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101/151

101.一と全て

 たった一つの分野でも、確かに『魔王』を超えた事。それは尊敬に値するかもしれないし、十分な武器となる。


 ――ただし、他の分野で言えば、ほぼ全てと言っても過言ではないほどに、魔王であるプレシャが上回っているだろう。


 これは、たった一本の剣を携えて戦う剣士と、斧も槌も槍も、弓も銃も大砲も、剣以外の全ての武器を持つ人間。どちらが有利か? という話である。


 剣は、他の武器よりも扱いやすく致命傷を与えやすいという利点がある。しかし、相手がそれ以外の全ての武器を使えるならば、そんな些細な利点は最早意味を失ってしまう。


 つまり、プレシャは。



『――「インフェルノ・ストーム」』


 プレシャは静かに唱えると、空から火の雨が降りそそぐ。その雨は、重力を支配する彼へと向けて一点に向かっていく。


 その雨を一身に受けて尚、彼は立ち続ける。


 重力により半数は叩き落としたと言っても、全てを落とせた訳ではないだろう。焦げた服がそれを物語っている。


『――「グラウンド・アッパー」』


 静かに唱えると、彼の立つ地面がメキメキメキィッ!! と、隆起する。磐石な足場を失った彼は、そのままバランスを崩し落ちていく。


 幸い、重力を支配する彼は、ふわりと地面へと着地する事は容易。――しかし、その先に。


『――「サンダー・ブレイク」』


 ふわりと着地しようとする彼に向けて、雷の極太ビームが放たれた。


 彼の体中心をしっかりと狙ったそのビームは、今から反重力で逸らしても間に合わない。つまり、叩き落とすしか選択肢がない。……しかし、彼も宙に浮いたまま。この状態で重力を重くすればどうなるかは言うまでもない。


 一つ言えるのは、あのビームをもろに喰らうよりは骨折覚悟で地面へと落ちたほうがマシだろうという事。彼は、迷わず重力を下へと強くする。


 ――ズガガガガガガガガッ!!


 ビームは、地面を抉りとる。そして彼も地面へと叩きつけられて、足にズキイイィィッ! という激しい痛みが走った。


 しかし、こんな一撃を直接受けるよりはマシなはず。硬い地面でさえ、容易く削り取ってしまうほどの火力なのだから。


 そんな彼に、プレシャは休む暇も与えない。


『――「ダーク・ブラインド」』


 プレシャが次に唱えたのは、闇属性の魔法。魔法の効果自体は当然、重力の影響を受けない。重力のバリアを貫通して彼に魔法を掛けると――その瞬間。彼の()()()()()()()


 彼は、何も見えない暗闇の中へと誘われる。……相手の視界を奪う闇属性の魔法だ。


 視界というのは、戦闘において重要な情報の一つ。それが失われた彼は、圧倒的不利へと立たされる。


「……テメェ、最初から手を抜いていたのかッ」


 対するプレシャは、つまらなさそうな声で返す。


『本気で相手をする理由が無い。……では、貴様は虫を殺すのに大層な伝説の剣でも用意するのか?』


 プレシャの問いに、彼は――


「舐めてもらっちゃァ困る。テメェには弱点があるだろ。……そのデカい体は、すぐに動かせねえよなァ。もし動いたとしても音で分かる。――見えなくても、テメェを殺すなんて事は造作もねえんだよッ!!」


 そう言い、彼はプレシャの元へと走る。重力によるバリアを纏いながら。ここは草原で、互いを阻む物はない。


 そんな彼に向けて、プレシャは――


『――「ロスト・サウンド」』


 その魔法を唱えると、彼は――聴力を失った。


 光と音を失った彼は、道標をも失う。どのタイミングで、どんな攻撃が来るのか。


 相手がどこに居て、どう動いたのか。


 戦いの土俵へと立つための最低限度の情報すらも無くした彼は――いつ来るか分からない攻撃という恐怖に、心が押し潰されそうになる。


 どれほど時間が経った? 今、自分がどこにいるのか?


 もう、さっきまでの軽口を叩く余裕すらも失ってしまった。


 ――次の瞬間。 機械の電源が消えるかのように、プツリ――と意識は途切れていき

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