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59.終戦

 魔王・プレシャ・マーデンクロイツ。大きさも、その身に持つ力も規格外な敵に、所詮はただの一般人であるウィッツたちが向かっても、悔しいが足手まといになるだけだろう。


 なので、そんな強大な敵に立ち向かえるであろう少女、梅屋唯葉。そして、その兄である梅屋正紀の二人に魔王の討伐は任せて、ウィッツたちの部隊は、周りの魔人を引きつけ、二人の元へ絶対に近づけないように、時間を稼ぐことにした。


 しかし、所詮はただの人間である彼らにとっては魔人でさえ、敵としては強すぎる。覆すことのできない絶対的な戦力差。決して倒すことはできなくとも、それでも……時間稼ぎくらいなら出来るだろう。


 こうして、魔王から少し離れた場所で、魔人と戦っていた――その時だった。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ!! 激しい音と共に、上空に紫色の大爆発が巻き起こったのだった。


「なんだあれは……」


 それから間もなく、この離れた所からでもその大きさがひしひしと伝わってくるその巨体が、バランスを崩し始める。


「――た、倒れるぞッ!?」


 巨体は、ゆっくりと横へ倒れ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!! 凄まじい揺れと衝撃波が、その場の人間、魔人お構いなしに、こちらへ向かって飛んでくる。


 なんとか踏ん張ると、目の前には完全に横たわり、動かなくなった巨体が。そして、相手にしていた魔人たちは……。


「……魔王様の命令だ。撤退、船へ戻るぞ!」


 そう言いながら、次々と魔人たちは海の方へと逃げていく。そもそも、根本的に身体能力が格上である魔人の逃げ足に人間が追いつくのは不可能なので、追うことは諦めた。その光景を眺め、ウィッツは一言呟いた。


「……終わった……みたいだね」


 魔族との戦争は……誰の想像より遥かに早く、ここに終わりを告げたのだ。



 ***



「……我の本気を、真正面から受け止めるとはな」


 ドラゴンの身体から抜け出した彼女は、ふらつく、重たいその体を無理やり動かして、船へと向かって飛びながら呟いた。


「まあ。相討ち、とまでは行かなかったようだが……人間にしてはよく頑張ったな。久々に我も楽しませてもらった」


 彼女は、そう言葉を付け足した。


 確かにあの身体はしばらく使えないだろうが、彼女は寸前のところで、絶命するまでには至らなかった。


 しかし、対するあの人間は――彼女にダメージを与えると同時に、あの爆発を直で喰らった。あれを受けて、生きているはずがない。


「……何とか生き延びたが、我には戦う力も残ってない上に、魔人共は人間如きに苦戦している。これは一度撤退するしかないようだな」


 なあに、人類はあの男、切り札を失った。プレシャを止められるであろう、唯一無二の存在を。


 次の戦争では、必ず人間から『知性の原石』を奪い取れるだろう。急ぐ必要はない。全ては、魔族の繁栄の為に。


 今は一部の魔族、いわゆる『魔人』しか持たない知性を、知性を持たない大多数の魔族、いわゆる『魔物』に与え、知性を魔族全体の物とする為に。……彼女は戦い続ける。


 かつて人間が、自らの種族が繁栄する為に、彼らにない物を求めてこちらに戦争を仕掛けたように。

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