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格の違い

影山とさとるくんが戦っている一方、さとるくんから逃れた冬野は大貴と共に廊下を走っていた。階段をかけ上り、花子がいるトイレを目指す。


「大貴くん、あともう少しだから頑張ってね!」


「は、はい!」


大貴は息が上がりながら、精一杯返事をする。ずっと走っていたため、小さい子どもには体力的にきつい。それを承知の上で冬野は無理矢理大貴の手を引いて急いだ。トイレまで数メートル。冬野が安堵した次の瞬間。天井が崩れて瓦礫でトイレまでの道が塞がれて閉まった。


「こんな瓦礫!」


冬野は瓦礫の山を吹っ飛ばそうと幽術を発動させようとすると、後ろから「無駄だよ」と声をかけられた。後ろを振り向くとそこにはさとるくんがいた。


「なんで…?影山くんは…!」


「下で戦っているよ。もう一人の僕とね」


「もう一人の僕?」


冬野は大貴を自分の後ろにいかせ、さとるくんと対峙する。その様子を見ながら、さとるくんは余裕そうに笑う。


「僕の妖術だよ。僕は自分の分身をつくりだすことができる。しかも、本体と同じくらい強い分身をね」


「そんな、せっかく影山くんが私たちを逃がしたのにそれじゃあ…」


「無駄だったってことだね」


冬野は背後を確認する。瓦礫で塞がれ、逃げ道はない。闘うしかないと判断した。


「幽術、流連氷柱!」


冬野は十本の水の槍を空中に形成、さらに、氷結させ氷の槍をつくりだす。そして、一斉に放出。


「幽術、雷の縄跳び遊び」


さとるくんの右手に雷の縄跳びが形成される。それを鞭のようにふり回し、すべての氷の槍を砕いた。


「さて、君はどこまで僕と遊べるのかな!」


さとるくんは雷の縄跳びを操って、冬野を攻撃する。冬野は必死に避け、幽術、流破衝を放つ。さとるくんに直撃し、さとるくんの胴体と足元を凍結させた。


「おお、体が凍った!」


体が凍り、身動きが取れないさとるくんを見てチャンスと考えた冬野は幽術、双水槍を発動。水の槍を両手に形成、凍結させ氷の槍をつくりだす。冬野は容赦なく、さとるくんの首を切り飛ばそうと槍を振るった。しかし、さとるくんの首が硬く、切れなかった。


「やれなくて残念だね。そしたら、今度は僕の番だね」


さとるくんは自力で氷を砕いて動き出す。冬野の腹に拳を叩き込み、ぶっ飛ばした。冬野は瓦礫の山に衝突し、突き抜けて、壁に貼り付けになった。壁から剥がれ、冬野は床に倒れ咳き込み、吐血した。


「はぁ、はぁ、なんて威力…!」


瓦礫の先を見ると、そこには大貴を人質に取ったさとるくんがいた。


「さて、君が非力なせいでこの子は僕の人質となった。君はどうするのかな?」


最悪な状況。下手に行動すれば大貴が殺されるのは目に見えていた。どうやって切り抜けようか考える冬野を見ながら、さとるくんは楽しそうに笑っている。


「君のでかた次第では解放してあげてもいいよ」


「…どうすればいいの?」


「この子の代わりに君が死んでくれればいい」


「それは無理だね」


冬野ははっきり断る。その台詞を聞いてさとるくんは嘲笑した。


「そうだよね。無理だよね。そりゃあ自分の命の方が大切に決まってる!誰だってそう言うよ!」


「何か勘違いしてるみたいだね」


「あ?」


「人質にとるようなやつが、私の命を差し出したところでその子を解放するわけがない。それに、私が死んだら大貴くんを助けることができないし、影山くんも助けることができない。だから、死ぬことはできない」


冬野は再び氷の槍をつくりだす。そして、構えた。その態度に嘲笑していたさとるくんだったが、その表情はなくなり、無表情になった。


「命乞いもなければ、犠牲になろうという態度も見られない。ホントつまらないね」


「あなたがどう思うかは関係ない。あなたを倒して、大貴くんをつれてここからでる!」


冬野はどうやって大貴を助けようか考えていると、突然さとるくんは「もうどうでもいいや」と言って大貴を突き放し、幽術で雷の剣をつくりだした。


「命乞いをするところが見たかったけど、そんな感じもないし、つまらないからさっさと死ねよ」


「あなたを倒すために死ぬわけにはいかない」


「僕と君じゃ妖怪としての格が違うんだよ。君程度が僕に勝てるわけないだろ」


「それでも、あなたを倒さないとここを突破できない」


「そう。それじゃ死ね」


そう言ってさとるくんが剣を構えると、後ろから「ねえ、いつまでだらだらやってるの?」といつの間にか花子がさとるくんの背後に立っていた。さとるくんは構えをといて、後ろを振り向き花子を見た。


