影山vsさとるくん
影山はさとるくんに向かって走りだし、刀を振り上げ斜めに一閃。さとるくんは後ろに下がり、目の前に手をかざす。
「幽術、雷のベーゴマ遊び」
さとるくんの手のひらからベーゴマの形をした雷が放たれる。影山は武妖具の力を使い、目の前のベーゴマの過去を戻し、打ち消した。その現象にさとるくんは「へー」と感心していた。
「今の武妖具の力?ねえ、どうやって消したの?」
「自分の能力を簡単に教えるわけないだろ!」
影山は幽術、切裂の大風を発動し、巨大な風の刃を放つ。さとるくんは避けずに手を目の前に出して切裂の大風を受け止めた。
「なかなかの攻撃力だね。でも、その程度の幽術じゃ、僕に傷はつけられないよ?」
さとるくんの手のひらに傷はなかった。余裕そうなさとるくんに影山は不味いなと考える。
(切裂の大風は俺の幽術の中でも強力な技だぞ?それが無傷ってヤバいな…)
焦る影山。どう対抗しようか考えていると、さとるくんが一気に近づき、拳を影山の腹を狙って放たれる。影山はその拳を刀で防ぐが、威力が強く、数メートルぶっ飛ばされた。影山は空中で一回転して、床に着地し、切裂の大風を再び放った。
「だから、その技は無駄だって」
さとるくんは再び防ごうとするが、切裂の大風はさとるくんの天井に向けて放たれていた。
(瓦礫の下敷きになれ…!)
切裂の大風は天井に直撃する。しかし、天井は崩れることはなかった。そのことに影山は驚いた。
(なんで崩れない!?切裂の大風クラスの幽術なら簡単に破壊できるはずなのに…!)
「天井が壊れないのが不思議そうだね?」
困惑する影山に対し、さとるくんはクスクス笑いながら話しかける。
「ここは僕が造った世界だよ?建物を破壊するには僕より強い妖力じゃないと。僕に傷をつけられないような君のその技じゃ、無理だね」
さとるくんが生み出したこの世界の建物の強度はさとるくん並みである。故にさとるくんに傷をつけられる妖力でなければ破壊することはできない。
「ねえ、それよりさっきどうやって僕の幽術を消したの?教えてよ?」
「だから、教えるわけないだろ」
「じゃあ、勝手に見させてもらうよ。幽術、雷のベーゴマ遊び・三連」
さとるくんは手を前に出すと、連続で三つ雷のベーゴマが放たれた。影山はその攻撃に危機感を感じた。
(時を戻せるのは対象一つまでだ、三連続で使うとなると、妖力の消費が大きすぎる…!)
影山の武妖具の力は対象の時を戻す能力。つまり、ベーゴマを三連続で放たれた場合には一つ時を戻して消したとしても、残り二個のベーゴマが残ってしまう。しかし、三回も時を戻すには妖力の消費が大きすぎるため、使用すれば影山に戦う力が尽きてしまう。
(ここはダメージを食らってもいいから、壁天嵐で防ぐしかない)
影山は幽術、壁天嵐で風の壁を展開し、雷のベーゴマを防ぐが、雷のベーゴマは壁を突破して影山に襲いかかる。三つのベーゴマは影山に直撃し、影山を感電させた。
「く…!」
ダメージを食らった影山は立っていられず、その場に膝をついた。
(全身が痛い…。多少壁天嵐で威力を落とせたが、それでもダメージがでかいな…)
影山は無理矢理立ち上がり、刀を構える。そのようすを見てさとるくんは「ふーん」と言って様子を見ていた。
「能力を使わなかったところをみると、打ち消す能力は連続で使えないようだね。それに、妖力の消耗も大きいのかな?まあ、何にせよ君の能力については理解したよ」
分析するさとるくん。影山の考えを読まれていた。
「ねえ、まだ戦えるよね?もう少し君の本気がみたいから頑張ってよ!幽術、雷のチャンバラ遊び」
さとるくんの右手に雷の剣が形成される。剣を構え、さとるくんは一気に距離を詰めて、剣を振りかざす。影山は刀で受け止め、ガキンガキンと音を鳴らしながら、二人は剣と刀で攻防を行う。しかし、勢いはさとるくんの方にあった。
