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影山陸

春は鬱になる季節である。

春は出会いの季節と言うが、それは出会いを強制される季節である。例えば、学生は進学し、入学すると見ず知らずのやつらとさっそく共同生活をさせられる。そこで、友達を早めにつくらなければ孤立。ボッチの学校生活の始まりだ。例えば、社会人は会社に入り、社畜の生活が始まる。慣れない社会人としての生活は、春が最も地獄に感じるだろう。特に人間関係で失敗すれば、職場で浮いてしまい最悪だ。


つまり、何を言いたいかと言うと、春は人間関係の構築を求められる季節であるということ。人付き合いというものほどストレスがたまり、疲れるものはない。俺はそんな疲れることはしたくない。故に俺は人間関係の構築に一生懸命にならない。集団行動はしたくない。自分が疲れないように、マイペースに生きることこそが俺流だ。


4月14日の真っ昼間、そんなことを思いながら少年はカフェでコーヒーを飲みつつ、窓から見える人の群れをボッーと眺めていた。


「はぁ、ボッチは落ち着くなぁ」


空になったコーヒーカップを皿に置き、少年は1人呟いた。そして、このあとのだるい宇宙科学の講義のことを考えたら思わず、ため息がでてきた。


ここで自己紹介しよう。少年の名前は影山陸。身長175センチ。体重62キロ。今年、有平学園大学に入学した大学1年生である。人間関係構築に積極的ではない影山には友達が少ない。今もボッチでコーヒータイムである。まあ、有平学園大学にいるときもたいていボッチなので、あまり気にはしていないが。


有平学園大学とは、北海道札幌市有平区にある私立の大学である。最寄り駅の市営地下鉄東栄線学園前駅が校舎内地下にあり、校舎と直結しているために降雨降雪の影響を受けにくいというありがたい仕様になっている。学生数は約8000人で、9割が道内出身。キャンパス内の広さはそこそこで、5つの館に分かれている。学部は経済学部、経営学部、法学部、人文学部、工学部と5つあり、影山は法学部に所属している。そして、この大学の一番の功績は道内就職率がNo.1というところだ。故に人気な大学と言える。当の影山もそれが目的で入学したのだ。


さて、影山の大学自体の説明はこれで終わり。影山はスマホで現在の時刻を確認する。時間は1時半ちょうど。次の講義までに時間があったので影山は札幌駅にあるカフェで昼食を取りながらコーヒーを飲んでいたのだ。そろそろ講義の時間も近づいて来たので影山は会計を済ませ、大学に向かうことにした。


「今日も札幌駅には人がたくさんいるなぁ」


カフェを出て、行き交う人々を避けながら影山は地下鉄に向かう。影山は人がたくさんいる場所は正直嫌いだ。人混み酔いする。だから、人が多い札幌駅は苦手なのだが、影山のお気に入りのカフェが札幌駅にしかない。だから仕方がなくこうして影山は来ている。好きなもののために、ある程度のことは我慢するのが影山流である。


「ん、あいつは.....」


大学へ行く途中、影山の前を見覚えのある女の子が歩いているのに気づいた。

名前は冬野雪。影山と同じ法学部の1年生でちょっとした有名人。なぜ有名人かというと、ズバリ、ルックスである。メチャクチャ可愛いのだ。黒髪のショートカットで、容姿端麗。性格もいいと聞く。しかし、悪い噂がある。冬野雪はいつも男と一緒に歩いている。しかも、毎回別の男。噂では、色んな男と遊んでいる清楚系ビッチと言われ、女からはとても嫌われているらしい。


そんな有名人冬野雪は今日も男と一緒に話しながら歩いていた。影山が向かう方向を歩いている。どうやら、影山と同じく今から大学に向かうらしい。地下鉄についた影山はホームで電車が来るのを待ちながら、数メートルとなりにいるリア充二人を観察することにした。


冬野雪と一緒にいる今回の男はなんかチャラくさい。茶髪で、耳と口と鼻にピアスをしていて影山が苦手なタイプ。どうして陽キャって顔にやたらと穴を空けたがるのか理解できないし、カッコいいと思わない。影山はそう思った。


チャラ男は一生懸命冬野雪に話しかけている。対して冬野雪は楽しそうに笑っていた。正直笑顔が可愛くて少しの間影山は見惚れてしまっていた。影山は何となく冬野雪という人物に興味を持っている。美少女に惹かれない男はこの世にいないと思うが、影山にとっては冬野雪に対して別の興味もある。だが、ああいう陽キャな人たちと陰キャな俺には永遠に縁がないんだろうなぁと、そう悲観しながら影山は電車に乗ったのだった。





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