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面接

影山と絹井はガイストの店前まで来ていた。影山が先に入ると、客は0。客がいない中カウンターでぼぉーとテレビを見ている冬野だけがいた。


「いらっしゃいませ。って影山くんだ」


「お疲れさま冬野。店長は?」


「サボりだよ。上から降りてこない」


その口調から冬野の失望と怒りがじわじわと影山は感じた。開店から一人で働いてるんだろうなと雰囲気で伝わった。


「影山くん今日休みだよね?それと、後ろの人って…」


「えーと、バイトの面接できました絹井惑火です。今日はよろしくお願いします」


緊張しているのか絹井は先ほどの影山と話すトーンより少し静かに挨拶をした。すると、機嫌が悪そうだった冬野が明るい表情になった。


「あ、新しく入る子!女の子なんだ!よろしくね!」


冬野は嬉しそうに絹井に歩みより、絹井は「先輩よろしくお願いします」と緊張した声で答えた。


(同性の人と話すの緊張するのかな?)


と影山が分析し、冬野は影山そっちのけで「絹井さんって大学生?」「ゲーム好き?」と二人で仲良くおしゃべりを始めていた。初め絹井は冬野の明るさに戸惑っている様子が見られたが、少しずつ返事をしている。影山は二人が楽しそうに話してるので、放っておいて2階にあがり、九十九の部屋をノックした。


「店長、バイトの面接来てますよ」


と影山が声をかけるが中からは返事なし。影山は遠慮なく部屋に入ると、ソファーですやすや寝ている九十九を発見した。


(こいつ、冬野が働いてる間ずっと寝てやがったな…)


影山は静かに怒り、「起きろバカ店長!」と大声をあげると「うわ!なんだ!?」と九十九は飛び起きた。


「なんだよ、人が気持ちよく寝てるときによお」


「仕事中に寝てるんじゃねえよ。それと、新人の子来てますよ」


「ん、あー、そういや今日面接の日か…」


頭を掻きつつ、九十九はめんどくさそうに立ち上がった。そのまま下に行こうとする九十九に影山は「店長」と呼んで、九十九は振り返った。


「なんだ?」


「面接って、店長が今回スカウトしたんですよね?わざわざなんで面接するんですか?」


影山は絹井から面接と聞いていたときから不自然に思っていた。冬野のときには九十九からスカウトし、面接なしでそのまま採用という形式であったが、今回はそれとは違う。スカウトしたにも関わらず、わざわざ面接という形式をとっている。

影山が尋ねると、九十九は「あー、それはだなぁ」と考え込んだ。影山が答えを待っていると、「まあ、まずは下にいこうぜ。そのとき話すからよ」と話して部屋から九十九は出ていった。2人で下に降りると、冬野と絹井が仲良さそうにおしゃべりして待っていた。冬野が九十九の顔を見ると、「店長やっと降りてきた。1人で働かせてひどくないですか?」と不満げに話すが、当の本人は気にしていない様子で「あー、すまんすまん」と言って九十九は絹井を見た。


「改めまして、俺が店長の九十九だ。よろしくな。えーと、名前はたしか…」


「絹井惑火です」


「あー、そうそう惑火だ。じゃあ面接もどきをしたいんだけど、俺がスカウトしたとき言ってたこと覚えてるよね?」


「もちろんです。あなたはアタシにこのお店で働いて欲しいといった。正直働く気は全くなかったけど…」


絹井は少し言い淀む様子が見られ、影山と冬野が怪訝に思っていると、絹井はコーヒーを一口飲んだ。


「バイトとして働いてもらう代わりに、巡礼者の情報は提供するって言いましたよね。それって本当なの?」


巡礼者。そのワードを聞いた影山は驚きを隠せずにいた。冬野も影山ほどではないが、予想していないワードが出てきたため、息を飲んだ。シリアスな空間内で九十九は平然と「そうだよ」と言った。


「情報って何?そもそもどうしてアタシが巡礼者のことを知りたいと知ってるの?」


絹井は九十九のことを警戒していた。絹井から巡礼者について九十九に話したことがないにも関わらず、九十九は絹井が巡礼者のことを知りたいことを知っているからである。九十九はそんな警戒されているのを察していた。


「骨女。お前が求めているのはこの妖怪のことだろ?」


九十九がそう言うと、絹井は真剣な表情で頷いた。


「俺も巡礼者についての情報を集めてる。その過程で耳に入ったんだよ。巡礼者代行の骨女とある因縁のある妖怪についての噂をな」


「なるほど。それでアタシに接触したと」


「そういうこと。巡礼者探し仲間だ。協力した方がいいと思ってな」


影山が九十九と絹井が二人で話している様子を外野から見ていると、いつの間にかとなりに冬野が並んでいて、「ねえ、影山くん。骨女ってどんな妖怪?」と質問してきた。


「名前の通り、白骨化している女の妖怪だよ」


骨女。

鳥山石燕の今昔画図続百鬼にも描かれている女物の着物を着た骸骨の妖怪。骨女の伝承として、牡丹灯籠に登場するお露の話が有名である。


「牡丹灯籠って話の怪談で新三郎という男が出てくるんだけど、その男がお露という女性に出会ってだな…」


「その話やめて」


影山が骨女の伝承を話している途中に絹井は話を無理矢理中断させた。その声は少し機嫌が悪そうで、絹井の表情も怒っているような、間が悪そうな、良い表情ではなかった。そんな表情を見て影山は気分を損ねてしまったと思い、「ごめん」と謝り、冬野も続いて「ごめんね」と謝った。そんな二人を見て、絹井は目を丸くしていた。


