九十九と二人の客
「ふぅ、やっと終わったー」
ガイストで珍しく九十九が店番をしていた。影山と冬野がマヨイガの診療所で入院中なため、九十九は一人で喫茶店の仕事をしていた。
「なんであいつらいないときに限ってめちゃくちゃ客が来るんだよ。あー、マジでついてねーな俺」
「あなたの日頃の行いが悪いんでしょ」
そう言って九十九は声のした方向を見る。そこには花子がコーヒーを飲んでのんびりしていた。
「お客様。いつまでこの店にいやがるおつもりですか?」
「言葉が丁寧に見せかけて雑なんですけど、接客の勉強やり直してきたらどうかしら?」
「うるせえ。俺に逆らうやつは客じゃねえ」
「はぁ、そんな態度だからこの店繁盛しないんじゃないの?」
「は、繁盛しなくても俺の人望で常連がいるから大丈夫なんだよ」
「その常連も陸が丁寧な言葉がけで頑張ったおかげなんだけどね」
「…帰す言葉もねえなぁ」
苦笑いをしながら九十九は自分でコーヒーをつくり、花子のとなりに座ってコーヒーを飲み始めた。その姿を見て花子は「客がいるのに、どうどうとサボるのね」と嫌みを言うが、「別にお前客じゃねえし」と言い返す。すると、「じゃあワシはどうなんじゃ?」と店内から声がする。九十九と花子が声のした方向を見ると、そこには小柄の老人がテーブル席に座っていた。
「ぬらりひょん、久しぶりね」
「おお、花子。相変わらず可愛らしいな」
「ここは、妖怪どもが集まる店じゃないんだけどな」
「九十九、ワシにコーヒーを一杯」
「コーヒーって、金あって言ってるのかじじい?」
「もちろん、ほれ」
ぬらりひょんは懐から千円札を出す。九十九はしぶしぶ受け取ってぬらりひょんにコーヒーを一杯差し出した。
「あ、九十九、アタシにクッキー一つ」
「はいはい」
九十九は注文を受けたクッキーを花子に出す。花子はクッキーを食べて「うん、美味しいわね」と満足そうに話した。
「それで、お前ら俺の店に何しにきたわけ?」
「何って、コーヒーを飲みにきたに決まってるじゃない」
「んなわけないだろ。お前らみたいなただの妖怪じゃないやつらがコーヒーだけの目的でこんなところこないだろ」
「まあ、その通りだな」
ぬらりひょんがコーヒーを飲みながらそう返事をする。
「ワシはお前さんの最近の様子を知りたくてここに来たんじゃよ。花子もそうだろう?」
「まあね。陸が来てから、本格的に妖怪絡みの依頼を受けられるようになったし、あれは見つかったのかと思ってね」
花子とぬらりひょんに尋ねられて、九十九ははぁ、とため息をついた。
「残念だが、武妖具絡みの依頼はまだない。俺らの目的の武妖具集めも全然だよ」
「そう。仕方がないわね。そう簡単に集まるものでもないし、それにほとんどはおそらく保有者がいるだろうしね」
「まあでも、近いうちに一つ手に入るかもしれないな」
「それは巡礼者の件のことか?」
ぬらりひょんが尋ねると、九十九は「そうだ」と言って頷いた。
「巡礼者は間違いなく武妖具を持ってる。だったら陸にそいつを殺してもらえば武妖具は手に入る。だから、巡礼者を殺すためにも陸のやつにはもっと強くなってもらわないとな」
「そうね。今回のさとるくんの件で強くなったし、これからもどんどん戦わせて行けば巡礼者殺しは達成できるかもね」
「ワシたちは今直接手出しできる立場ではない。だからワシたちで導く。よろしく頼むぞ九十九」
「ああ。わかってる。俺らの目的のためにな」
それから、しばらく三人は無言でコーヒーを飲む。そして、先にコーヒーを飲み終わった花子は立ち上がった。
「さて、アタシはコーヒー飲み終わったし帰るわね。それじゃ」
花子は金を置いて、トイレに入っていった。ぬらりひょんも「それではワシも」と言って、その場から消えていなくなった。九十九は二人のコーヒーのカップを下げて洗い物をする。
「はぁ、めんどくせえ」
九十九は店内で一人、呟いた。
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