143.Wave2:敵、同時に現れ
あの街中での戦いから二週間。未だ、テレビのニュース番組や、ワイドショーなんかはその話題で持ちきりだ。
過去、最大規模の爆破テロ……という事にはなっているが、ケガ人は多数にしろ、未だ死者はゼロという不可解な事件として、日々、様々な仮説が飛び交ったりしている。
幸い、俺たちや異世界、カミサマの存在は見つかっていない。あれだけの戦い、それによる爆発で砂煙もひどく、あそこで戦っていた姿も、走り、死者を助ける雫川の存在も、上空を飛ぶヘリコプターでさえ捉えられていなかった。
しかし、同時期に。魔法のような、不思議な力が使えるようになった人が現れるというニュースもあったりした。それも、一人でなく続々と。
やはり、この世界と異世界の結合が進んでいる証拠だろう。
あれから二週間もカミサマの動きはなく、時々唯葉と共に異世界へと足を運び、日々『世界結合』の術式の調整を行うプレシャの様子を見に行ったり、いつも通りのバイト漬けな日々を過ごしたりしていた、そんなある日。
すっかり外も暗くなり、夕食を食べ終えた頃。
――ウィンウィンウィンウィン――ッ!!
再び、耳に刺さるような警報音が鳴り響く。プレシャの作った『カミサマアラート』の音だった。
「ついに二度目の戦いか……」
急ぎ、二人は戦闘準備を始める。装備を整え、二人は同時に――そのペンダントを強く握りしめる。
同時、――パッ! と、二人の姿は消え行き、カミサマの現れるその場所へと送られる。
***
「ここは確か……前にゴーレムと戦った場所だな」
俺は、周りを見回す。見覚えのある場所だった。そして、同時に移動した唯葉を探すが――どの方向を見ても、唯葉がいない。
「……唯葉?」
遅れて、――シュウッ! とそこへ現れたのは、
「おっ、先に来てたか。……あれ、妹さんは一緒じゃないのか?」
異世界での装備に身を包んだ、工藤茂春だった。
***
同時刻。ヒューディアルのとある場所にて。
「ここって……確か、クリディアの近くの草原だよね。ずっと遠くにクリディアが見えるけど……って、あれ? お兄ちゃん?」
唯葉は一人、周囲を見渡してみるが誰もいない。
はぐれてしまったのだろうか? 魔王、プレシャが作ったあのペンダントが不良品だったとは考えにくい。前回はちゃんと『カミサマ』の現れる場所へと飛ぶことができたのだから。
しばらくして、近くに――シュウッ! と、誰かが現れる。一瞬、兄かと思ったが……違った。
「……ふう。久しぶりね。……あれ、唯葉さんだけ?」




