偽者、疑われる
しばらくするとサリィと共に戻ってくるブラウンさん。そして、
「ゴメスさん申し訳ないのですが、私魔法という物を見たことないんですが、よろしければ見せてくださりませんか?」
と疑いのまなざしで言ってくるブラウンさん。
あっ!こいつ俺が本物か疑ってやがる。
確かに俺の格好といえば普通の布の服にリュックサック、腰に剣を一本刺してあるだけの商人と変わらない格好で、さらには身体つきも決して良い方ではない。とてもではないが戦士には見えない。俺は細マッチョなのだよ。
しかも、今は勇者詐欺が流行っていて、特に俺の使った炎の魔法は火薬を使えば魔法に見せやすい。
正直この手の疑いで焦る様では一流にはなれない。
「いいですよ」
と俺は軽く返事をして指先に魔力の光を生み出す。
それを見たブラウンさんが小さく
「本物じゃ」
と呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
俺はその光を壁の近くに浮かべ部屋の灯りにすると、「これでいかがですか?」と尋ねる。
その光はロウソクの灯りより格段に明るいが眩しいということはなく、まるでそこの部屋だけ昼になったようだった。
「ほらほら私が言った通りでしょ!本物の勇者さまなんだって。」
光を不思議そうに眺めるブラウンにサリィはやはり自慢気に話す。
「最近偽物の勇者が多いですからね。けど私はこの通り本物ですよ」
まぁゴメスじゃないけど。
これぞ必殺、本当8割、嘘2割。そして、決して自分から嘘は言わないのがポイントだ。
あくまであっちが勝手に勘違いをしているのだ。
「すみません、すみません。別にゴメス様を疑った訳ではないんですが…」
顔が真っ青になりながら再び土下座をする村長。
この人すぐ土下座するな。
「この通り私は怪しい者ではありません。迷惑でなければこの村に少しの間泊めて頂けませんか?」
「迷惑なんて滅相もない。ゴメス様が居られるだけで村は安心ですし、ゴメス様程有名な勇者様なら一目見ようとまわりの村や町から人が集まり村は大賑わいですよ。少しと言わずゆっくりしていって下さい。
そうと決まれば今日は村総出のお祭りにしましょう」
「それがいいですよ。村長さん」
ブラウンさんの提案に大喜びするサリィ。
こいつ完全に聖水のこと忘れてやがるな。
「そうと決まれば急いで準備したほうがいいですね?私、ゴメスさんをゆっくり休める所に案内しますね。」
「おぉすまんなサリィ。ゴメス様には村の会議小屋を使って頂きなさい。私は村の人にこのことを知らせてくるからな。」
そう言うと家から出て行くブラウンさん。
その後ろ姿を見送ると、こちらを向き、
「よかった。なんとか聖水のことごまかせませたね。」と満面の笑みで笑う。
このアマ覚えてやがった。今までの全て計算かよ。顔が引きつるが自分でもわかった。
女ってこえーな。