表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来へ続く道~Wings to flap~  作者: 禾楠
第一章
20/43

計画



いつも通り、学校での1日を終えた放課後。

ここ最近では3日に1度は通うようになった、カフェ-Wings to flap-の店内。


陽菜と喧嘩――というよりも、すれ違っていたというべきか――していたが、仲直り出来た事をさくらちゃんと深雪ちゃんに報告した。


のだが――



さくら「な、仲直りできてよかった……ね?」


深雪「ほ、ほんとほんと! やっぱり、仲がいいのが一番! です……」



どうにも2人の様子がぎこちない、というより俺や陽菜と視線を合わせようとしない。



遼「あ、ありがと……」


陽菜「えっと……さくらと深雪、何かあった……?」


梨央「~♪」


一輝「……はぁ……」



頭の上に疑問符を浮かべる横で、ニヤニヤしながら口笛を吹く梨央に、何とも重いため息を吐いた一輝。

そこで、ようやく理解した。


つまり、一輝と共にこの2人も尾けていたという事だ。

一瞬、頭痛がして額を抑える。


何というかまぁ、深雪ちゃんはともかく、大人しいさくらちゃんまでもが気になって尾けてきていたのか、と痛む頭で考える。


横目で姉妹2人を見ると、お互いそっぽを向いている。

気まずいのなら、もっと上手く隠して欲しいものだ。



遼「なるほどね。っていうか、一輝、お前も同罪だろ……」


陽菜「ん? なに?」



1人だけ事情に気づいていない陽菜をよそに、俺はため息を吐いた一輝にジト目を向けた。

なんというか、俺の幼なじみや新しい友達は予想以上に好奇心旺盛なようだ。


良くも、悪くも。



さくら「ごめんなさい……」

深雪「すみません……」

一輝「わりぃ……」


遼「ん、よろしい」


陽菜「わけわかんない……」



三者三様、頭を垂れながら謝り、それに対し苦笑しながら許す事を伝えた。

その横で拗ねかけている陽菜に、再度苦笑。


数日前までは予想もしなかった、こんな現実。

2人で話す時はまだぎこちないけど、それでも今、陽菜が隣にいる。


それは、俺にとって大きな一歩だった。

一輝「そういえばさ、せっかくだし何かしたいよな」


遼「何かって例えば??」


梨央「旅行とか?」


陽菜「あ、それ楽しそうね」


深雪「私は温泉入りたいですね~♪」



突然の提案に一気に騒ぎ出す。

女3人、寄ればかしましいとはよく言ったものだ。



遼「はいはい、現実的に考えような……」


さくら「旅行は学生には厳しいよ……。お金とか、学校とか……」



初日にして自然と立場が別れてしまったようだ。

自由に意見を言う立場と、それを抑える立場とに。



一輝「ふっふっふ……」


遼「何だ? 気でもおかしくなったか……?」


一輝「ちょ!? それはさすがに酷くねぇか!? だが……そんな汚名もこの俺が思いついた案を聞けば皆意見を変えるはずだ!!」



自信満々に、一輝は立ち上がる。



一輝「俺は隣町にある海浜公園を推す!!」



ここぞとばかりにポーズを取り、名案だとばかり大声をあげた。

ちなみに冒頭でも伝えたが、俺達がいるここは、カフェ~Wings to flap~である。

周りの視線は自然と集まる。


もちろん、大半が非難の視線だ。

はっきり言ってドン引きだった。



遼「海浜公園なんて出来たんだ?」


深雪「はい、ここ最近出来たばかりで結構デートスポットとかにも使えるらしいですよ」


一輝「そう、だから……」


遼「……(梨央。)」


梨央「……♪(OK♪)」



一輝が話し出そうとした瞬間、梨央に目配せをすると、梨央は即座に理解したのか、ウインクを返してくれた。



梨央「んー、まぁありかも。多分、皆行った事ないだろうし」


一輝「って、俺が説明して……」


遼「なるほどね。陽菜と深雪ちゃん、さくらちゃんはどう?」


一輝「ちょ、俺の話しを……」


深雪「海のすぐそばだし、遊園地やアスレチックもありますからね!」


陽菜「ふ~ん……まぁ楽しめるんじゃない?」


さくら「私もいいと思うよ」


遼「よし、決まりな」


一輝「……そこまでしなくてもいいじゃねぇか……」



1人でいじける一輝を放置して、俺は話しを締めた。

常識をわきまえなかった一輝が悪い。


そんな風に、テーブルを囲んで話しは弾んでいく。

その時、ふと思った。


こんな風に、自然に話しが進んでいってはいるが、陽菜と仲直りしたのはつい昨日の事。

まず間違いなく、仲直りしたから今日から昔のように、というのは無理な話しだ。


その証拠に、陽菜は率先して俺に話しかけてこようとはしないし、昔なら間違いなく隣か対面に座っていただろう席も、さくらちゃんの隣で、一番遠い席にあたる。


それでも、皆が集まれば陽菜とも話せるし、笑顔も見せてくれる。

今陽菜と2人きりになったとして……


その場を沈黙が支配するのは一目瞭然だと自分で断言できるのは切ない限りだが。


でも今は、この時間を純粋に楽しみたい。

光速の如く、凄い早さで流れゆくこの時間を。


そして、俺達の為に多少間違った形とはいえ、心配してくれていた皆には本当に感謝してもしきれない。



遼「よし、それじゃ今度の休みは皆で海浜公園に行こう!」


「「賛成~!!」」



皆、声を合わせそう返してくれた。

この企画を皮きりに、これからは楽しくなる。


いや、楽しくしてみせる。

そう、自分自身に言い聞かせながら俺はこれからの事……未来に想いを馳せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