偽者、身バレする
「ゴメ…いや、偽物さん。これはどういうことかな?」
おいおい、偽者さんって…確かに偽者だけど。
あー本物いるしおとなしく諦めるかぁ。
「どういう事もそういう事もねーよ。
だいたい俺嘘ついてねーし。あんた達が勝手にゴメスと間違っただけだろ?」
しゃべり方も普通に戻し、猫かぶりはやめる。
あーこっちのほうが楽だわ。
「嘘はついてないって、貴方自分が勇者って言ったじゃないですか」
そういいながら、こっちのほうに迫ってくる。
「いやいや、嘘はついてねーよ?」
そういい、俺は手のひらの上に小さい火の玉を作る。
取り敢えずもう一度魔法を見せれば本物は気づくだろう。
「だからそれは火薬かなんかでしょう!?もうだまされませんよ。ねぇゴメス様?」
そういうと、ゴメスの方に視線を向けるブラウンさん。
本物…ゴメスは俺の炎を見ると少し驚いた表情を見せたがすぐにニャリと笑みを浮かべた。
「すまねぇ。村長こいつやっぱり本物だわ」
その言葉を聞きまた驚くブラウンさん。
この人も大変だなぁ。
「と言う事はあなたが偽物?」
と言うとゴメスに向かって指を差すブラウンさん。
「あぁ説明が悪かったな、ゴメスは俺だ!しかしそいつも勇者には違いない。その炎からはしっかり魔力が感じるからな」
そう言うと俺の方に近づいてくる。
近づかれるとなんか怖いよこのマッチョ。
俺の前に立つと
「お前、名前は?」
と訪ねてくる。
こうなったらもう嘘ついてもしょうがないので本物の名前を名乗ることにするか。
「俺の名前は…」
「ジロー様ですよね?」
俺が名前を名乗ろうとした時、それは俺の後ろから聞こえてきた。
そうそう、俺ジローだよって何で俺の名前知ってんだよ!?
後ろを振り向くとそこには意外にもサリィが立っていた。
たぶん、表があまりに騒がしいので様子を見にきたのだろう。
「なんで知ってんの?」
つい間抜けな声をだしてしまう。
「だって勇者さまの剣や、リュックにジローって書いてありましたよ。」
うっ…すっかり忘れてた。つい癖で名前書いちゃうんだよね。
だって、ほら、間違えちゃいけないじゃん。
「ゴメスじゃないってわかってたらなんで皆に言わなかったんだ?」
「それはですね、勇者さまの秘密か弱みの一つくらい握ってたほうがいいかなぁと思って。」
とニコニコした顔でいけしゃあしゃあといいやがる。
だいたい秘密や弱みって、こいつやっぱり腹黒いぞ。
女の子は恐ろしい。