「あ、ごめん。二人が悪いってわけじゃないから。気にしないで」


絹井は謝り、コーヒーを一口飲んだ。


「それで、情報っていうのは何?あなたは骨女の何を知ってるの?」


「骨女の居場所だ」


九十九がそういうと「どこにいるの?」と絹井は真剣な声で尋ねた。だが、九十九は「答えられない」とだけ返した。対して絹井は「なんで?」と機嫌悪そうに尋ねた。


「理由は二つ。具体的な場所がまだ特定できていないこと。そんでもう一つが陸に協力してほしいからだ」


「え、俺?」


突然の自分の名前が出されて影山は戸惑った。


「骨女は巡礼者代行だ。そこいらの妖怪とは違って強い。さらに巡礼者代行は一人だけじゃない。複数いる。倒すためには実力のある仲間が必要だ」


「それでアタシに協力してほしいと。他のやつらを倒すためにも」


「そういうこと。そのためにも協力者となりえる実力があるかどうかの確認も必要だ」


「それで面接ってことね」


「あとは単純に労働力不足でな。新しいアルバイトも欲しかったし」


「それは店長が働かないだけじゃあ…」


「うるさいぞ雪。給料下げるぞ」


「すいませんでした!!」


不満を言った冬野に対して九十九は脅しをかける。その様子を見て影山は傍若無人という言葉が頭によぎった。


「ということで、いつから仕事これる?」


「え、面接は?」


突然のシフト調整で絹井は戸惑い、九十九に尋ねた。その問いに対して「あー、カフェのバイトの方は合格だから」と返した。その問いに対して意味がわからず、答えを求めて絹井は影山と冬野を見た。


「ガイストは土日に幽霊とか、妖怪退治の仕事してるの」


と冬野が補足すると、九十九が「そういうこと」と話し、続けて話を続ける。


「惑火には日曜日に依頼を一つこなしてもらう。それが面接、というか試験だな。その仕事っぷりをみて協力者として頼めるかどうかを見極めさせてもらう」


「わかった」


「監督官として陸を同行させるから、よろしく」


「は!?俺!?」


突然の指名で影山は九十九の方を見た。日曜日には冬野と出掛ける予定があったので、影山的には監督官をするのは正直嫌だった。


「俺日曜日は出掛ける予定あるんですけど。ていうか、普通店長が監督官するでしょ」


「まあ、そうしたいとこだが、今の俺じゃ戦闘能力はないからな。冬野もまだ入ったばかりだし、戦闘慣れしてるお前が適任なんだよ」


「そうですけど…」


理屈は理解できた影山。しかし、冬野とせっかく出掛けられるチャンスを逃したくなく、監督官請け負うか渋っていると「仕方ないよ影山くん」と冬野は影山に向かって言った。


「遊ぶのはいつでもできるし、今度にしよ」


冬野は影山に気を遣ってそう言った。その表情は少し寂しそうで、冬野自身も遊びにいけず残念と思っていた。


「あ?なんだお前らデートの予定でもあったのか?」


「デートじゃないです!ただ、影山くんと遊ぶ予定あっただけです!」


九十九に言われて顔を赤くして冬野は全力否定した。影山自身はデートだと思っていたので、否定されて影山は人知れず少し落ち込んだ。


「とりあえず惑火の実力を判断するのはお前に任せるぞ陸」


「よろしくね。陸」


一任され、絹井からもよろしくと言われる影山。「わかりました」と観念して監督官を了承した。ガックリしている影山を横目に冬野は「ねえ、店長」と九十九に声をかけた。


「私も依頼行ってもいいですか?影山くんだけだと心配だし」


「ダメだ。雪が手伝ったら試験の意味ないだろ」


「そっか…そしたら、頑張ってね。影山くん。絹井さん」


「惑火でいいよ。それじゃ、アタシは帰ります。次来るのは日曜日からでいいですか?」


「できれば明日の店のバイトもしてほしいなぁ。無理?」


「1時からでよければ」


「いいね。じゃあ、その時間に来てくれ」


「わかりました」


コーヒーを飲み終えた絹井は立ち上がり、店を出ていった。絹井が店から出ていくところを影山はぼぉーとして見ていた。


(絹井惑火か…。これからどうなるのかな…)


陰キャの影山にとって、新しい人間関係の構築はとても不安であり、これから上手くやっていけるか複雑な心境であった。



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