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102.『衝撃操作』対『二人のS』

「はあああぁぁぁぁッ!! はあぁぁッ、はあああああぁぁぁぁぁッ!!」


 次々と衝撃波を放ち続ける、Sランクスキル『衝撃操作』を持つ、金髪のショートヘアで背の高い、さばさばとした雰囲気の女性――紗倉瑞紀。


 対する、明るい橙色の髪を伸ばした中学生の少女、七瀬裕美は、音速以上の速さで向かってくる衝撃波を全て避け続ける。


 まるでどこに放たれるのかが分かっているような。……いや、本当に分かっていて、その全てを避けているのだ。


 ――『未来予知』。その名の通り、十秒先までの未来が視える。


 但し、彼女はあくまで未来を見れるだけであり、特別な攻撃方法も、魔法なんかも何もない。


 なので、彼女は囮だ。



 ――バババババババババババババババババババババババババババッ!!


 凄まじい銃声の嵐が戦場に響く。


 それが放たれたのは、未来が視える少女のさらに後方。


 長い黒髪を伸ばした、綺麗な印象を受けるその女性。――『物質錬成』という、これもまたSランクのスキルを持つ彼女、水橋明日香が生み出したマシンガンから、大量の銃弾は放たれていた。


 弾も発射と同時に錬成しているので、リロードの必要がない。ただ撃ち続けていれば敵を殲滅できるはず。……しかし、彼女はそれを止めた。理由は単純。



 ……放たれた銃弾は、金髪の女性の体へと触れた途端、まるで硬めのスポンジにビー玉をぶつけた時のように跳ね返し、身体を貫く事もなく地面へと落ちていく。


「やはり、効かないみたいね……」


 作戦会議の時から分かっていたことではあるが、やはり銃弾は通らない。


「いくら撃っても効かないよ。メンドくさいから、早々に諦めてくれると嬉しいんだけど、そういう訳にもいかないよねえ……」


 それが分かった彼女は、手に持つマシンガンを捨てて、次なる武器を生み出す。――それは、一本の瓶だった。


「七瀬さん、一回離れてッ!」


「分かったよ、水橋さんっ」


 未来予知を駆使して避け続け、囮となっていた七瀬は一度後ろへと下がる。


 そこで、水橋は右手に持つ瓶を金髪の女性の元へと放り投げた。


 その瓶に嫌な物を感じた、衝撃波を放ち続ける彼女は一度攻撃の手を止め、地面へと衝撃波を放ち飛び上がり、飛んでくる瓶から逃れようとする。


 その瞬間、その瓶は地面へと叩きつけられ――ゴオオォォォッ!! と、瓶の周囲は炎によって焼き尽くされる。


 ――火炎瓶。ありとあらゆる衝撃を吸収できる彼女に、銃弾は効かない。しかし、炎による熱は衝撃ではないので通るはず。


 現に、彼女は炎を避けるように、再び地面へ降り立った。


「……なるほどね。メンドくさいなんて思っていたけど、なかなかやるじゃん。ちょっと楽しくなってきたよ」


 金髪の女性は、笑いを浮かべると――再び地面を抉る衝撃波を放ち、飛び上がる。彼女が向かった先は――囮となっていた七瀬の横を過ぎ、後ろで攻撃を行っていた水橋の元だった。



 背後から安全な位置で攻撃をする彼女なら、近づいて不意打ちを仕掛ければ一発で殺せる。


「――なんて思っていたのかしら」


 言いながら、水橋は長い黒髪をなびかせながら、護身用に生み出しておいた黒の長剣を取り出した。


 ――魔剣『レイフィロア』。


 レプリカではあるが、ミスリルで出来たその長剣は、並の剣とは比べ物にならない性能を持つ。


 そして、彼女自身も成長していた。あの時『レベル1』を卒業してから、護るべきものを見つけてから、彼女は自分を磨き、訓練を続けてきた。


「――護るべきものを見つけた私を、そんな浅はかな作戦で潰せるなんて思ったのかしら?」


 不意を突いて飛ばされたその衝撃波を、彼女はその右手の魔剣レイフィロアで薙ぎ払う。さらにもう一撃、その手の剣を振るう。


 衝撃を操る女性、紗倉瑞紀は剣に向けて、横からへし折るように衝撃波をもう一撃放つ。剣は――ガキインッ!! と甲高い音を立てて、先が折れるが……その剣を持つ彼女は、笑っていた。


 さらに、左手へ再び火炎瓶を錬成すると、それをそのまま金髪の女性へと投げつける。


「一度引くしかないか……」


 そう呟きながら、彼女は衝撃波を地面へと叩きつけ、反動で後ろへと飛んでいく。


 しかし、飛んだその先で待っていたのは――


 橙色の髪を伸ばした少女、七瀬裕美が、剣を持ち立っていた。そして彼女は笑みを浮かべながら。


「さっき、魔剣を体で受け止めなかったって事は……剣なら。斬撃なら効くんだよね?」


 落ちる場所を見て、待ち構えていた彼女は言う。


「んな……!?」


 再び衝撃波を地面に向けて放つが、突然の出来事に微調整が間に合わない。そのまま予想外の方向へと飛んでいき、地面へと落ちるが……衝撃を吸収できる彼女には関係ない。


「危なかった。流石に一筋縄じゃいかないよねえ……。見破られたならいいよ。『衝撃操作』じゃ剣は防げないし、炎だって防げない。……まあ、近づかせないんだけどさ」


 距離を取り、再び有利な位置へと戻った彼女は、不敵な笑みを浮かべながら、冷静に言い放つ。

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