「どうしたどうした、スピードが落ちてきてるよ!」
さとるくんは影山の刀を弾き、影山の胴体を一閃。影山の胴体から血が出る。さらに、雷の剣で切られたことで、体が感電し、うまく体を動かせない。追撃でさとるくんはもう一撃入れようとするが、影山は必死に幽術、爆砲を発動。空気の塊がさとるくんの胴体に直撃し、数メートルさとるくんをぶっ飛ばした。
「あらら、やり損ねたか。まあでも、一撃入れれたし、いっか」
影山の胴から血が出る。内臓にまで達してはいないが、切られた痛みが全身に響く。
「なあ、一つ聞きたいんだが…」
息を切らしながら影山はさとるくんに話しかける。さとるくんは「ん、何?」と応じる。
「お前は、巡礼者代行なのか?」
尋ねられたさとるくんは一瞬黙る。そして、笑った。
「君何者?なんで巡礼者代行のこと知ってるの?」
「噂で聞いたんだよ。連続殺人犯の巡礼者には配下の妖怪がいるって」
「噂ねぇ…」と呟くさとるくん。その反応を見て影山はさとるくんが巡礼者との関係者であることを確信する。
(もったいぶることなく、逆に俺に質問してきたってことは別に隠すようなことでもないということ。むしろ、俺がなんで巡礼者代行について知っていることに対して気になってるようだな…)
影山はさとるくんの様子を見て分析する。さとるくんは雷の剣を消して、構えをといた。
「君の予想通りだよ。僕は北海道地区担当巡礼者代行さとるくん」
「北海道地区担当?」
「あれ?それは知らないんだね。巡礼者代行は日本の各地方に一人づついるんだよ。それで、北海道は僕の担当地区ってわけ」
日本は北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の地方区分になっている。故に巡礼者代行は八人いるということになる。
「ずいぶんあっさりと教えてくれるんだな」
「別に隠せと言われてる訳じゃないからね。それで、君は僕に巡礼者代行かと尋ねたけど、何か目的があるんだよね?じゃないとわざわざ巡礼者代行か確認しないだろうし」
「俺の目的はお前らのボスの居場所を知りたい」
「なんで?」
「殺すため」
影山がそう言うと、さとるくんは盛大に笑い始めた。
「あははははははははははははははははは!僕にも勝てないような君があの人を殺す?無理に決まってるでしょ!」
「俺は絶対に巡礼者を殺す。それに、まだお前に負けたわけじゃない」
「君僕に勝てると思ってるの?僕に傷一つつけられてない君が!」
さとるくんは凄まじい速度で影山の懐に入る。そして、影山の腹に拳を叩き込む。影山は吐血する。さとるくんはさらに、追撃で影山の顔面に拳を叩き込んでぶっ飛ばそうとするが、影山によって時を戻され、腹を殴る前まで戻った。影山は避けて、さとるくんの顔面に幽術、爆砲を当てて、ぶっ飛ばした。
「あは、またあの変な能力!面白いね!」
ぶっ飛ばされたさとるくんは立ち上がり、影山を見ると、影山の刀に強い妖力が集まっているのを感じた。
「これでも、喰らえ!幽術、嵐王…」
影山は幽術を発動させようとした次の瞬間、突然上の階で爆音が鳴った。校舎が崩れて、グラウンドに何かが勢いよく落ちた。
「一体、何が起きてるんだ…?」
影山は困惑し、対してさとるくんは無言で不機嫌そうな表情で外を見ている。
「影山くん!」
影山が外を見ていると、影山の背後の廊下の天井が崩れてそこから、冬野が降りてきた。
「冬野、一体何があったんだ?」
「話はあと!まずは二人であいつを倒そう!」
二人はさとるくんと対峙する。その二人を見て、さとるくんは一人考える。
(あの女が無事ということは、しくじったみたいだな…)
上で何が起きたのか、それは十分前に遡る…。




