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118.解かれた呪い

 夜のヒューディアル大陸に、ある()()が起こっていた。それは――


「まさか、本当に魔物が居ないなんてな……。夜に外を歩くなんて初めてだぞ……」


「なんか新鮮だなあ……」


 夜遅くに街の外を歩く二人の男。彼らは決して、夜の魔物に対抗できるような力も、何も持っちゃいない。それでも、強力な魔物で溢れかえるはずの夜を歩けているのには理由がある。


 ……()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()


 人間は、かつてこの大陸にかけられた呪いによって、夜は街を出られない生活を余儀なくされていた。ずっと前の、記録にすらあまり残されていないような時代からずっと続いてきた事であり、人間はその事を疑問に思うことさえしなかった。


 しかし、ある時突然。そんな呪いが解かれたのだ。夜は街の中で大人しくしているという常識が、崩されたのだ。


 彼らもまた、興味本位で。夜に外へとやってきたのだった。


「……しっかし、何というか……想像以上に、何もないよなー」


「そうだなあ。……帰ろうか?」


 街の灯りや障害物がなくて、星がとても綺麗に見える事以外は特にこれといった何かはなかった。


 未知の何かやら、そんなワクワクを抱いて外へと飛び出してきた彼らは、期待を裏切られたような気分だ。


 そんな二人は、連日復興作業が続くクリディアのキャンプ地へと戻ろうとした、その時。


『グガアアアアァァァッ!!』


 叫び声のような音が、暗い草原へと響き渡る。


「うわああぁぁぁぁっ!?」


「まさか……魔物なんかじゃ、ないよな……?」


「怖いこと言うな! もし本当にそうだったらどうするんだ……!」


 そんな二人の悪い予感に答え合わせをするかのように。二人の目の前に現れたのは、屈強な体を持つ『ゴブリン』だった。


「ほら言った! 本当に魔物じゃないか……どうするんだ!?」


「……とにかく、逃げよう」


 そう言い、二人はとにかく走り、逃げ出そうとするが――それが逆効果だった。背を向ける二人を見たゴブリンは、そんな二人を追いかけようとする。



 ――その瞬間。



 ……グシャリッ!! という音と共に、空から何かが高速で降り立ち、ゴブリンの身体がその勢いで潰される。


 元々ゴブリンが立っていたそこに降り立ったのは――一人の男。Sランクスキル『超速飛行』を持つ者。


 そんな彼は、落ち着いた様子で二人の男に向けて声をかける。


「……キャンプ地を出て行ったのを見て一応ついて行ってみたが……どうやら正解だったようだな……。怪我はねえか?」


「あ、あなたは……!」


 堂々とした立ち姿に、紅くなったその眼。――魔人と化し、絶大な力をもって第三次召喚勇者と戦った、同じく勇者であった――工藤茂春。


 そんな彼は、驚く声も気にせずに続けて。


「確かに呪いは解かれたと言ったが……まだ完全に呪いの影響が無くなった訳じゃない。今のように魔物に出会う確率だってゼロじゃねえんだ」


 魔王・プレシャによる呪いは解かれた。それでも、五百年と続いたその呪いによる影響が、たった一晩で治まるほど都合の良い代物ではないのだ。


「すまなかった……本当に助かった。ありがとう」


「ああ。まあとりあえず……掴まっててくれるか?」


 ……?? と、二人の男は首を傾げながらも、言われた通りに腕を両手で掴む。――その直後。


 ――ビュウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!


「「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!??」」


 その瞬間、視界が目まぐるしく動き、思わず二人は悲鳴をあげる。……それが、空を飛んでいるんだという実感が湧く余裕さえもなかった。

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