陽真―特異点―千里 Part2
久し振りの投稿
僕と千里は互いの身体を交えた。
彼女の吐息と雨の音、僕は行為の間目を閉じて聞こえてくる音に集中していた。
千里が僕の胸の上で閉じることのない曲線を描いている。
「私は常に何かに追われているの」
彼女が口を開く。
「小さい頃からずっとそうなの。親が教育熱心で勉強、勉強って急き立てたれて、優秀な成績を取ることが当然だった。今の大学に入ったのもその延長よね。そして、就職活動、今は卒論って所かな。」
僕は天井を見上げたまま答えた。
「そういうのは大なり小なり誰にでもあるんじゃないかな」
僕は何かと一般論に持っていきがちだ。言葉を口にした後でその選択が間違いだと気付いた。
千里が僕の胸の上に乗りかかり、うつ伏せになった。その鋭い眼差しが僕の瞳に刺さる。そして、彼女の豊かな乳房が暴力的な重圧と共に押し付けられた。僕のモノがゆっくりと頭を上げた。
「そういう事じゃないの」
彼女は語気を強めて言った。
「それはこれからも続く。私には判るの。"何か"がずっと私の後を追ってきている。それは速くはないけど、止まることなく確実に進んでいる。そして…」
彼女の言葉が急に弱々しくなった。
「どうしたんだい?」
僕は落ち着いたトーンで続きを促す。
「そして、"何か"が私に追い付いたら、終わりなの」
彼女はそう言うと、黙ってしまった。
僕らの周りに重い沈黙が降ってきた。
それを振り払おうとして僕は言葉を吐き出した。
「だから君は遠くの土地に行ってしまうのかい?」
その言葉はただ虚空に散ってしまった。
彼女は静かに目を閉じた。
僕も目を閉じる。そして唇を重ねる。
その口づけは少しだけ塩の味がした。彼女の頬から僕の頬へ涙が伝う。
そして僕らは再び交わった。身体も心も。
しかし、僕はそこに確かな違和感を感じ取っていた。
僕らの点は、線で結ばれていない。どの経路を辿ろうとしてもそこには特異点がある。
そこを越えることは出来ない。
千里は静かな寝息を立てて、僕の傍で眠っている。その華奢な手は僕の肩に置かれている。
僕は窓の外に視線を向ける。
雨粒が小さな音を立ててガラス窓を叩いている。
さっきよりは小降りになってきているみたいだ。
僕は一瞬、その視界の端にキラリと光る何かが入った様に見えた。
ナメクジ?僕は反射的にそう感じた。
そして、なぜ自分がそう思ったのか不思議に思った。
その何かがあったと思われる場所には、ただの空白のみが存在していた。
僕は再び天井に視線を戻した。
どうやらここ最近は訳の分からないものが僕の周りを漂ってる気がする。
そして、それが何か僕には理解出来ない。
急に眠気が僕を包み込んだ。
僕はそっと目を閉じ、そのまま眠りに身を委ねた。
「いいかい、これだけは覚えておくんだ。"追い付かれたら終わり"それがルールだ」
"それ"が僕を見ながら言った。




