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黒坊主

「始まったか」


窓から影山と黒坊主の戦いを九十九は見ていた。九十九の傍らには冬野もおり、戦闘を共に見ていた。


「さてと、結界はりますかね」


九十九はポケットから一つの札を出す。札は黒く染まり、弾けて消えた。その札が消えた瞬間、近くにいた依頼人の山崎楓は急に気を失い倒れそうになる。山崎楓が倒れる前に九十九と冬野は山崎楓の体を支え、娘が寝てるソファーとは別のソファーに寝かせた。


「それって、結界の札ですよね?」


九十九の一連の動作を見ていた冬野が尋ねる。対して九十九は「ああ」と頷く。


結界の札。

妖力を込められてつくられた結界をつくりだす札。結界は使用者の半径五百メートルを包むようにして張られる。結界内にいる妖力を持たない人間は結界が解除されるまで眠りについてしまう。


「結界の札って強力な妖力がないとつくれないって聞いたことあるですんけど、店長もまさか妖怪なんですか?」


「んなわけないだろ。俺は人間だ。陸と同じだよ」


「ということは、店長も武妖具を?」


「ああ。ただ、その武妖具を失くしちまってな。おかげで戦闘はできねえのよ」


アハハと九十九は呑気に笑う。一方で冬野は呆れていた。


「にしても雪、お前武妖具のこと知ってるんだな」


「妖怪ならみんな知ってますよ。ただ、実物を見るのは初めてです」


そう言って冬野は感心そうに影山の刀を見ていた。そして、「私も戦います」と冬野は言って戦闘を始めた影山に加勢しようとすると「まて」と九十九が呼び止めた。


「あの程度なら影山でも倒せる。雪が手を出すほどでもねえよ」


「でも何かあったら…」


「大丈夫だって。それにあいつは一人で倒したい思ってるぞ」


「そんな、どうして?」


「一人で倒して妖力を得たいのさ。二人で倒したら分配されちまうからな」


基本的に妖怪を倒すと妖力を吸収することができる。しかし、倒された妖怪の妖力を吸収するのは倒した妖怪じゃなくてもできる。


「影山くん強くなって何かしたいんですか?」


「ああ、倒したいやつがいるんだってさ」


「倒したいやつ…」


「そう。だから手を貸さなくていい。まあでも、あいつがヤバそうだったら、そのときは頼むな」


「わかりました」


ということで九十九と冬野は影山の戦闘を見守ることにした。


影山は黒坊主に刀を振るう。横に一閃し、切り裂こうとするが、黒坊主は腕で防いだ。ガキンと音をならし、腕に傷はついていない。


(こいつの腕、刀を防げるくらい硬いのか)


影山は連続で斬激を叩き込むが、黒坊主はその斬激を防いでく。さらに、隙を見て黒坊主は反撃で拳を叩き込んでくる。それを影山は刀で防ぐ。キンキンキンキンと金属音を鳴らし、刀と拳の攻撃が激しくなっていく。


「うおおりゃあ!」


影山が重い一撃を叩き込むと、黒坊主は数メートル弾き飛ばされた。離れた黒坊主は拳ではなく、口から火の玉を放って攻撃してきた。


(幽術…!)


放たれた火の玉を影山は刀で防いだ。しかし、黒坊主は追撃で火の玉をさらに放ってくる。


「幽術、壁天嵐!」


影山は目の前に風の壁をつくりだし、放たれる火の玉を防ぐ。そして、一気に黒坊主の懐に入り、刀を振りかぶり、縦に一閃した。黒坊主は胴を切られたが、負けずと黒坊主も影山の刀を掴み、影山の顔面に拳を叩き込み、数メートルぶっ飛ばした。影山は地面を転がり、すぐに起き上がり刀を構えた。


(一撃いれたけど、致命傷にはなってないな…!)


切られた黒坊主は再び口から火の玉を放ち、影山は避ける。黒坊主は連続で火の玉を放ち続け、影山はそれらを避けていく。


(殴られたところが痛い。疲れるし、さっさと終わらせる)


影山は一気に黒坊主に突撃した。黒坊主は影山の進行を止めるために巨大な炎を口から吹き出す。しかし、その炎は一瞬にして目の前から消えた。


影山の妖術で三秒戻し、炎が吹き出す前の時間に戻したのだ。


黒坊主は何が何だか困惑し、再び攻撃しようとするが、影山の行動の方が早く、黒坊主の胴を一閃。続けて強い斬激を叩き込み、黒坊主を切り飛ばした。


「幽術、切裂の大風!」


影山の刀から巨大な風の斬激が放たれる。斬激は黒坊主に直撃。黒坊主の胴を切り裂いた。「きいあああああああああああああああああああああああ」っと黒坊主は悲鳴をあげる。


(よし、ダメージは確実に入った。次で止めを!)


