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127.研究者としての魔王

 魔族の住まう大陸――グランスレイフにもたらされた『知性の原石』は、ヒューディアルと同じようにグランスレイフ最高峰の山へと捧げられた。


 それから少しずつではあるものの、魔物たちも『知性』を獲得する種族が増えてきた。……それは『革命』と呼ばれている。


 知性を手に入れた種族間の争いだったり、小さな問題はまだまだ山積みではあるが……そんな革命の後、魔王であるプレシャ・マーデンクロイツは、『ある魔法』の研究に没頭していた。


 そして、それが今――完成を迎えようとしていた。


「我の魔力を以ってしても、一度きり……それも、数十分持てば良い方という、実用性は皆無な魔法ではあるが……彼の要件は満たしている。内容は内容だから仕方ないとは思うが……我ながら、時間を掛けすぎたな」


『革命』が起こってから、ある男――今もグランスレイフにて冒険者として活躍している、梅屋正紀という男に頼まれ、ずっと研究を続けていたこの魔法。それがついに、完成した所だった。


 頼まれたというのが一番大きいが、彼女自身、未開拓であり、興味のある分野の魔法であったので、この三年近くの間は有意義に、退屈せずに過ごす事ができた。


「……しかし、人間も中々侮れないな。まさか、必要になる莫大な魔力を複数人の人間で分担し、補うとは……まあ、その機構の実現には至らなかった訳だが、実に人間らしい業だ」


 この魔法の研究にあたって、人類が持っていた、古くから受け継がれるある魔法の魔導書を借りていた。流石の魔王でも、全くのゼロから研究を始めるとなると、さらに途方もない時間が掛かっていたことだろう。


 色々と勉強になる事も多く、この世界にはまだまだ彼女の知らないことが多くあるんだと、そう痛感させられた。同時にわくわくとしている自分がいるのも面白い。


「……とにかく、召喚勇者たちに伝えねばならんな」


 そう呟くと、彼女のデスクに置いてあった携帯端末を手に取り、慣れた手つきでスパパパパパッ! と文字を入力していく。


 ……今や、ケータイで遠く離れたヒューディアルとグランスレイフが繋がる時代。まだまだそれ自体の普及率はイマイチではあるが、それでもたった三年でよくここまで進歩したものだと思う。



『件名:召喚勇者諸君へ


 異世界からやって来たお前達にとって、とても重大で、有益な話がある。

 一週間後の正午、マーデンディアの魔王城で待っているッ!

 ※食事は出るので、お腹を空かせて来る事。


 プレシャ・マーデンクロイツ』



 そう書かれたメールが、召喚勇者たちに向け、電波に乗せて一斉に送信される。

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