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109.ステータスを失って

「アハ、アハハ、アハハハハハハッ! 死ね! 死ねぇぇッ!!」


 彼女は笑いながら、俺を殴りつける。俺は抵抗しようとするが――ステータスが『1』にされた俺は、避ける事も受け止める事も、何も出来ずにただ一方的に殴られ続ける。


「があっ、ごぼッ!?」


 俺は、そのまま地面へと倒れ、赤色の塊を吐きだす。ステータスで殴る。……かつて、俺がやっていた事だったが――俺だって、最初からこんなに高いステータスを持っていた訳ではない。


 レベルを上げ、様々な戦いを経て。ここまでたどり着いたのだ。


(……思い出せ。俺が今のようなステータスを持たなかった頃、どう戦っていた?)


 ――そうだ。俺はステータスなんかが無くても。直接、この剣で。正面から戦っていた。


 俺は再び立ち上がると、剣を構え直して――ピンクのショートヘアを揺らす彼女の元へと走る。


 そして、剣を振るう! ……しかし、その攻撃から『速さ』も『力強さ』も、何もかもが失われている。そんな攻撃は簡単に避けられて――グシャッ!!


 俺の体にさらに一発、拳が叩き込まれる。俺はそのまま飛ばされ――バタンッ! と、地面を転がり倒れる。


 ……無理だ。確かに俺はステータスが低い頃もあったが――それでも、『1』ではなかった。こんな最低のステータスで、どう戦えというのか。


「……待てよ」


 俺は、ふと疑問に思う。――何故、全てのステータスが最低の状態なのに、俺は彼女の攻撃を何度と受けても尚、生きているのか?


 そして、俺は一つの可能性にたどり着く。


 ステータスを確認する石版には、あまり気にしていなかったが……自身の体力も表示されていたはず。


 もし、体力が0になると死に、そして体力がステータスとして認識されているとしたら――


「そうだ。お前はいくら俺を殴った所で殺せない。トドメを刺せない」


 それを聞いた彼女は、何を言っているのか分からないような顔で、


「ハア? 何を言っているのかしら? 殺せないですって? それは一方的に殴られながら言うセリフかしらぁ?」


「……まだ気づいてないんだな」


 俺は、一拍置いて、口を開く。


「お前は、全てのステータスを『1』に固定したんだ。同時に、俺の体力まで『1』に固定してしまった! ……つまり、そのルールを解除しない限り、俺の体力は『1』から増えることも減ることもないんだ」


「――ッ!? そんなバカなッ!?」


 彼女は、しまった……という顔で、さっきまでの余裕をすっかり無くしてしまう。


「でも、すぐに違うルールを定義すれば――」


「――それを俺が待つと思うのか」


 彼を縛り付けるそのルールが解除されれば、すぐに動くだろう。文字通り『一瞬』で。


 彼女は覚悟を決め――言葉を紡ぐ。


「――『法則定義』……力の概念をぎ――」


 その瞬間。俺は力を取り戻す。地面を蹴り、真っ直ぐに彼女の元へと向かう。後は簡単。スキルの発動に集中する彼女を、次こそは確実に切り刻むだけ。


「――はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


 俺は、全力で剣を振るう。――ブシャアアァァッ!! 真っ二つに切られた彼女の傷口から、真っ赤な鮮血が噴き出す。そして、彼女は法則を定義する前にバタリと……その場で倒れる。


「はあ……はあ……、何とか勝てた……か」


 体力を『1』に固定され、彼も限界を迎えていた。念のために持っていた漢方薬を口に含み、一度戦場の中で座り込む。


 完全に動かなくなった彼女の遺体を、Sランクスキル『死者蘇生』から守り切る。……まだ戦いは終わった訳ではない。

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