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後神

後神。

鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』に描かれており、臆病者に取り憑く妖怪として解説されている。暗い夜道、後ろの髪がひかれるような恐怖を感じることがあれば、それは後神の仕業であると考えられる。つまり、後神は人の背中に感じる恐怖が妖怪化した存在である。


「幽術、切裂の大風」


影山が刀を振り上げ、風の刃を飛ばす、後神は怯むことなく正面からドスで受け止め、そして弾き飛ばした。


「いいねー、いいー威力ー!」


後神は影山に近づき、連続でドスを突く。影山は避けて反撃の刀を振るうが、ドスで受け止められる。


(当たり前だが、さっきの百目々鬼とはレベルが違うなこいつ…!)


パワー、スピード、反応速度。どれをとっても百目々鬼よりも上の実力であると影山は分析した。


「幽術、影風」


後神が刀を弾き、数歩下がってからドスから黒い風の刃を2つ放った。影山は二つの刃を避けて、再び幽術の切裂の大風を飛ばした。後神は大風を受け止め、弾き飛ばした。その隙に影山は再度後神に近づいた。追撃の一撃として影山は刀を横に一閃。後神はドスで受け止めようとしたが、影山は後神の動きを武妖具の力で数秒戻し、ドスを構える前の状態に戻した。無防備となった後神は腹を切られた。


「幽術、爆嵐!」


さらに影山は空気の爆発を後神の腹前で炸裂。後神は衝撃で大きく後ろに弾き飛ばされたが、さらに時間を炸裂させる前の時間に戻し、刀でさらに追撃の一撃を与えた。


「さっきからーやりづらいねーその力ー!」


苛立った声でドスを横に振る後神。影山は数歩下がり、ドスを避けた。


「わたしのー動きを戻しているということかねー。それがあなたの妖術ー?」


ヒヒヒと後神は笑う。影山はそれに答えることなく、刀を構えた。


「それならー、こっちも妖術解放だねー」


後神がそう言うと、影山が瞬きした瞬間、目の前から後神が消えていた。


(消えた!?どこだ…?)


そう考えた瞬間、後ろからゾッとする感覚を感じ、影山は直感で横に避けようとするが、判断が遅くドスが影山の脇腹を貫いた。


「まず一撃ー!」


貫かれた痛みを我慢し、影山はすぐに振り向き、刀を振るったが、後神はすでに後ろにはいなかった。


「幽術、影風槍!」


影山の背後から黒い風の槍が襲いかかる。影山は槍の時間を戻し、何とか槍を避けて振り返り、後神に切りかかり、刀とドスがガキン!とぶつかり合った。


「やるねー、わたしのー妖術にー対応できてきてるねー」


「お前は、俺の能力に対抗できてないようだがな!」


ドスを弾き、影山は後神を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた後神は再び背後に移動。影山の髪を思いきり引いて転ばした。床に倒れ、完全無防備な影山に対し、後神は影山の顔面を狙ってドスを突き刺そうと振り下ろした。影山はすぐに横に転がり、ドスを避けて、起き上がった。


「やっぱりー、あの時間を戻す力は何回も使えるー、ものじゃないんだねぇー」


(読まれてるか…)


影山の妖術は時間を操る便利な能力であるが、その分妖力の消費が激しい。今の影山の実力では4回が限度、故にすでに3回使った影山はあと1度しか妖術を使えない。


「まあでも、俺もお前の妖術は大体理解した」


「ふーん?」


「お前の妖術は単に背後に瞬間移動すること。それさえ理解すれば対策は簡単だ」


影山は壁際に移動し、背中を壁につけ、後神と対峙した。


「後ろがなければ移動できないはずだ。これなら正面から戦うことができる」


影山がそう言い、瞬きをすると後神は目の前から消えていた。そして、嫌な予感がしてすぐに避けようとするが、判断が遅く後ろからドスで胸を貫かれていた。影山は前に倒れて胸に刺さったドスを引き抜くようにその場に膝間付いた。