影山は刀を構え、再び幽術を行おうとしたその瞬間、黒坊主の全身が炎に包み込まれて影山に突撃してきた。黒坊主は炎の腕を振りかぶり、影山は刀で防ぐが、黒坊主は刀を掴み、そして、影山の肩に炎の牙でかぶりついた。


「がああああ!!」


熱の痛みが噛まれた場所から伝わる。叫び、激痛を感じながら影山は時を戻す能力を使い、刀を掴む前の五秒前まで戻した。


「幽術、壁天嵐!」


風の壁をつくりだし、影山は黒坊主の進行を止める。


「幽術、爆砲!」


影山は左手に風の塊をつくりだし、それを黒坊主に向けて放った。風の塊は黒坊主に直撃し、黒坊主を弾き飛ばした。黒坊主は転がり、地面に倒れた。影山は走りだし、黒坊主に一気に近づいた。


「これで、やられろ!!」


黒坊主は立ち上がろうとするが、その前に影山は黒坊主の額に刀を突き刺した。やられた黒坊主は力尽き、徐々に体が消滅し始め、最後には跡形もなく消えてしまった。


「ふう、やったか…」


黒坊主を倒し、影山は力が抜けてその場に座り込んだ。すると、「影山くん!」と慌てて冬野が影山に駆け寄ってきた。


「肩から血がでてる!すぐに病院に行かないと!」


「大丈夫だよこれくらい。それより依頼人と話を…」


「ダメ!まずは自分の体を心配して!」


「わ、わかった…」


勢いよく言われて影山は了承した。冬野に手を貸してもらい、影山は立ち上がった。


「店長からは許可とったから、今日はもう家帰るよ」


「わかった。ありがとう冬野」


「私は何もしてないよ。さあ、行こう」


と冬野が言った瞬間。きいあああああああああああああああああと、雄叫びが聞こえた。


「この声ってまさか!」


影山と冬野はその声の正体にすぐ気づいた。それは今さっきまで戦っていた。黒坊主の声だった。そして、その声の主である黒坊主は徐々に形をなし、影山たちの目の前に現れた。先ほど倒したやつとは違う。もう一体の黒坊主が現れたのだ。


「くそ、この家二体の黒坊主にとりつかれてたのか…!」


黒坊主が近づいてくる。影山の妖力は先ほどの戦いで大分消耗してまともに戦える状態ではない。


(どうする逃げるか?でも、逃げたら今度は依頼人の方にいく。この状況どうすれば…)


影山が考えていると、影山を支えていた冬野が「影山くん、ちょっと下がってて」と話し、冬野が影山から離れ前に出た。


「こいつは私が倒すよ。影山くんはやすんでて」


「頼んでもいいのか?」


「うん。まかせて」


冬野がそう言うと、黒坊主が一気に迫ってくる。対して冬野は目の前に手を出した。


「幽術、流杭」


冬野の手から水の杭が放たれる。その杭は黒坊主の胴に直撃すると、弾け黒坊主をぶっ飛ばした。


「冬野は水の幽術を使うのか…」


冬野の攻撃に影山が感心してると、さらに冬野は水の杭を五本ほど空中につくりだす。


「水だけじゃないよ。私の力は」


「え?」


空中につくりだされた水の杭がどんどん凍り始め、それは氷の槍となった。


「氷の力…!」


氷の槍を見て影山は驚く。つくりだされた数本の氷の槍は一気に放たれ、黒坊主に突き刺さった。さらに、刺さった氷の槍が水に変わり、黒坊主を周囲に展開される。


「幽術、水牢縛」


水は黒坊主を包み込む。そして、その水は凍ってしまい、黒坊主は氷の中に閉じ込められた。その氷に冬野が近づき手を触れると、氷はバラバラに崩れ始めた。凍っていた黒坊主も粉々となり、消滅した。


「黒坊主をあっさりと、冬野お前は…」


冬野は影山を見て、ニコッと笑った。


「私は雪ん子。雪女の娘だよ」




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