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結成オカルト調査会

日曜日の依頼から2日後、影山は陽キャ友達の雨野と共に学食で昼食をとっていた。


「んで、今回ボロボロになって入院してたと」


「まあな」


後神撃破後、ボロボロになった影山と絹井は迷家入院。その間、九十九が依頼人に百目々鬼の撃破報告及び事後処理を全て行ってくれた。その点に関しては毎回影山にとってすごく助かっていた。


(ふだん働かない分、こういうとき働くんだよなぁ)


喫茶店の仕事は全くといってしない九十九であるが、依頼関連の仕事はえらく積極的である。


「にしてもここの竜田丼旨いよなあ。入学してからほとんどこればっかだよ」


「まあ確かに」


影山と雨野が注文したのは竜田丼。学食でナンバーワンの人気を誇っている。影山が竜田をひとつ箸でとり、かぶりつくと肉汁がたっぷり溢れ、ご飯と食べることで食欲がすすむ。

影山と雨野は竜田丼を食べ終え、食堂をでた。互いに次の講義まで1時間以上時間が空いているため2人は目的もなく歩き、大学内の空いてるテーブル席に座った。


「暇だなー、なんかやることないのか陸?」


「陰キャの俺に予定があるわけないだろ」


基本的に大学内での生活は単独行動が多い影山。今回たまたま雨野と出会っただけで、ご飯を食べたあとは大抵大学内の図書館でだらだらとスマホをちょしたり、本を読んだりしてるだけである。


「それより、お前サークルとか行かなくていいのか?そっちの方が暇潰しになるだろ」


「ああ、サークルなんてやめたよ」


「へー、って、ええ!?やめたの?」


あっさり言われたことで影山は驚いた。対して雨野は「別に驚くことじゃねえだろ」とへへっと笑った。


「なんでやめたの?」


「この前函館の旅行行ってきたじゃん?そのときにサークル内で揉め事あってさ」


「揉め事って?」


「まあ、いわゆる修羅場ってやつ?俺のことが好きだって告白してきた女の子がいてさ。ただ、部長の彼女でよ。俺は断ったんだけど、部長がその告白の現場を見ててさ」


影山は思わず「うわ…」と嫌な声が出る。その反応を見て雨野は笑った。


「そのあとは部長がぶちギレ。怒りの矛先がなぜか俺よ。人の女をどうたらこうたらキレてたよ。俺にとってはどうでもいいことをペチャクチャとさ」


「なんか大変だったな」


「まあな。そのおかげで人間関係ぐちゃぐちゃ。めんどくさいから俺はやめたってわけ」


「告白してきた女はサークルクラッシャーだな」


「マジそれな」


ハハハと影山と雨野は笑った。


「モテる男は辛いな」


「茶化すなよ。それに、彼女いるからモテる必要ないし」


「…ん?彼女いるって?」


「ああ」


「ええ!?初耳だぞ俺。いつの間に彼女出来てたんだよ!」


「最近だよ」


影山が驚いていると「おーい」と少し離れたところから手を振る日上と横に冬野と絹井が並んで3人近づいてきていた。


「おつ~。2人で何してんの?」


「だらだらしてんだよ。詩織は何やってんの?」


雨野が尋ねると日上は「うちらもだらだらー」と気軽に答えた。影山は冬野と日上と一緒にいる絹井を見た。


「惑火も一緒なんだな」


「まあね。雪と詩織に誘われて最近一緒にいるの」


と話す絹井はどこか嬉しそうに見えた。冬野が絹井の手を組み「私たち、仲良しだもんね!」と言って、逆の手を日上が組み「うちらの友情マジ永久不滅じゃん!」と言って二人に組まれた絹井は少し困った表情であった。冬野はともかく、日上ともすぐに仲良くなったんだなと影山は感心した。感心していると冬野が「えーとさ」と話し出す。


「2人とも今暇かな?詩織が2人と話したいことあるって言うんだけど…」


冬野がそう言って日上を見る。日上は何かを企むような含み笑いをしていた。


「実はわたし、サークルをつくったの!名付けてオカルト調査会!」


元気よく発表する日上。影山は「へー、サークルつくったんだ…」と特に何も考えず口に出す。その様子を見ながら冬野は「えっとね」と言って話し出す。


「それでね。そのサークルの部員がわたしたち3人と…雨野くんと影山くん」


「へー、そうなんだ…。ん?俺も?」


「うん…」


と気まずそうに冬野が説明し、勝手に部員となっている影山は呆気にとられて「なんで?」と返答。対して冬野は「これには色々事情がありまして…」と話し、間に入るように日上が「わたしが説明しよう!」と元気よく宣言した。


「わたしのチャンネルもねー。そろそろ単独での活動に限界がきたと思うんですよ」


「前から私なしでは限界だったと思うけど…」


「黙れ雪ー。てなわけでオカルト知識の豊富な影山くんとそのほかボディーガードが数人いたら、わたしの活動もより円滑になると思ってサークルをつくりました!」


「…なるほど、サークル誕生の経緯はわかった。で、なんで俺に相談なしで部員になってるのかな?」


「えー、だって暇でしょ?サークル5人いないとつくれないみたいだし、暇そうだしいっかなーと思って」


「まあ、暇といえば暇だが…」


否定はできなかった。大学の講義時間以外は基本影山は暇である。ぼっちを気にしつつ、図書館に行ったり、一人で札幌の町をぶらぶらするくらいである。


「別にサークル入るのは構わないよ俺は。どうせ暇してたしさ」


そう雨野は気さくに答えた。冬野と絹井も反対はなし。ごねてるのは影山1人だけだった。


「せめて面倒ごとにならないような企画をしてくれよ」


影山は先月の一人かくれんぼの件を思い出しながら言った。


「へいへいわかってますよー。さて諸君、早速部室に行ってみようと考えてるのだが、どう?」


「いいよ。陸もいいだろ?」


「ああ、そしたら行ってみるか」


影山たち5人は大学内の部室棟に入る。階段を上がり、日上が「ここだよ」と言って部屋の中に入った。


「へー、なかなか広いんだね」


冬野がそう言って、中に入った影山は周囲を見渡した。細長い室内、左側は全て本棚になっていて、右側には壁にホワイトボード。一番奥に窓とソファー、部屋の真ん中には会議用のテーブルと丸いすが4つ置かれていた。


「部室、初めて入ったかも」


絹井の独り言に対し、影山は「俺も」と言って各々好きなところに座っていく。影山はとりあえず丸いすに座り、一段落する。


「今のところ本棚には何もないし、部屋がまだオカルトっぽくないけど、それはおいおい皆が部屋をオカルトっぽくしてけばいいわけで…」


日上はホワイトボードの前に移動した。


「さて、早速我らサークルの最初の活動を発表するよ!」 


日上はマジックをとり、ホワイトボードに何かを書いていく。日上が書き終わると、室内にいる皆がホワイトボードに集中した。


「はえある第一段は、心霊スポット調査にしたいと思います!」


早速嫌な予感しかしないと、影山は思ったのだった。



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