Turning point
-海浜公園内、中央広場-
深雪「美味しかったですね~♪」
梨央「うんうん♪ 皆でお弁当は当たりだった! さすがさくらちゃん♪」
さくら「うん、よかった……」
数十分後、お弁当の中身は綺麗さっぱりなくなった。
全員、箸が進んだ事もあるが。
ちなみに、梨央の作った胡椒ウィンナーはどうやら一部だったらしい。
あれ以降、食べても辛さは普通だった。
梨央が一輝の言う料理下手を認めない所を見ると、以前もきっとそういう事なのだろう。
前回といい、今回といい必ずそこに当たる一輝は果たして運が良いのか悪いのか。
とりあえず、作ってくれた4人には本当に感謝だ。
4人も嬉しそうにお弁当談義をしているのだから間違いなく成功だろう。
一輝「あぁ、昔の悲劇は繰り返されなくて良かったよ……」
梨央「かずくん……?」
陽菜「はいはい、梨央も言わせときなさいって」
さすがに飽きてきたのか、陽菜まで適当に宥めだした。
遼「ったく、ほんと一輝は口が減らないよな……というか一言多い」
同じ様に、俺も呆れてしまう。
さくら「ほんとに……いつも素直じゃないんだよね?」
一輝「なっ!? 素直じゃないって何だよ水城! それに遼もよく言うぜ。昔は俺と梨央より陽菜と遼の方がバカみたいに言い争ってたじゃねぇか」
深雪「……そうなんですか?」
一輝の言葉を聞いた後に、複雑な表情をしたまま、梨央を見る深雪ちゃん。
そんな深雪ちゃんに、梨央は思考を巡らせているのか、少し空を見上げた。
梨央「そういえばそうだね……遼くんが帰ってきてから、まだ見てないかも」
陽菜「………」
遼「そうだっけ? まぁお互い少しは大人になったってことだろ?」
黙ってしまった陽菜の横顔を見てしまった俺は、なんとか誤魔化そうとそれらしい事を言って流した。
陽菜の横顔は、確かに。
悲しみが映っていたから。
そして、その気持ちも何となく分かってしまったから。
遼「それよりも、これからどうする?」
陽菜「そ、そうよ。ほら、色々あるし……」
周りを見渡してみる。
簡易遊園地にアスレチック。
そして砂浜広がる海。
行く場所は山程ある。
目移りしてしまうくらいだ。
一輝「そうだな……どうせだし、少しだけ別行動にしないか?」
深雪「別行動、ですか?」
さくら「せっかく皆で遊びに来てるのに……?」
突然の発言に、深雪ちゃんとさくらちゃんは不思議そうな表情をしている。
それもそうだ。
カップル同士で来てるならまだしも、俺達は友人同士で集まって“皆”で遊びに来てるのだから。
そもそも、別行動という概念自体持ち合わせていなかった。
陽菜「どうせって……何言ってるのよ?」
一輝「ここって、色々あるだろ? 1日じゃ絶品回りきれない。だから、そうだな……2人1組で割り振られた場所を回って見るんだよ。一時間後にここに戻って来て、面白そうな場所があったかどうか話し合う。そんでそこを周っていけばいいかな、と思ってさ」
つまり、各場所の面白い場所を効率良く皆で回るための下調べをしよう、ってことか……
梨央「まぁ一時間くらいなら、そうやって調べて見るのも面白いかもね。まだまだ時間はあるし!」
確かに、何かミニゲームみたいな感じにも思える。
何より、一輝は今回のこの企画、かなり本気で考えていたようだった。
深雪「私は別に構いませんよ?」
さくら「私も、皆がそれでいいなら……」
遼「それじゃ、それでやってみるか。別れたら、各自面白そうな場所を最低一箇所は見つけてくる事、でいいかな?」
全員が、首を縦に振る。
それを確認してから、一輝は嬉しそうにしながら予備の割り箸を取り出した。
一輝「そうだな。よし、じゃぁくじを作るか」
取り出した3本の割り箸に、数字を書いていく。
割り箸に数字、と言えば……
梨央「なんだか王様ゲームみたいだね~♪」
深雪「ですよね~♪」
遼「こらこら、王様ゲームやってもしょうがないだろ……」
陽菜「はぁ……」
さくら「……王様ゲーム……?」
同じ事を考えた俺は苦笑しながら、一輝が用意するのを見ていた。
密かに溜め息を吐いた陽菜には、正直同意しか沸かなかったが。
王様ゲームが何か、理解してなさそうなさくらちゃんはスルーしておいた。
わざわざ変な遊びを教える事もないだろう……
一輝「よっしできた! 同じ番号の人と今から一時間を一緒に行動するんだからな?」
そう言って、用意し終わった割り箸を、皆に向ける。
ここまで来るともうまるっきり王様ゲームだった。
さくら「誰とになるんだろう……(遼くんと一緒だといいな……)」
深雪「神様……お願いだから遼さんとっ!」
陽菜「もう、何でくじなんかで……」
梨央「何だかわくわくするね~♪」
四者四様ながら、割り箸一本ずつに手を乗せる。
一輝「せーのっ!!」
一輝の掛け声と共に、俺達は一斉に割り箸を引き抜いた。
1番…[第二章~翼~へ]