは少し考えた後、首を縦に振り、


「我には無理だが……アイツなら出来るだろうな。人体改造のスペシャリストだ」


 そう聞いて、俺は一人の男を思い出す。唯葉を、キリハ村の人々を魔神へと改造した魔人、アニロアを。


「アイツって……アニロアって魔人の事か?」


 今は亡き魔人の名前を口にする。が、プレシャは即否定した。


「違う。アニロアは……アイツの弟子だな。アイツは『ラヴビー』。アニロアとは比べ物にならないほどの高い技術を持っている」


「……じゃあ、その人の所に行けば、私は人間に……」


「ああ、恐らく。我は人体改造は専門外で、ハッキリとは断言出来ないが……まあ、アイツなら出来るだろう」


 ……とにかく、全くの手がかりなしよりは良かった。難航すると思っていた、魔族との話もなんだかあっさりとついてしまったし、このまますんなりと唯葉の魔人化の件は解決するのだろうか。


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