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21.リエメラの街

 俺と唯葉、そしてクリディアのギルドマスター、ウィッツさんの三人は、街の中で借りた馬車小屋に馬車を停める。


「宿は昨日のうちに予約してあるからね。まだ時間はあるし、二人で買い物にでも行ったらどうかな」


 ……という訳で、ドルニアの首都ほどではないが、かなり栄えているこの街……『リエメラ』で、唯葉と二人でショッピングへ出かけることにした。


 妹と二人でこうして買い物なんて、前の世界ではすることも無かったかもな。



 ***



「お兄ちゃん、これ、どうかな?」


「可愛いな。……似合ってるよ」


 緑色と白色の、優しい色合いをしたフリルのついている服を着て、試着室から出てくる唯葉。


 俺が褒めると……さらに何着も服を持って、再び試着室へとこもってしまった。


 俺は、ドルニアで色々と買い揃えた時に、素朴で普通な、動きやすい服を買っておいたのでこれ以上はいらない。


 しかし、唯葉は未だに中学の制服しか持っていなかったので、良い機会だし唯葉の服も選びに来たのだった。



 この異世界でもお洒落は活発なようで、多種多様で様々な服がある。……それにしても。


「どうかな、お兄ちゃん!」


 ……それはないだろう、妹よ。


 紫色のローブを纏って、ローブの中は赤いインナーで、長さが足らずにヘソを出している(サイズは合っているらしく、そういう物らしい)。


 下は黒いミニスカートで、ニーソックスを履いている。……って、ただのコスプレじゃねえか。



「……可愛い、けども。それはどうなんだ……?」


「えー? そりゃあ、日本じゃコスプレみたいだけどさ、この世界だったら普通のファッションだよー?」


 そういうものなのか? 確かにこの世界じゃそうなのかもしれないが……。まさかこんな所まで来て、妹のコスプレ姿を見ることになるなんて……。



 結局、コスプレ魔法使いセットと最初に着たマトモな服と、その他諸々を買って店を出た。



 ***



 俺の使っていた剣も、かなり乱暴な使い方をしていたせいか、刃こぼれしてきている。


 防具は大丈夫そうではあるし、そもそも最近は魔物と戦う機会もなかったので全然使っていなく……それに村長から譲ってもらった防具だし、これからも大切に使っていきたいので、防具は買わなくても良さそうだ。



 そして肝心の、唯葉の装備はというと……。


 俺の剣よりもさらに短く、そして軽い。俺の剣を持った後に唯葉の剣を持つと、まるでオモチャに感じてしまうほどだ。


 ……無理もない。唯葉は、普通の女の子なのだから。しかし、今の唯葉ならば選べる剣も幅広いだろう。


 そして防具だが……正直、ステータスが軒並み高い俺と唯葉には、今のところ防具はいらないんじゃないかと思う。


 あの魔人みたいな強敵相手なら必要かもしれないが、今のところはそんな敵と戦う予定はないんだし。並の魔物の攻撃くらいなら、多分俺たちはびくともしない。


 ……唯葉への、味方弱化による効果が不安ではあるのだが、そもそも唯葉自体レベルの差がある今はともかく、レベルを上げれば俺なんかすぐに越してしまうほどの高いステータスを持っている。


 正確なステータスの下がり幅は分からないので、はっきりとは言えないが……大体、味方弱化を受けてようやく俺と並ぶほどかもしれない。


 それなら、いっそのこと防具を外して、その分動きやすくしたほうが良いと思い……今回は剣だけを買い替えることにした。


 防具は……仕事の前金を貰ってからでも遅くはないだろう。


 俺も唯葉も、最初の頃よりも圧倒的にステータスが高くなっているので、今回はリーチが長く、重い剣を選ぶ。


 唯葉は、俺のスキルのせいでステータスが下がってしまう事を考慮して、俺よりも少し短く、少し軽いものを選んだ。


 ……とは言っても、普通の成人男性が使う平均的な剣で、女性がこれほどの物を持つのは珍しいらしいのだが。



「……お兄ちゃん、お金は大丈夫?」


 唯葉が、心配そうに俺の財布を覗き込んでくる。


 その心配通り、かなり高い部類の剣を二本買ったので、かなりの金額が吹き飛んでいった。……初日には五枚あった小金貨が、ついに一枚になってしまった。しかし、


「大丈夫。どれくらいかは分からないけど、お金は入るんだし。それに、小金貨一枚あればしばらくは困らないだろ」


 残り一枚にはなったものの、それでもまだ財布には余裕があるというのだから、小金貨一枚の重みを改めてひしひしと感じさせられる。

 


 ***



「色々見れて楽しかったねー」


「そうだなー。……もっとゆっくり見たかったけど、そろそろウィッツさんの所に戻らないと」

 

 ……こうして、リエメラでの買い物を終えた俺たちは、すっかり暗くなってしまったので、ウィッツさんの待っている宿屋へと向かうことにした。 

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