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43.魔剣レイフィロア

「――キャアアアアァァァッ!!」


 薬草をせっせと集めていた私たちの元にも、突然、叫び声が飛んでくる。


「……あれって、美波(みなみ)さんたちの声だよね?」


「何があったのかしら。……神崎さん、見に行きましょう」


 あの悲鳴が飛んできたのは……少し離れたところで薬草を集めていた、美波立夏(みなみ りっか)たち、三人のグループの方だろう。


 全員のステータスを把握している訳ではないが……たしかあの三人は、かなりレベルが高い方だったはず。そこらの魔物、このあたりならばスライムやらで悲鳴をあげるような人たちではないのだが……。


 嫌な予感を感じた私は、両手に合わせて二つ、拳銃を錬成すると、そのうちの一つを神崎さんの方へと放り投げる。


「う、うわっ、ちょっ、あぶなっ!?」


「念のため持っておいて。六発しか弾はないけれど」


「でも私、銃なんて撃った事ないんだけど……」


「引き金を引くだけよ。それだけで弾が出るように調整してあるから」


 そう言うと、二人は悲鳴が上がった方へと走りだす。



 ***



「……委員長っ! このドラゴン、あたし達の攻撃が全く通らないの!」


 そこには、緑色の、私たちよりも少し大きな体の、文字通りの『ドラゴン』がいた。


 そして、それに向かい合う、美波たち三人パーティ。


「……こんな強い魔物、こんな昼間にいる訳ないと思ったのに。下がってて。ここは神崎さんと二人で食い止める」


 美波たち三人を一度引かせ、続いて私と神崎の二人が、ドラゴンと向かい合う。


「……でも、あんな強そうなドラゴンにこの銃が通用するのかな」


「大丈夫。私の切り札はこの銃だけじゃないから。……私は弱いから、神崎さんに託す事になるんだけど」


 まずは、その右手に持つ銃の引き金を引く。――パンッ!


 銃弾は、乾いた銃声と共にそのままドラゴンの体へと命中する。しかしその弾は、見るからに硬そうなドラゴンの皮膚に弾かれてしまう。


 続けて、パン、パンッ!! と、神崎も二発放つが、結果は同じだった。


「やっぱりあのドラゴンには通用しないよ」


「みたいね……。出来るかは分からないけど、私の最後の切り札を使うわ。ただ、その切り札を使って戦うのは……神崎さんにお願いすることになる」


「まかせて。さっきは私の出る幕が無かったし、次は私が頑張るよっ」


「ありがとう。それじゃ――『物質錬成』ッ!」


 私の目の前が光り輝き――現れたのは、黒く透明な、光る長剣。


 それは、ドルニアに伝わる伝説の剣。ミスリルで出来たその剣は、まさに『最強の剣』と呼ばれていた。


 そして、その剣は……召喚勇者の中でも特に優秀だった、Sランク、工藤茂春に渡されていたものだった。その剣の名は――


「『魔剣レイフィロア』――!? それって、工藤君が持っていた剣じゃ……」


「ええ。隙を見て、いつでも錬成できるように構造、材料を確認させてもらった。それにしても、ミスリルなんてファンタジー染みたもの、とてもじゃないけど私の物質錬成じゃないと作れないわね。……これを使って」


 ミスリルで出来た剣を神崎に渡す。その剣は、見た目よりも軽く、それでもなお、最強の名にふさわしい強さを持つ。しかし、そんな剣でも、素のステータスが低い私には使いこなせない。


 ……まあ、あの時梅屋君と私で戦った時には、彼の攻撃に一撃で返されていたし、決して万能ではないとは思うが、最強の剣を謳うくらいだ。あのドラゴンくらいなら軽々と葬れるはず。


「それじゃ、行ってくるね。水橋さんはここで待ってて!」


「ごめんなさい、私がもっと強ければ……」


「水橋さんが謝る事じゃないよ。私たちだって、水橋さんにいっぱい助けられてるんだから」


 そういうと、神崎あかねは目の前のドラゴンの元へ、一歩ずつ、ゆっくりと近づいていく。

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