「…誰?」


「誰?聞かなくてももうわかってるでしょ?」


「……」


さとるくんは無言で花子を見つめる。その態度にニヤっと笑った。


「格がどうとか話してたけど、あなたが言えたことじゃないよねー?」


「何が言いたい?」


「だっておかしいでしょ。あなた自分の世界に侵入者が現れたからここにわざわざ来たんでしょ?なのに、何でアタシのところじゃなくて、陸や雪のところに行くのかな?」


「それは…」


さとるくんの言葉が詰まる。花子は気にしないで話を続けた。


「普通侵入者の方に現れて消すのが普通だと思うのよね。それなのに、自分が許可した陸と雪の方に現れた。アタシが二人を助けるのを知ってて二人の方に行った」


「だから、何が言いたいんだよ!」


さとるくんは花子に怒鳴る。そんな態度に臆せず、花子は嘲笑してさとるくんに話す。


「つまり、あなた私の強さにびびって、自分より弱い陸と雪の方を殺しに行ったんでしょ?そんなびびりが妖怪の格がどうとか語ってるのが笑えるよねー!」


さとるくんの世界に無理矢理花子が入ってきたことに、さとるくんはすぐに気づいたが、相手が自分よりも実力が上なのもすぐにわかった。そのため、侵入してきた目的であろう影山と冬野を消せば、何もせずこの世界から撤収するであろうと考え、さとるくんは影山と冬野の前に現れたのだった。


「さて、雪ちゃーん。アタシそろそろ帰りたいし、この子つれて帰るから」


「え、ちょっと待ってください花子さん!あいつ倒すの手伝ってください!私一人じゃ倒せないです」


「大丈夫、大丈夫。あなたの実力ならギリギリ勝てるから。頑張ってー!」


「そんなぁ!」


緊張感のない会話が二人の間で行われる。そんなやり取りを見てさとるくんはイライラしていた。


「僕のこと無視して何勝手に話してるのかな?それに、出ていくことも僕許してないよ?」


「別にあなたの許可なんていらないし、それじゃアタシこの子連れてくから」


花子はさとるくんに背を向けて、無視して大貴の手を引っ張って、歩き始めた。その態度にイラついたさとるくんは雷の剣で花子の背後から切りかかった。


「危ない花子さん!」


冬野は警告するが、花子は雷の剣で切られた。しかし、切られた場所に傷はなく、感電した様子もない。服が破けただけだった。花子は振り返り、無表情でさとるくんを見る。


「せっかく、見逃してあげたのに。攻撃したからには仕方がない」


それだけ言って花子は凄まじい速度でさとるくんの首を掴み、壁に貼り付けた。さとるくんは首を絞められ苦しそうにもがくが、花子が手を離す様子はない。


「こうやって弱い者いじめするの普段あんまりしないんだけど、服を破かれたからには何もしないわけにはいかないのよねー」


さとるくんは雷の剣で何度も花子を切るが、傷をつけることもできず、また手を離させることもできず、ただもがくことしかできずにいた。


「あなたごときに幽術を使う必要もない。そろそろ死ね」


花子は拳を構え、勢いよくさとるくんの顔面を殴った。その威力は壁を突き破り、外のグラウンドまでぶっ飛ばした。グラウンドに倒れたさとるくんは顔面が凹み、再起不能になっていた。その凄まじい威力に冬野は「すごい…」と呟いた。近くで見ていた大貴も呆然としていた。


「それじゃ、アタシこの子と一旦帰るから。終わったらまた呼んでね」


「は、はい!ありがとうございます!」


「ついでだから下への穴も開けてあげる。幽術、水裂」


花子は手を床にかざし、水の塊を放つ。爆発し、床に穴が出来た。「後は頑張ってね」と言って花子は去っていった。


「よし、影山くんを助けに行こう!」


冬野は飛び降りて、影山のところに向かった。




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