142.現代に舞い降りし聖女
俺は、いつの間にか倒れていて……はっ! と目覚め、起き上がる。目の前には同い年くらいの、一人の女性がいた。
「……気が付いたようですね。梅屋さん」
「……ここは……。……って、雫川!?」
俺は、その女性と面識があった。かつて、敵対した第三次召喚勇者、その生き残りのうちの一人で、Sランクスキル『死者蘇生』を持つ者。
敵対したとは言っても、彼女と直接戦った訳ではない。ので、あの戦いのあとは異世界で話す機会もよくあった。こちらの世界に帰ってからは、会ったことはなかったが……。
周りを見ると、崩れた瓦礫やらで悲惨な光景になっている。確かあの時、『カミサマ』と戦って、倒したと思った直後に――まさか。
「まさか、俺は死んだ――のか?」
「いいえ、生きていましたよ。他の人々はみんな息を引き取ってしまっていますけれど、そのために私がいるんです。……一体、何があったんですか? 異世界が関係しているのは間違いないんでしょうけど……」
「その通りだ。……詳しいことは後でゆっくり話す。それより、唯葉と工藤、水橋を見なかったか? さっきまで一緒に戦ってたんだ」
「残念ながら、まだ。でも、私に戻ったこの力……きっと、この時のためにあったのでしょう。何人たりとも、死にはさせません。必ず助けることができますから、安心してください」
「そうか。雫川もまた、スキルが……。それも含めて、後から話す。……こうなったのも、俺の責任だ。俺も手伝うよ」
***
想像以上にキツい。……血を流しているのは当然で、思いっきり身体が瓦礫に押し潰されてしまっている者さえいる。
これでも、雫川実里のスキル『死者蘇生』は発動するという。
あのスキルを手にしたばかりに、こんな光景を、ずっと見てきたというのだろうか。
「見る限り、これで全員でしょうか。それにしても皆さん、あれほどの爆発の中よく無事でしたね……」
「うん、何とか……ね」
「私はこんな所で死ぬつもりはないし、ね」
「伊達に異世界で戦って来てないしな」
俺と唯葉、工藤は、その高いレベルやステータスによって助かった、といったところだろう。三人とも怪我はしているものの、歩くくらいはできる。
ステータスがそれほど高くない水橋は、咄嗟に鉄の壁を生み出して自身を覆い、爆発の直撃を逃れたという。
再び異世界へ行き、『世界の結合』に関わる俺たち四人と、同じ異世界へと召喚された雫川実里が集まった。
「さて、何から話そうか……」
やるべき事を終え、再び異世界へと行ったこと、異世界が滅びそうなこと、世界の結合のこと、カミサマのこと、ここで起こったこと、知っている全てを話す。
***
「そんな事が……。夢、確かに見ましたが、まさか本当だったとは。もちろん、私もできる限りお手伝いします。
皆さんみたいに戦うことはできませんが、今回のように私の力で助けられるなら。いつでも力になります」
かつて、異世界での戦いをも治めた『聖女』が、再びこの世界に舞い降りる。




