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42.レベル2

 異世界には似合わない、どうしてもその存在が浮いてしまう大型のバスは、草原のど真ん中に停車する。全員降りた事を確認すると、私はバスに触れて――


「――『分解』」


 そう一言言うと、さっきまで動いていたバスが、モワア……ッ、と、煙に巻くように消えていく。


 私のスキルで錬成したものは、逆に分解することもできる。そこにあった形跡さえ残ることはない。


「ここは薬草の群生地……だけど、街からも離れてて、まだ沢山残っているはず。手分けして集めましょうか」


 馬車ならばここまで来れなくもないだろうが、個人で馬車を持っている冒険者なんてあまりいないだろう。やはり、ここに目星をつけておいて正解だった。


 どれほど薬草が集まるかにもよるが、あのバスをもう一度出せば、馬車よりもさらに多く持ち帰ることだってできるだろうし、ひとまず生活していくだけのお金は稼げそうだ。


「それじゃ、私はあっちを探してくるねー? 昼だから魔物も弱いと思うけど、みんなも気をつけてね!」


「それじゃ、俺たちはこっちだな」


 ……と、それぞれバラバラに分かれ、薬草を採取し始めた。私は、神崎あかねと二人で、少し離れた岩場の近くで採集する事にした。



 ***



 岩場の近くにもたくさん薬草が生えていて、集めるのには絶好のポイントなのだが……ほんの少し、面倒な事が。


「魔物だね……。スライムだから、そんなに手強くはなさそうだけど、五匹もいるよ」


 スライムといえば、昼の魔物の中でも弱い部類だが……数の差があった。それに、レベルだって特別高い訳でもない。


「……仕方ないわ。私がやる。――『物質錬成』」


 私は、そう言うと――右手に拳銃を錬成する。


 この銃を初めてみる神崎は、横でひいっ、と驚いていたが……私は構わず、奥のスライムに向けて、引き金を引く。


 ――パンッ、パンッ、パンパンパンッ!!


 五発の銃弾は、全てスライムの体に命中し、ビシャアッ! とはじけてそのまま消えていく。


 私が初めて、魔物をこの手で倒した瞬間だ。


 制服のポケットにしまっていた、前に城で配布された小さな石版を取り出して、指で触れてみる。


【水橋 明日香】

《レベル》2

《スキル》物質錬成

《力》9

《守》7

《器用》14

《敏捷》9



「水橋さん、レベル2になったんだね。……良かったの?」


「うん。ずっとこのままじゃ、ダメだと思ったから……」


 これで、『レベル1』も卒業だ。……思えば長いレベル1だった。


 今までは、戦う理由が見出せなかったけれど、今は違う。みんなを守っていくために、私は戦う事ができる。


「本当、凄いね……そのスキル。何でも作れちゃうの?」


「いえ、銃とか車とかは、たまたま私が構造とかを知っていたからで……私が細かく知っている物じゃないと、設計図でもない限りは作れないわ」


「へぇー。それでも充分、便利そうだよねー。私じゃ車の仕組みとか分からないし、絶対使いこなせないけど」


 私だって、万能じゃない。きっとこのスキルをもっと使いこなせる人がいると思う。どうしても、本当に私なんかがこのスキルを持って、良かったのだろうか……なんて思ってしまう。もっと適任者が、とか。


「とりあえず、魔物も片付けた訳だし……薬草を集めましょう?」


 そう言うと、私たちは岩場に生えている薬草を摘みはじめる。

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