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55.『魔王』の再来

「私の兄が、この魔法陣を展開している魔人の元へと向かいました。兄がこの魔法陣を止めるまで……何とか乗り切りましょうっ」


 私は、お兄ちゃんが失敗する――という可能性は考えていなかった。


 ここまで、何度も困難な状況を乗り越えてきた、自慢の兄だ。こんな所で失敗するなんて思わない。……私は兄、正紀を信じている。


 今、私がするべき事は――ここで魔物を倒し、誰一人ケガを負わせる事なく、この場を守り切ることだ。一人でも誰かをケガさせてしまえば、私はお兄ちゃんにあわせる顔もない。


「――『サンダー・ブラスト』ッ!」


 私は唱えると――ゴオオオオオオオオォォォォォォッ!! と、前方にて大爆発が巻き起こる。


 爆発の後、そこにいた魔物たちは一匹残らず塵と化していった。


「……す、凄すぎる。あれをあんな少女が?」

「噂通り、とんでもないな……」


 放たれた超火力の爆発に、その場の者たちは思わず見入ってしまう。


「気を抜かないで。まだまだ魔物たちが迫ってくるっ!」


 魔法で迫ってくる魔物を殲滅したが、倒したと言ってもほんの一部で、すぐに他の魔物が迫ってくる。一瞬たりとも気を緩める事はできない。


 ――その時。


「見ろ! 魔法陣が消えていく!」


 一人の冒険者が指をさしたのは、魔人たちの拠点の方角。そちらを見ると……そこを中心に展開されていた魔法陣がだんだんと消えていくのが見えた。


「……もしかして。お兄ちゃん、倒したのかな?」


 これでもうこれ以上魔物が増えることはない。が、一度現れた魔物が消えてくれる……なんて都合の良い展開はやってこなかった。


「反撃だああああぁぁぁぁぁぁぁッ!! 魔物を一匹残らず殲滅だああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 終わりの見えなかった戦いに、勝機が見えた。それだけで、再び消えかかっていた闘志が、これまで以上に燃え上がる!


 それぞれが持つ剣技、格闘術、弓術、槍術、魔法、スキル、持てる全てを出し切り、残された魔物を倒していく。


「――『サンダー・シュート』っ!」

 

 私も、みんなに負けじと魔法を放ち、魔物を殲滅していくが……少しだけ、気がかりな事があった。


(……お兄ちゃん、本当に倒したのかな。いくら何でも早すぎるような……。確かにお兄ちゃんは強いけど、こんなにも早く、あれだけの数の魔人もいるのに、あの一風変わった魔人を倒すことなんて難しいんじゃ……?)


 そんな疑念が、晴れることはない。


 しかし、確かに魔法陣は消えていった。向こうの状況がここからでは分からない今、倒してくれたんだと思うしかない。ならば、私がやる事は――この魔物たちを片付ける。


「――『サンダー・ブラスト』ッ!」


 雷魔法の範疇を超えた爆発が、魔物の群れを吹き飛ばす。他のみんなも一丸となって次々と魔物を倒していき、周囲の魔物はかなり片付いてきただろう。――その時だった。


 ――ギイイイイイイィィィィンッ!!


 甲高い、耳障りな音が、遠く離れた場所から飛んでくる。


 その音の発信源は、魔人の拠点の方角。そして振り向くと、そこには――


「何だありゃ……。まるで昔話に出てくるドラゴンみたいだ……」


 そこには、遠く離れたここからでもはっきりと形の分かる、山のように巨大な――紫色で、四足歩行のドラゴンの姿があった。


「いや、まさかあれは……本当に『魔王』なんじゃないか!?」


 魔王……。その単語に、私は嫌な予感を感じる。


「そうだ、間違いない。あれは500年前の戦争でこの大陸に呪いを振り撒いた――魔王『プレシャ』そのものだろう。姿かたち、クリディアに残っている記録の通りだッ」


 ギルドマスターで、この場の指揮を取るウィッツが、そう叫ぶ。


「そんな……。だとしたら、お兄ちゃんが危ないっ!」


「正紀君はあそこで戦っているんだろう? だとしたら、今すぐに向かわなくちゃいけないな」


 この離れた場所からでもよくわかる。見るからに強大な力を持っている『魔王』。あんなのと一対一でだなんて、まともに戦える訳がない。お兄ちゃんだって規格外の強さだとは思うが、相手はさらに上を行っているだろう。


「ターゲットは魔王、プレシャだッ! アイツを倒せばこの戦争は終結する! ……総員、突撃だーッ!」

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