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怨霊

幽霊とは、死んだ者が成仏しきれずに姿を現したものである。その幽霊にも地縛霊、浮遊霊、生霊と様々な種類がいるが、中でも厄介なのは怨霊である。怨霊は恨みを持って亡くなった幽霊であり、つまり、人に殺された者が復讐のために生まれた存在である。復讐をはたした怨霊は成仏するものもいれば、満足しきれず、そのまま現世に残り、見境なく人を遅い続ける存在となる場合もある。そして、妖怪となり、復讐以外の意思を持つこともある。


「日上さんのマンションはあそこ?」


「そう!あそこ!五階!」


影山と冬野は日上の配信を見てる途中で、冬野家から飛び出し、日上のマンションに急いで向かっていた。日上のマンションは冬野の家から十分ほどで行ける距離であり、現在そのマンション前に到着した。


「影山くん、あれってたぶん怨霊だよね?」


マンションの階段を上がりながら、冬野は影山に尋ねる。冬野は日上の配信でカメラの前で笑う少女を見て怨霊と判断した。


「怨霊だな。しかも中々強力なやつ。あんなの呼び出すなんて日上さんって何者なんだ?」


「うーん、詩織の実家は普通だし、ただの一般人だと思うけどねぇ」


冬野にとって、日上とは小学校からの付き合いの幼馴染みであり、日上の実家にも行ったことがある。しかし、普通の家で父も母も普通の人間で妖怪と関係あるようには見えないのが冬野としての認識である。五階まで上がり、冬野は日上の部屋を指差した。


「あそこの部屋だよ影山くん」


「わかった。そしたら結界張るよ」


影山は年のためにガイストからもってきた結界の札を使用し、マンション全体に結界を張った。これで妖力のない者は意識を失う。


影山と冬野は日上の部屋の前に到着し、ドアを開けようとするが、鍵がかかっていて開けることができない。


「壊すしかないか…!」


「え、壊しちゃうの!?」


「大丈夫。壊して入った後に俺の武妖具の力で直すから」


影山は扉に手を当てる。


「幽術、爆風裂!」


影山の手のひらから風の塊が生じ、ドアを弾き飛ばした。影山と冬野は部屋の中に突入し、影山はすぐに時間を戻し、ドアを直した。


「うわ、すごい妖力で満ちてる…」


「あっちから感じるな」


影山と冬野は日上の部屋がある扉を見る。おそるおそる中に入ると、そこには日上に覆い被り、口から青白いものを吸いとってる少女がいた。少女はこちらに気づき、ニタァと笑った。


「詩織から離れろ!幽術、蒼幽波!」


冬野は手から水の塊を放つ。しかし、少女はすぐに反応し、避けて冬野に飛びかかってきた。影山は刀を取り出し、飛びかかる少女を切り裂いた。少女は叫び、窓ガラスを突き破って逃げた。


「冬野!日上さんは!?」


冬野は日上に駆け寄り、「詩織!詩織!」と体を揺らしながら声をかけるが、日上は反応しない。


「ダメ、魂が抜き取られてる!」


「やっぱりか。アイツを捕まえないと!冬野、行くぞ!」


「え、行くって、ちょっ!?」


影山は冬野の手を引っ張って、少女が突き破った窓から飛び降りた。


「影山くん!ここ五階だよ!死ぬ!」


「大丈夫!」


慌てる冬野に対して、影山は冷静に地面に向けて刀を向ける。


「幽術、風枕!」


刀の先から風が発生し、影山と冬野はゆっくり着地した。


「あー、死ぬかと思った。影山くん、これできるなら早く説明してよ!」


「ごめん、それより急いでやつを捕まえよう」


「もう、今度アイスおごってね」


二人は走りだし、逃げた少女を追う。完全に見失ってはいるが、二人はがむしゃらに走ってるわけではない。


「影山くん、こっちから妖力感じるよ!」


二人は逃げた少女から発せられる妖力をたどって追っていた。


「この先は確か寺だな…」


影山たちが寺に入ると、そこには先ほどの少女が待ち受けていた。


「遊ぶ?遊ぶ?遊ぶ?」


少女は影山たちを見ながらヘラヘラとしている。


「遊ばないよ。お前を倒して日上さんの魂返してもらう」


影山は刀を構え、少女に向かって切りかかる。しかし、突然その間を割り込む形で何者かが影山の刀を刀で防いだ。


「誰だ?」


「野寺坊」


野寺坊とは、夕暮れなど誰もいない寺で、鐘の音を鳴らすボロボロの僧侶の姿の妖怪である。山彦の一種とも言われるいる。


「何で邪魔するんだ?」


「その子を守るため」


「そいつは友達の魂を奪ったんだ。それを見逃すわけにはいかない」


「ならば貴様を殺し、あの子を守るだけのことよ!」


野寺坊は力任せに刀で影山を弾き飛ばす。


「逃げなさい」


野寺坊がそう言うと、後ろ手控えていた少女は頷き、寺の奥へと逃げていった。冬野は弾き飛ばされた影山に駆け寄った。


「影山くん!」


「大丈夫。それより冬野は少女を捕まえて。俺は野寺坊の方を何とかする」


「任せていいんだよね?」


「ああ」


「わかった。任せるよ影山くん」


冬野は少女を追う。妨害しようと野寺坊が動こうとするが、影山は瞬時に野寺坊に近づき、切りかかった。だが、影山の攻撃は刀で防がれた。


「おのれ、邪魔をする気か人間!」


「あの子を守りたいなら俺を殺してからにするんだな」


「言われなくともそうする!」 


影山と野寺坊の戦いが始まった。





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