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3.異世界の宿屋さん

「はい、大銅貨5枚。確かにいただきましたぁ」


 今日はもう休もうと、街の大通りにあった宿屋へと入ったのだが……手持ちの小金貨を出した所、


『え、えええぇぇ!? 小金貨ですか!? 参りましたねぇ……。これじゃ、お釣りが渡せません……』


 と言われてしまい、宿屋のお姉さんに教えてもらった両替屋で小金貨一枚を、小さな単位の小銀貨や大銅貨、小銅貨へと換えてもらった。


 その際に、両替所の人にこの世界の通貨について教えてもらった。……この歳でお金の価値を教えてもらうというのも少し抵抗があったが……。



 まず小銅貨と大銅貨。これらは日本円で言うところの『小銭』にあたるようだ。


 食べ物や宿代、生活用品を買ったりと、普段使いでは主にこれらの銅貨を使用する。



 次に小銀貨と大銀貨。この二つは日本で言うところの『紙幣』だ。


 家具とか武具とか、日常的に買わないような高めの買い物をする時に使うらしい。



 基本は銅貨と銀貨を持っておけばまず困ることはないのだが、最後に小金貨と大金貨。


 二種類ある金貨だが、まず滅多に使われない。


 大きな取引とか、とにかく規模の大きい買い物だったりに使うこともあるが、富裕層の貯金用に使われることがほとんどだ。あの質屋は、様々なものを買い取るという店の性質上、おいてあったも不思議ではないだろうが、宿屋や普通の店とかには置いてあるはずがない。


 つまり、小金貨5枚というのはかなりの大金らしいのだ。これだけあれば三年は働かなくても生きていけるとか。



 ***



 俺は宿の部屋に入ると、黒い学生服のままベッドに横たわる。


 その瞬間、色々とありすぎた疲れが一気に襲いかかってきた。


(……これからどうする。こんな何も知らない場所で、お金しかないのに……俺は、本当にやっていけるのだろうか)


 全く見通しのつかないこれからの将来に、大きな不安を覚えてしまう。


 ひとまず、スマホを売ったお金で衣食住には困らないだろう。でも、このお金だって無限じゃない。今のままの生活を続けていればそのうち底をつく。


 つまり、いつかは仕事を探し、職に就かなければならない。


 それと並行して、元の世界に戻るための手がかりも探したい。この世界も良い場所なのかもしれないが、当然住み慣れた日本が一番だ。


 お金には若干の余裕があるので、そこまで急ぐ必要もないというのが幸いだ。



(あいつら、今頃何してるんだろうな)

 

 ふと、同級生の事を思い浮かべる。特別仲の良い相手はいないが、同じ境遇になった者同士だ。あの場所から追放された今、決して仲間ではないのだが……他の奴らはともかく、あんな状況でも庇ってくれた、学級委員の水橋さんには頭が上がらないな。


 あちこち回っている間にもう日も暮れて夕食どきだし、なにか美味しいものでも食べてるんだろうか。


 特にSランクとか言われていた工藤あたりは特別な待遇をされていそうだ。


 まあ、あんな騒がしい場所よりもこの宿の方が一人だし、静かだし、何倍も過ごしやすいなとは思う。勢いで放った言葉ではあったが、あの時の言葉は実際本音も含んでいる。


 元々、ああいうクラスとかで群れたりするのは、好きじゃないんだ。



 ***



 しばらく休み、ベッドから起き上がると、俺は部屋の中を色々見て回ってみる。


 そこで、俺はこの異世界の物にしては珍しく、見覚えのあるものを見つける。


 ……それは、タブレット端末くらいの大きさの石版だった。小さなデスクの上にがっちりと固定されている。


「これって、城でスキルを確認された時に使ったやつだよな……」


 あの時の事を思い出して、俺は石版の上にそっと手を置いてみる。すると、石版は黒く光りだし……、石版の表面にはオレンジ色で何やら文字が浮かび上がった。


 ごちゃごちゃと書かれたそれは、まるでゲームのステータス画面のようで。



《体力》100/100%

《レベル》1

《スキル》味方弱化

《力》24

《守》19

《器用》27

《敏捷》20


 ……その先にも、空腹度、疲労度、状態異常、魔法、身長、体重、肥満度、眠気、集中力、病気……ゲームのステータス画面のようで、ゲームにはないような細かすぎる数値ですらも書かれている。


 肥満度とか病気とかの項目があるし、異世界じゃ健康管理にもこれを使っているのかもしれない。なんだこの石版、万能すぎるだろ。


 宿にすら置いてあるということは、わりと一般家庭にも、日本の家電感覚で普及してたりするのだろうか?


 この数字の基準がわからない以上、ああ、俺は力よりも器用のほうが高いんだなーくらいにしか思えないし、このステータスのようなものを理解するのは後回しでもよさそうだ。

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