121.三年後の世界
人間と魔族で条約が結ばれてから三年の月日が流れた。
あの瞬間を境に、世界は大きく変わった。
それは人間も、魔族も。それぞれが持ち得なかった『何か』を分け合ったことから始まり――
……人間は『技術』を手に入れ、
……魔族は『知性』を手に入れた。
たかだか三年、長い時の中のほんの一部分に過ぎない僅かな時間で出来ることなど、少ないかもしれない。
しかし、確かにこの三年で、確実に前進し、発展した。それぞれの種族が、更なる高みへと登っていく。
人間は『魔石』という、新たなるエネルギーを手に入れた。今までは実現不可能とされていた、魔力を用いた機械の作製だったり、今の魔族が持つ技術の集大成――マーデンディアには遠く及ばないものの、魔族の力も得た彼らは少しずつ、今日も発展していく。
第三次召喚勇者の事件による爪痕も、日に日に消えていく。新たに刻まれるその歴史が、爪痕を塗りつぶしていくように。
ドルニア王国に都市クリディア。その他小さな村や街も、あの頃の活気を取り戻し、以前の平穏が戻ってきた。
そして魔族の大陸――グランスレイフにも、大きな変化が起きていた。
『知性の原石』を手に入れたグランスレイフの魔物たちは――少しずつ。知性を手に入れ、群れや街を形成するようになった。
以前は人を襲うだけだった魔物が、集落や村、街といった一つの集団を形成するようになったのだ。
魔王・プレシャの思惑通り。このままいけば、魔族もさらに大きな種族となり、さらなる発展を見せるだろう。
これは、二つの種族が互いに手を取り合い、三年の月日が流れた世界の物語――。




