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ある少女の思い出

石田恵美という少女がいた。

小学四年生。とても明るく、活発な女の子。運動が好きでよく放課後はクラスメイトと遊んでいた。少女の父と母は共働きで夜遅くに帰ってくるので、夜はいつも一人だった。


あるとき、少女は学校の帰り道にある寺を横切ると、そこで突然鐘の音がなった。廃寺であるのに音が鳴るのが不思議に感じた少女は寺に入る。そこには、ボロボロな僧侶がいた。最初は怖くて少女は警戒した。けれど、僧侶がニコッと笑うと不思議と警戒心はなくなり、話をした。僧侶の名前は野寺坊。妖怪と知って少女は驚いたが、話をしていくうちに対して気にしなくなった。


それから、少女は学校の帰りには寺を寄るようになった。一緒に石蹴りをした。あやとりをした。今ではしないような昔の遊びを教わった。逆にゲームやスマホなどの現代ならではの遊びを教えた。そんな目新しさに少女は楽しんだ。


あるとき、学校で少女がホームレスと遊んでいると噂が流れた。野寺坊と遊んでいるところを見られたのだ。最初は「ホームレスと遊ぶなんて不潔」「ホームレスと遊ぶヤバいやつ」と、からかいから始まった。しかし、少女が野寺坊と遊ぶのをやめなかった。そのうち、野寺坊の悪口を言い始める子も現れるようになった。少女は怒り、その子を押し倒した。それが最悪の始まりだった。


からかいはいつしか、いじめにまで発展していた。「触られるとホームレスになる」「ウイルスはこっちにくるな」と暴言を浴びせられ、休み時間にはトイレに閉じ込められてトイレの水を無理矢理飲まされたり、カバンが泥まみれにされたり、いじめはより過激になっていった。クラスメイトや教師はいじめを見て見ぬふり、学校に少女の味方はいなかった。しかし、少女は寂しくなかった。彼女にはまだ野寺坊という友達がいたから。


あるとき、少女は寺で野寺坊と話をしていた。


「ねえ、野寺坊さん」


「ん、なんだい?」


「野寺坊さんはずっと私の友達でいてくれる?」


「ああ。ずっと友達だ」


「なら、明日も来ていい?」


「いつでも来なさい。私はどこにも行かないから」


「うん!明日ね、新作のゲームが発売日なの!買ったらここにもってくるから、一緒に遊ぼ!!」


「ああ。待ってるよ」


「そしたらまた明日ね!」


「また明日。気をつけて帰るんだよ」


「うん!」


その日少女は家に帰った。次の日、少女は学校が終わると、すぐに家に帰り、電気屋でゲームを買った。ゲームを買えてウキウキの少女は急いで寺に向かった。だが、その途中、少女はクラスメイトの集団に絡まれる。


「石田、そのゲーム寄越せよ!」


「ダメ!これは野寺坊さんと一緒にやるの!」


「うるせえな。ウイルス女が文句言うな!」


集団の一人が無理矢理ゲームを奪い取る。少女は「返して!」と必死に抵抗するが、多勢に無勢。ゲームを取り戻すことは難しかった。


「返して!返して!!」


「うるさいなぁ!」


少女は突き飛ばされる。そして、クラスメイトたちは走り去ってしまった。少女は自分が無力すぎて情けなくて、泣いた。


「約束したのに、ゲームで遊ぶって約束したのに…」


少女は呆然としながら、道路を歩く。このとき少女は意識がもうろうとしていて、信号機が赤だったことに気がつかなかった。少女が気づいたときには、もう車に轢かれていた。


激しい痛みのなか、少女が思ったことは二つ。一つはゲームを奪われた恨み。そして、もう一つは約束を守れなかった後悔だった。悔いを残した少女は怨霊として復活した。そして、思い残した二つの思いを果たすために動き出す。


まず、少女はゲームを奪った子どもたちの目の前に現れ、一人一人殺していった。ある子どもは首を引きちぎられ、ある子どもは内蔵を生きたまま抜き出され、ある子どもは死ぬまで引きずり回したりと残虐に殺した。


しかし、それでも少女は満足できない。恨みのある子どもを全員殺したあと、少女は寺を訪れた。


「恵美ちゃん、なのか…?」


変わり果てた石田恵美の姿を見て、野寺坊は驚いた。


「なぜ、なぜ恵美ちゃんが霊になって…」


「遊ぼ、遊ぼ…」


少女は野寺坊に近づいていく。野寺坊は少女抱き締めた。


「理由はわからないが、成仏できるように我がなんとかしよう。遊びたいなら、遊ぼうではないか」


少女は笑う。その顔を見て野寺坊は友として、少女が成仏するまで守ろうと誓った。


その後、独力で石田恵美が交通事故にあったことを知る。それからどうして成仏できないのか、調べるが、一向に手がかりを得ることができずにいた。


「いったい、どうしたら成仏できるのだ…」


寺に来て一人であやとりして遊ぶ少女を見て野寺坊は呟く。少女は「遊ぼう」と呟くのみで成仏へのヒントはそれだけだった。


「我がなんとかする。なんとかするのだ…」


苦悩する野寺坊。影山の過去を見る能力はここで終わった。





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