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22.不幸な盗賊団

 一夜明けて。なんでも行動の早い、別の部屋で寝ていたウィッツさんに俺と唯葉は叩き起こされると、宿を出る支度をさせられる。……こんな朝早くから移動を始めるらしい。


 昨日の村でもそうだったが、ウィッツさんにはもう少しゆっくりするという選択肢はないのだろうか。……と思いつつも、眠い目をこすりながらも宿を出る準備を終える。


「待ちくたびれたよ、梅屋兄妹! それじゃあ、出発するとしようか。今日で一気にクリディアまで向かうからね」



 ***



 しばらく馬車で揺られ続けて、だいたい二時間くらい経っただろうか。


 俺は馬車の中でそのまま眠りに落ちてしまい、唯葉は昨日、俺があげた魔導書を読んでいる。もう半分くらい読み終えている。いくら何でも早すぎないか?


 思い思いの時間をそれぞれ過ごしていると突然――キキィッ!! という耳障りな音と共に、何の前触れもなく馬車が急停車する。


 その衝撃で、俺も目を覚ましてしまい、何があったのかと馬車の外を見てみると……。


 道を塞ぐ四人の姿と、こちらに向かって歩いてくる一人の姿があった。


 それぞれ、手には剣を持っていて、服装はお世辞にもオシャレとは言い難い、素朴なシャツ姿の男五人。


 その中の一人が、俺たちの乗る馬車へと歩いてくると、やぶからぼうに。


「金を出せ。持ち金を全て置いたら通らせてやる」


 ……盗賊だ。お金さえ置いていけば見逃してくれるらしい。


「……ウィッツさん。どうしますか?」


「魔人を倒したその実力が気になる。見せてくれるかい!」


 ……仕方ないので、俺は新調した剣を取ると、馬車から降りる。


「おい! 下手に動いたら斬るぞ!」


 盗賊男の、下手な脅しを俺は無視してまっすぐと盗賊の男の元へと歩いていく。俺の歩みと同時に、どんどん後ずさりしていく男。


 そして、十歩ほど下がった時、盗賊の男の顔つきが変わり――剣を構え、こちらに向けて振るう。


 その斬撃を――俺は右手の剣で軽く受け止めると。


「はああああああぁぁぁッ!」


 投げ飛ばすかのような勢いで、その盗賊の男を前方へと吹き飛ばした。


「よくも……ッ! お前ら、行くぞ!」

「「「おおーッ!」」」


 残りの、道を塞いでいた四人の盗賊が一気に、俺へと向かって剣を向け、走ってくる。


 四方向から迫ってくる盗賊。守のステータスはそこそこあるが、それでも剣で切られたらさすがに痛いに決まってるだろう。


 ……まず、俺は一人の盗賊の懐へ潜り込み、その手に持つ剣に一撃。剣の刃先を切断する。


「――ッ!? 剣が切られただと!?」


 俺はその勢いに任せて――二人目の剣にも一撃。三人目、四人目にも、高いステータスを活かした素早い動きで、一瞬にして四人の剣を切断し、無力化する。


 いくら盗賊とはいえども、武器がなければ何も怖いことはない。


 その頃、俺が最初に吹き飛ばした盗賊は……体を痛めてしまったらしいが、それでもなんとか立ち上がり、こちらに向かってくる。


「くっそおおぉぉぉぉ!!」


 ヤケクソ気味に突っ込んできたその盗賊の男の剣を、俺は再び受け止めて……キインッ!!


 甲高い音と共に、その剣を力で強引にへし折る。


「くそっ、お前……一体何者だ!」


「……ただの旅人だ」


 そう言うと、俺は無力化され、勝ち目がもうないと悟り抵抗もしなくなった盗賊たちを、ウィッツさんから渡されたロープで縛りあげる。



「……でも、この人たち、馬車に乗りませんよ?」


「うーん。ここに放置も出来ないしね。どうしたものか……」


 馬車は一台だけ。せいぜい乗れても、ぎゅうぎゅう詰めで六人までだ。すると、ウィッツさんが何かを閃いたらしく、


「……あっ、そうだ。もうすぐ街だし、あそこには冒険者ギルドの支部があるから――」


 ウィッツさんは、そう言うと……さらに荷物の中からロープを取り出す。そして、盗賊たちの腕にさらに結び付けて。


 ――もう一方を馬車の後ろへと結びつけた。まさか。



「それじゃあ、気を取り直して出発しようか!」


 ウィッツさんが馬に指示を与えると、盗賊を結びつけたまま、馬車が走り出した。


「あの人たち……大丈夫なのかな」


「唯葉。見ちゃダメだ」


 馬車の後ろには窓がないので、横窓から顔を出さない限りは見えないが……どうなっているか想像するだけで、全身が痛くなってきてしまった。……不幸な盗賊たちだ。

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