「いい感触ー、もしかして心臓に刺さったかなー?」


影山の刺し口から血がどくどく溢れる。後神は壁の中からスゥと透けるように現れた。


「後ろがないってことはあり得ないんだよー。壁の中であろうとー、後ろは後ろー。油断したねー」


「なるほど、百目々鬼がどうやってシャッターの閉まった店の中に移動していたか不思議に思ってたけど、その力のおかげか」


「ご明察ー、わたしのー妖術は自分自身だけでなくー対象を後ろに移動させることもできるのー。ただ、今の戦いではー、わたし自身を移動させてるだけだけどねー」


「そうか、それを聞けて安心した」


「…何?」


後神はふと妙に感じた。心臓を貫かれた者がこんなにペラペラと話していられるだろうかと。


「幽術、風縛!」


激しい風が吹き、後神は壁に張り付けにされた。


「くそ、動けない…!」


「ピンポイントで狙わないといけない技だから基本当たらないんだけど、油断してるあんたにはちょうどいい技だったな」


影山は振り返らず、その場で立ち上がった。そして、目の前の床に刀を突き刺し、両手を広げ、手のひらを張り付けにされている後神の方に向けた。


「幽術、嵐爆牙!」


風の塊をつくりだし、発射。影山はその威力に前に押され、塊は後神に直撃し、炸裂した。大きな衝撃と共に壁は崩れ、後神は瓦礫の下敷きとなった。影山は振り返り、瓦礫を見た。


「俺が得たかったのは確証だ。あんたが絶対に後ろにしか移動しないかっていう確証。じゃないと風縛を当てられなかったからな」


影山の胸に突き刺さった傷はなくなっていた。時を戻す力最後の1回は影山の胸を刺される前の時間に戻すのに使い、力を使い果たした。そのため、妖術をほとんど使い果たし、満身創痍であった。


「まあ、あんたも満身創痍だよな?」


瓦礫が崩れ、中から後神がふらふらとしながら現れた。服はボロボロで息を荒げていた。


「はぁ、はぁ、そうだねー、ここまでしんどいのはー、久しぶりだねぇー」


後神はドスを構える。影山も床に突き刺した刀を引き抜き、構えた。


「最後はお互い小細工なしの真っ向勝負といこうか!」


同時に、互いに動きだし刀とドスがぶつかり合う。弾いて影山は後神を切り裂き、対して後神も弾いて影山を切り裂く。互いにダメージ負いながらもどちらかが倒れるまで刀とドスをぶつけ合う。そして、影山がドスを弾き、横に一閃。その一撃で後神は力尽き、倒れた。


「あー、わたしの負けかー」


倒れた後神は徐々に消滅が始まり、足先から塵となって消え始めた。戦いの一部始終を見ていた絹井は影山のそばに駆け寄った。


「大丈夫?」


「ああ、なんとか。心臓やられたときはすごい痛かった」


4月のときの影山の実力であれば、自分の傷の時間戻しはできなかったが、さとるくんを倒し、レベルが上がったことで1度だけ自身の時間戻しを可能にすることができるようになった。


「後神。あんたは、骨女の手下なのか?」


「そうだよー。影山陸の実力試しにわたしが使われたのさー。それと、そこの君の実力も見るためにねー」


後神は絹井を見た。


「絹井惑火だねー?骨女さんを探してるんだろうー?」


「…まあね」


「さっきの百目々鬼との戦いを見てたけどー、その実力じゃあ難しいねえー」


「かもね。でも骨女はアタシがぶっ殺すって決めてるの。どんな手段を使おうとね」


「…ふーん。骨女さんからは影山陸の実力を見れとしか言われなかったけどー。案外、お前の執念を見れてーこれからどうなるのかー、楽しみになったよー」


「最後に教えろ。骨女はどこにいる?」


そう影山が尋ねると、後神はヒヒヒと笑った。


「探さなくてもすぐに会えるよー。わたしは先に地獄でお前らが来るのを楽しみにしてるよー」


後神は最後にそう言って消滅した。その場には影山と絹井だけが残り、影山は緊張がとけてその場に膝を着いた。


「ちょっと、ホントに大丈夫?」


絹井が手を貸し、影山は「ありがとう」と言って立ち上がった。


「とりあえず病院に行こう。惑火の怪我も治さないと」


「わかった。じゃあ外に出よう」


「いや、トイレに行こう」


「…漏れそうなの?」


「違うわ!いいから惑火も来てくれ」


移動中影山はトイレの花子さんの妖術で水吉の迷家の診療所に向かうことを説明した。そして、トイレに到着した2人は花子の力を使って、札幌地下街から離れた。

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