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147.FinalWave:金色の管理者

「揃ったな。では、最後の術式を始めるとしよう」


 再び異世界での戦いが始まったこの場所――グランスレイフの草原に造られた、この術式の為だけの、神殿のような建造物。


 そこには、魔王プレシャと、再びこの異世界へとやってきた四人の召喚勇者が集まっていた。


 あの術式から一ヶ月。ついに、世界と世界を繋げる、その最終段階が始まろうとしていた。


「さて、最後の最後まで油断は出来ない。……恐らく、我が術式を始めると共に、また『カミサマ』が現れるだろう。これで最後だ。……どうか、この世界を――助けてほしい」


「ああ、もちろん。俺は術式とか、そういうのはさっぱりだからな……任せた、プレシャ」


「術式の方は任せてほしい。我が……全て終わらせる」


 真剣な表情で、魔王・プレシャはそう言い放つ。


 そして、戦う気満々の俺に向けて、他のみんなが口を揃えたかのように言うのは――


「お兄ちゃん、病み上がりなんだから無理はしないでね? 私たちが頑張るから」


「あの時、先にやられちまった分をここで返す。だから、お前は引っ込んでろ」


「そうよ。いくら、ここで殺されても生き返せて貰えるからって……そんな無茶な戦いは許さない」


 ……しかし、みんなが頑張っている中、俺だけ見ているだけだなんて、そんな自分、許せない。


「あんな無茶はもうしない。無理はもうしないから――最後の戦い、俺も参加させてくれ」


 ここまで来たからには最後まで戦い抜く。何としてでも、絶対に。


「……では、始めよう。最後の術式を」


 プレシャが詠唱を始める。――同時、空が再び裂け――



 ***



 裂け目から現れたのは、人の形をしつつもその全てが金色に光る、人ではない何か。


 脳内に直接飛び込んでくるような、そんな声で。金色に光るそれは声を発する。


『全ての管理者である私がここにいるという事は、もう何を言っても無駄でしょう。その術式が終わるまで、一〇分程ですか。それまで、この世界を守り切ることが出来ればイレギュラーを認めましょう。……私たちはこの世界を放棄します』


「……言われなくとも、やってやるさ」


 管理者だか何だか知らないが……世界が壊れゆくのを黙って見ていろだなんて、誰にも言われる筋合いはない。


 放つ光、オーラからして、今までの敵よりも遥かに強大な相手だろう。


 でも。世界を守れるか否かの瀬戸際で。今、無理をしなくてどうする。


『管理者権限:世界崩壊プログラムを起動します』


 その言葉が実行されると共に、大地全体が悲鳴を上げるかのように揺れ始める。対して、俺は――


「神殺しの加護の下。お前の『権限』をコピーする」


 脳内に入ってくる。世界を管理する『コマンド』が。管理者に対抗できる力が。


「続けて。梅屋唯葉・工藤茂春・水橋明日香へ、権限『管理者』を付与。全権限を固定化する――」


 手にした権限を、三人にも渡して――『固定化』。これで相手に権限を剥奪される事もないだろう。


 自分が何をしているのか、今になってよく分からなくなってくる。こうして即座に対応できたのも、体が勝手に反応した……というのが近い気がする。


『そちらの世界では『神殺しの加護』と呼ばれているものですね。しかし、権限を手に入れたからといっても結局はその使い方。この世界が生まれる前から管理者としての責務を全うし続けた私を上回る事が出来るとは思えませんが』


 冷酷に、世界の管理者はそう言い捨てる。


「どうだかな。こっちは本気で世界を守ろうとしてるんだ。そんな小難しい話、よくわからねえけどよ、俺たちはこの世界を守り切るぞ。絶対に」


 工藤の言う通り。いくら長く管理を続けているといったところで、結局は機械的に、世界のイレギュラーを取り除いてリスクを排除してきただけなのだろう。そんな相手に負ける訳にはいかない。


 管理者と神殺し。ついに対等の立場へと立った今。世界の命運を賭けた最後の戦いが始まる。

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